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【笑顔のレシピ】Vol.118「何をするかより何を言うかが大事な理由」

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

TEXT/SHOTANOW

前回のお話はこちら

教え子たちが活躍をするとメディアや他のコーチからどのような練習をしているのかと聞かれる機会が増えます。基礎練習を大事にしているので、素振りや短い距離のアプローチ練習がベースなのですが、それを伝えると、たいてい「えっ、それだけ?」と拍子抜けされます。

練習のバリエーションや内容はもちろん大切。レッスン前には課題に合ったものを準備して臨みますが、もっとも大事にしているのは選手に応じた練習中のコミュニケーションです。


たとえば、10ヤードのアプローチ練習。ゴルフに対する熱量は大きいけれどまだ技術力が低い選手には、基礎の大切さを説きます。目標にどれだけ寄ったかより、「どんなショットでもキモになるのは体幹の使い方だ」と何度も声をかける。単調な練習をやり続けることになりますが、上達の意欲が高いので根気強く続けられます。

一方、熱量の高くない選手には、「10球打って1メートルの範囲にどれだけ入れられたか、記録を作ってみて」と結果に目を向けてもらいます。10球終わったら次の10球でその記録を上回るように再チャレンジさせる。

時には一緒に勝負したりもします。このように単調な練習にゲーム性を取り入れてまずは楽しいと思ってもらい、練習に没入できるベースを整えるのです。

あえて声掛けをしないというのもコミュニケーションの一つ。熱量も技量も高い子には、たとえ再現性高く動けていても、「いいね!」とは声を掛けずに見守るだけということもあります。さらには「まだまだできるだろ。まさかそれで満足してないよな?」ともう一段レベルを引き上げるような声掛けもする。

このように練習メニューは同じでも、選手から引き出される力を変えることができます。応用すれば、レベルの異なった選手同士のグループレッスンもできるようになる。指導者は良かれと思って新しいメニューや難しい課題を考えがちですが、掛ける声から見直してみるのも一つの方法なのです。

PHOTO/Hiroaki Arihara

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月29日号より

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