Myゴルフダイジェスト

【笑顔のレシピ】Vol.114「“約束”の重み」

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

TEXT/SHOTANOW

前回のお話はここちら

僕がジュニア選手のコーチを引き受ける際、事前にある取り決めをします。それは、「約束が守れない場合は、必ず自分で連絡をする」ということ。

例えば、レッスンの予定が変更になる場合。そのときには、親御さんではなく本人が直接僕に連絡をする約束です。

理由はどうあれ、予定の変更というのは多少なりとも言いづらいものです。相手が目上の場合はなおさら。ですが、社会に出れば、スケジュールの管理や連絡は自分でするものです。親御さんはいつまでも助けてくれません。

だから、変更の理由やどう変わるのかも含めてしっかり伝えられるようにするトレーニングの一環として、わざわざ取り決めを設けているのです。

最近では、メールやメッセージアプリが浸透して、約束を変えることのハードルが下がり、ひいては約束自体の重みが軽くなっているように感じます。

昔であれば、事前に決めた予定を変更したくてもそれを伝える術(すべ)がないので、どうにかして約束を守る方法を考えていたはず。

それがいつしか「連絡をすればOK」となり、さらには「連絡をせず、その相手との関係を絶ってしまえばいい」という人までいます。SNSのアカウントでブロックすれば、そこで人間関係が切れてしまう時代ですからね。

僕の考え方に対しなんて昭和的なんだ! というツッコミをもらいそうですが、約束にこだわるのには理由があります。

それは、「目標の達成=自分との約束を守る」ということだからです。例えば飛距離を伸ばすために素振りを1週間続けるという目標を掲げたとします。それはつまり、自分自身と約束したということです。他人との約束を軽んじる人は、自分で掲げた目標も軽く扱うので、成長や自立をすることができません。

これから今以上に道具や手段が進化しても、約束ごとの重みをしっかり伝えられるコーチでいたいと思います。

(PHOTO/Hiroyuki Okazawa)

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月1日号より

青木翔の著書『打ち方は教えない。』好評発売中!