Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 月刊GD
  • 【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.283「値上がりで悲しみの巻」

【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.283「値上がりで悲しみの巻」

最近の物価高騰で多くの影響が出てきています。そのなかでも、僕の行きつけであった町中華が暖簾をしまう決意をしたり、よく行くゴルフ場のおいしいビーフカレーが値上がりをして、内容も変わっていたりなど……。悲しい現実を目の当たりにしてきた今日この頃。と思えば、まさかのスコアも高騰してしまいました。スコアも物価ももっとよくなってほしいですね。

ILLUST/アオシマチュウジ

前回のお話はこちら

昔ながらのカタカナ文字に哀愁漂う

よく伺うゴルフ場から名称変更のご案内が届いた。オーナーの会社が外資になるので、ゴルフ場の名もカタカナ文字の小洒落たものになる。ここのコースは歴史もあり、カンツリー倶楽部といった具合に昭和生まれのおじさんには、とても由緒正しき歴史の重みを感じさせる音の響き、カントリーではなくカンツリーというのがいい。

今でもいろいろなところで古きよきカタカナ響きが残っているのがとても嬉しく感じる。ビルディングをビルヂング。とんかつをカツレツ。カレーライスをライスカレー。そんなのどうでもいいことなのだけれど、今風に逆らってそのままで通している気概を感じさせる。

新しい名称のコースは、おしまいがCCになっていた。コースは同じなれども、そのカンツリー倶楽部が残してきた歴史までも少々水を差された悲しき気分になってしまった。日本庭園を感じさせる最終18番の松林。7番、パー3の池の配置は、清澄庭園とまるで同じだとマネジャーに伺った。

春は桜、秋の紅葉。四季折々のしつらえをゴルファーたちは楽しんできた。コース名が変わるだけでコース自体は何も変わらないのだが、一抹の寂しさを感じてしまうのは私だけであろうか。


行きつけの町中華の閉店報告に悲しむ

と思っていたら次のはがきは、よく通っていた町中華の閉店のお知らせであった。もうこの店は40年近く通っていた。JR 「日暮里駅」から徒歩5分くらいの町工場が立ち並ぶ一角にひっそりと暖簾を出している、カウンター5席、テーブル2列の小体(こてい)な店だ。

近頃は、工場がベトナムやタイに移り、マンションに様変わりしてたものの、地元ファンの熱烈な支持でいつも繁盛していた。よく取材のお願いをしていたが、「ごめんね。うちはテレビに出るほどの店じゃないから断っているの」の一点張りで断られ続けていた。後から話を聞いたら、いろいろなオファーをすべて断っていたのだという。

それでもインターネットの時代、取材お断りがかえって話題となり、時折行列までできていた。おじさんとおばさんと中国人のおばさんのパート、計3人で切り盛りしている。そんなどこにでもありそうな町中華。ラーメンは俗にいう支那そば。澄んだスープの醤油味。中太のちぢれ麺にナルト、メンマ、チャーシュー1枚、ネギ、ほうれん草の茹でたもの。いわゆる青菜がのっている昔ながらのラーメンだった。

「師匠、近頃ナルトを残すんだよ、若い人は。それが続いていたからかみさんにナルト抜いちゃえば、原材料も高騰しているんだからとせっつかれたんだよ」と言われた。それでも客が残そうが残すまいが、ナルト入りを貫いていた。ほうれん草もわかめに変えてとよくリクエストされたそうだが、ほうれん草でずっと通していた。

タンメンはあれど塩ラーメンはなく、天津丼はあれど天津飯はなかった。五目そばは塩スープ、広東麺は醤油スープと昭和の味をとことん貫き通したが、おやじさんも78歳になり、思うように中華鍋が振れずに今まで通りの焼きめしが作れなくなったという。だから暖簾を10月末日にしまうことに決断したらしい。なんとも切ない。

スコアもビーフカレーも高騰でがっかり

世の中の移り変わりに少々敏感になっていた矢先のこと、よく友人に誘われるコースにてラウンドをすることとなった。そのコースに行くときは、友は必ず「ビーフカレーを食べに行こう」とメールをしてくる。友人とのゴルフも楽しみなのだが、レストランのビーフカレーがべらぼうにおいしくて楽しみでならないのだ。

流行のスパイシーカレーでも、インド風というよりは、洋食系の欧風カレーで、甘みと辛さがほどよく、油断していると体がほてってくる。小さなサラダとカップのスープが付いて税込みで1500円は、今どきのゴルフ場としては高くもなく安くもなく感じる。カレーのなかにはゴロリゴロリと和牛の塊が5つぐらいあるのでコスパには優れていた。

黒みがかったルーをソースポットから平皿の白ご飯に「どろーん」とかけて食らいつく。また大きな入れ物に福神漬けが取り放題で、気取りのない庶民的な漬物と、王道を行くフォンドヴォーからじっくり仕込んだカレーが抜群の相性であった。

ところが、レストランに行くと入口に昨今の物価高騰によりメニューの価格を変動させていただきましたの文字。メニューを開くと、ビーフカレーが2300円になっていた。1500円からいきなり800円もジャンプアップ。でも味は変わらなければと頼んでみると、遠慮気味にルーがかかった状態での再会。香りはいつもと同じ。しかし、ビーフの塊が小さくなり5つだったものが3つに減った。いくらでも食べ放題だった福神漬けが白米のわきにしょぼんと盛られていた。あー悲しいなー。

後半は久しぶりの50台のスコア。この不景気はいつまで続くのやら。物価とともにスコアの上昇にはしょんぼりな一日だった。

スコアも物価も 高騰は ご勘弁

月刊ゴルフダイジェスト2022年11月号より