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【ゴルフ野性塾】Vol.1714「スウィングはアドレスが素顔」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

時、過ぎるは早い。

今日12月16日。現在時午後1時45分。
いつ降り始めてもおかしくない暗い空、空全面を覆う低き雲、そして東の空が見えなくなって来たとゆう事は福岡空港迄、雨降り始めたか。
現在の気温を知りたくて女房殿に声掛けた。
「今、何度だ?」
「22度よ。アラ、これって部屋の中の温度だった。でもそれでいいのかしら」
「良くない。外の気温教えてくれ」
女房殿、携帯をいじくり出した。
「11度。冬、間近だからネ」
「携帯で気温迄分るのか?」
「分るわよ。何でもボタン一つで分るんだから便利なものよ。今日、何歩歩いたかも分りますよ」
「しかし、主婦って大変だな。主婦の大変さ、コロナで15階に閉じ籠らなきゃ分らない事だった。家事しても給料は出ない、欲しい物も買えない、食べたい物あっても我慢しなければ、だろう。その点、男は楽だ。給料貰えるんだから」
「尽くす人が尽くし甲斐のある人なら主婦も楽しい仕事ですよ」
「俺って駄目か?」
「私に聞くより自分に聞いてみれば? 聞く相手、間違えてるわ」
雰囲気の悪さを覚えた。
何か疑っている気配だ。
雅樹はどこに行った?
明日は久し振りの休養日だから昼過ぎ迄、眠ると言っていたが、まだ寝てるのか。
もうすぐ午後の2時になるってゆうのに、寝過ぎだ、雅樹ッ。
雅樹が起きて来た。
寝起きのボサボサ頭で「腹減ったァ」と言いながら居間に入って来た。
助かった。
いつ迄、同居しているつもりだ、と思うが、雅樹がいないと窮屈さ強まるのは間違いない。
私の結婚生活46年、疑われなかったのは最初の3年だった。
43年間は窮屈さ覚えて来た。
そしてこの22カ月、大人しく静かに過して来た。なのに再びの不穏な気配である。
読者諸兄、如何お過ごしか。
平和なのか、不穏なのか、それとも何も変らずか。
アクビが出た。
少しの緊張覚えると私はアクビする。また出た。
体調良好です。
なれど、いささかの不穏の気配ありだ。
それでは来週。

人、それぞれだ。
クローズスタンスで打て。

アプローチでボールが右に飛び出すクセがあり、練習場でいろいろ試した結果、右足を20センチくらい後ろに引くクローズスタンスにすると、真っすぐ飛ばせることを発見しました。ですが、クローズスタンスでアプローチするプロゴルファーはいません。友人にも不格好だ、やめろ、と指摘されます。クローズスタンスのアプローチ、塾長はどう思いますか。真っすぐ打てるようになれば、オーソドックスなオープンスタンスに戻すべきでしょうか。(愛知県 加藤優紀・44歳・ゴルフ歴15年・平均スコア92)


何事にも人、それぞれの想いを私は持つ。また、何事にも基本在りの想いも持つ。
この自在が変化を生み、変化の先の進化を生むのではと思って来た。
意識しての認識、意識せずの認識もある。
意識しての認識は知恵と呼ばれ、意識せずの認識は感性と呼ばれて来たが、知恵も感性も人の体のどこかに宿って来たものと思う。
やっぱり、人、それぞれの想いは強い。
貴兄のアドレス時の体勢、右足を引いての構えは人、それぞれの構えであり、その構え、一つの基本でもある。
貴兄が知らなかっただけだ。
プロのやっている事が絶対ではない。正しいと断言出来るものでもない。
プロのやってる事、言ってる事に顎を引き、腰を引き、爪先を閉じる人は多いが、アンタのやってる事と言葉を変えれば自在性は生れよう。
肯定も出来れば否定も出来るのが人、それぞれの領域。
貴兄はプロのやってる事、言ってる事は絶対と思う権威への忠実な信奉者だ。
私は24歳でクラブを握り、27歳でプロテストに通り、28歳でプロツアー参戦したが、権威への信奉心は持たなかった。
人、それぞれの意識を持ってゴルフクラブを持った。
ただ、スウィングの型の模倣は好きだった。
模倣の継続は好まず、ああ、このスウィングだ、と思った時には模倣相手を変えた。
節操も忠実さも持たぬ適当な生き様だった。

スウィングリズムを模倣するには直の眼が要る。
ゴルフ始めて6カ月過ぎた時、私はジーン・リトラーのスウィングとリズムを真似た。
厚木国際のテレビマッチを見学に行った。対戦相手は河野光隆さんと安田春雄さんだった。
リトラーの腕の太さに驚いた。
鹿沼に戻り、松の木にブラ下がって懸垂100回を始めた。
右腕だけ、左腕だけの30回の懸垂もやった。
器具を使ったトレーニングだと強化部分だけが太くなる。
己の重たさで筋力アップを図れば他の部位も太くなって行く。
だから私は器具使用よりも己の体重を使うトレーニングを好んだ。

執筆時、私は資料を必要としない。原稿用紙、フェルトペン、修正液、辞書だけで38年間の執筆生活を過して来た。
ゴルフ理論、随筆、漫画原作に資料は要らなかった。
マスターズの観戦記、最初は電話送稿だったが、送稿中も頭の中で加筆し、その加筆部分を口述した。
どこにいてもファックス送稿出来る時代が訪れ、便利さは増した。特に泊る部屋からの送稿は助かった。
私は現在の便利さについて行けていない。
携帯電話は持つが、小さな送受信だけの携帯であり、画面は送信相手、受信相手の番号とショートメールが見られるだけの古き携帯電話である。
メールは打てない。
故に返信は出来ぬのです。
メールで浮気がバレたなんて話、私には縁なき事である。
暗証番号も要らない。携帯は聞いて話すだけのものだ。

貴兄のアドレス、不格好との指摘ある様だが、どこが不格好なのか分らない。
望む結果出れば、それが最善のスウィングであろう。
ゴルフスウィングはアドレスが素顔と思う。
バックスウィングで素顔への化粧が始まり、トップで個性が生れ、フィニッシュで化粧完成だ。
己の素顔に愛おしさを覚える人は幸せな人と思う。
素顔を化粧で隠そうとする人よりは幸せの時、多いのではと推察する。
貴兄は素顔を大切にすべきである。
変えるな。
いつ迄もクローズドスタンスで打って行け。
人、それぞれだ。
今、私は14本のクラブ全部、スクエアスタンスで打っています。腰への負担ないのがいい。
クローズドスタンスはダウンスウィングへの負担強く、オープンスタンスはバックスウィングへの負担強まったが故にだ。
腰への負担、均等なのはスクエアである。
貴兄は若い。
腰への負担、感じぬ年齢であろう。しかし、65歳過ぎれば負担を覚えると思う。
その時に変えればよいのです。
プロのスタンス、絶対ではない。アマの方のスタンスも絶対ではない。
アマもプロも基本の型を教わり、経験の中で己の型とし、戦いの中で成功の確率求めて来たスタンスがある。
繰り返す。
人、それぞれだ。
奇は凡に通じ、凡は奇に通じると思う。周りの眼線は奇であっても己の眼線だと凡なりだ。
クローズドで打て。
悩むな、惑うな、疑うな。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年1月4日号より