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【名物ホールでいつかバーディ】Vol.6 地獄から天国へ。突如広がる山容に息をのむ「富士CC」13番パー5

かつてチョイス誌の編集長も務めたゴルフコースのスペシャリストが日本全国の名物ホールをレポート。今回の名ホールは、富士CCの13番パー5。

【名物ホールFile 6】

富士CC 13番ホール
581Y PAR5

13番で出現する富士山が
それまでの躓きを癒してくれる

昭和33年開場のこのコースの佇まいがとても上品で、好きだ。アントニン・レーモンドによる山小屋風のクラブハウスがいい。傾斜地にあることから正面からは2階建て、コース側からは平屋に見える。開場当時とほぼ同じ形を保っていることから、ゴルフ場のクラブハウスとしては第1号の登録有形文化財となった。

特徴的なホールが多い富士CCの中で、一番苦手なのが12番。ティーから望むフェアウェイは、ドーバー海峡の崖のようにそびえ、その高さは約36メートルと相当な圧迫感。フェアウェイに届かなければ、強烈な打ち上げになり、しかも足元は傾斜のラフなので、なんとか脱出しようと再度力んでしまう。OBを打たずに7や8を叩くこともあり、自分には地獄のようなホールだ。

ところが次の13番はそれに比べたらまるで天国。最大で52メートルの豪快な打ち下ろしのパー5。左ドッグレッグでボールの落下地点の右はかなり広いことからスライサーでも安心だ。2打目地点へと下っていき左に曲がると、突如正面に雄大な富士が姿を現す。12番の大叩きなど、すっかり忘れさせてくれるほど美しく、ここは「天国の入口」なのかと錯覚をしそうになる。打ち下ろしのため3打目はショートアプローチになり、しかもグリーンはかなり受けているので、パーで上がれることが多い。「地獄の12番」のち「天国の13番」。設計者の赤星四郎に、なぜこの組み合わせなのか、聞いてみたいといつも思うのだ。

富士山麓の景観に自然に溶け込むクラブハウス

登録有形文化財として最初に登録されたクラブハウスは、アントニン・レーモンドによるもの。温もりが感じられる木造のハウスだ

富士カントリークラブ

静岡県御殿場市東山2472
18H・6789Y・P72 
コース設計/赤星四郎


文/吉川丈雄

特別編集委員。1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースのスペシャリスト。現在、チョイス誌ベスト100選考委員、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動


月刊ゴルフダイジェスト2021年10月号より