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【ゴルフ野性塾】Vol.1711「膝と足首の硬さがティーアップの高さを決める」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

今日11月25日、木曜日。

現在時午後1時13分。
19日午後1時に自宅を出て22日午後7時25分帰宅した。
19日と21日の2日間、午後7時から9時迄、神戸塾生の指導を行い、20日と22日は神戸ポートピアホテル2620号室で朝からペンを持っていました。
平成5年8月、熊本塾を開いたが、その年と翌平成6年は2日連続の塾生指導していたと記憶する。
久し振りの2日間指導だった。
神戸塾生にとって2日間は驚きの指導だったと推察する。
塾長がやる気になったと思ってくれれば幸いである。
神戸へは12月も行く。
東京へも行かねばならぬ。
今朝6時37分、15階を出て大濠公園へ向った。
大濠一周して帰って来た。
歩いた距離4キロ。
本稿、ファックス送稿した後、また大濠へ向います。
体調良好です。

自分に合うティーの高さを探せ。

久しぶりに女子プロの試合を見に行きました。彼女たちが打つボールを見ていると、本当によく飛んでいます。おそらくヘッドスピードは自分と同じくらいだと思いますが、キャリーで20ヤード、ランを含めると30ヤード以上は飛んでいると思います。塾長、女子プロと同じ飛距離とは言いませんが、せめてあと10ヤード飛ばす方法はありませんか。(千葉県・匿名希望・52歳・ゴルフ歴25年・平均飛距離220ヤード)


200ヤード出るヘッドスピードであっても球質の異なり様で230ヤードのドライバー飛距離は出せる。
逆に170ヤードしか飛ばない飛距離も生じる。
いずれも球質が生む飛距離差である。
飛距離の出る球質、飛距離の出ない球質、その違いはインパクト直後のクラブヘッドの加速性にあると思う。加速持てば飛距離の出る球質が生れ、加速ないと飛距離は出ない。
また、落ちてからの転がりも球質次第で変り行くものだ。

私は低い球を打っていた。
23年前、バンプラGCでのジュニア塾のコーチ合宿時、私は熊本塾のコーチ3人と回った。
笠りつ子の父の笠清也、伊藤龍志、堀田廣樹の3人である。
3人共、ハンディゼロの熊本県の国体選手であり、九州のトップアマだった。
バンプラGCの3番ホールは470ヤードのパー4。ティーの前150ヤードはウォーターハザードであり、しかし、フルバックティーから打つ者には何のプレッシャーもないティーショットだった。
私のドライバーショットは低く出た。
日頃よりも低かった。
アッ、と3人の声が同時に出た。私はいつも通りのフィニッシュで球の行方を追った。ウォーターハザードに入るとは思わなかった。どうして声を出すのか、不思議だった。
球はウォーターハザードの先50ヤード、キャリー200ヤード地点に落ちてコーンと弾んだ。
転がった。
第2打地点に行ってみれば3人の球より50ヤード先に止っていた。
「あの球でどうしてあそこ迄飛ぶとですか? どうしたらあの低さで上り斜面を駆け上るとですか? 池に入る様な低さでしたよ。ヒールトップと思いました。それがどうしてッ!」
私は答えなかった。
説明する事が出来なかった。フェアウェイは受け斜面であり、逆目の芝目でもあり、それ迄、100ヤードの転がり生じた事は一度もなかったからである。
そのホール、ズーッと考えた。
だが分らなかった。
偶然のティーショットだった。
低く打つのは好きだったが、意図した球質じゃなかった。
水面ギリギリの高さを飛ぶ球だった。
だから3人は声を上げた。
次のホール、ティーの高さを変えた。5番ホール、アドレス時の球の位置を変えた。6番でも7番でも変えた。しかし、3番と同じ球は出なかった。
いつもより低くは出ても、キャリー距離、日頃と変らず、転がりは少なかった。

膝と足首の関節硬い人は高いティーアップした方がいいと思う。逆に軟らかい人は低いティーアップで打った方がインパクト後の加速は増す。
練習場でドライバー打つ時、1球毎にティーの高さ変える人は少ない筈だ。自分のティーで打つ人も少ないと思う。
だからティーの高さには無頓着であり、備え付けのティーの高さに順応したスウィングが出来上って行く。膝と足首の関節の硬さに関係なしでだ。
青木功さんのティーは低かった。尾崎将司さんのティーは高かった。
青木さんのフィニッシュ時の両の膝はくっ付き、右足スパイクが完全に裏返る事はなかった。
尾崎さんのフィニッシュ時の両の膝は離れていた。スパイクは裏返っていた。膝と足首の関節の硬さが作るインパクトとフィニッシュ態だった。

1月上旬、尾崎さんと対談した。その対談はシーズンオフの恒例企画だった。
習志野の尾崎さんの自宅でテープレコーダー一つ、対面で座る尾崎さんと私の間に置いて2時間余、毎年語り合った。
後日、尾崎さんが雑誌企画の対談を許したのは私だけと聞いた。
カメラマンも入れず、担当編集者も入れず、2人だけで語り合う2時間余だった。
尾崎さんが言った。
「あの青木の兄チャンの右足の使い方、俺には出来ないな。アンタ、出来るか?」
「出来る。塾生にもフィニッシュで左膝と右膝をくっ付けよと教えてる」
「皆、出来てるのか?」
「出来る奴もいれば出来ん奴もいる。要は関節の硬さだと思う」
「俺も硬いからな」
「塾生を見る限り、関節の硬い者は素直な球を打つ。軟らかい者は癖球を打つ。野球もそうじゃなかったのかな」
「考えてみりゃそうだった。俺の球は素直だった。稲尾さんや池永さんの球に較べると遥かに素直だった。だからプロでは成功しなかったのかも知れない。稲尾さんや池永さんの関節は軟らかかったからな。そうか、関節の硬さか。そして、それが俺のゴルフの武器となった訳だ。俺の打つ球は素直だ。杉原さんや青木の兄チャンとはそこが違った訳だ。ただ、この事は誌面に載せるなよ」

時効と思う。だから書きました。

尾崎さんの球は全部、素直な球だった。癖球じゃなかった。
日本で一番素直な球を打ったのは尾崎さんと思う。
二番目が樋口久子さんだった。
私は癖持つ球でもなく、癖なき球でもなかった。
中途半端だった。
尾崎さんは高構えの人であり、青木さんは低く構える人だった。
倉本昌弘は高く構え、中嶋は高き構えと低き構えの中間の人間だった。
樋口さんは高く構え、岡本綾子は低く構えていた。

今、想う。
23年前のバンプラの3番、ダウンスウィング途中から右足が左足に摺り寄ってなかったか、と。そしてフィニッシュ、アドレス時の半分のスタンス幅になってはいなかったか、と。

打ち終えた後、下半身をアドレス時に戻してみたらいい。
アドレス時と同じ位置に左右の足、収まっているか、を。
若い時のスタンス幅のズレは飛距離を生む。スウィングリズムの均一さも生む。だが50歳過ぎた時のスタンス幅のズレは球を曲げると思う。球の回転の多さも生むと思う。それは風に弱い吹き上りの球質だ。
練習場、己のティーの高さで球を打って貰いたい。ヒモ付、重し付のラバーティーを勧める。
次に1球打つ毎に足の位置のチェックをして貰いたい。
いい球打てた時の足の位置の確認だ。そして、その位置での球叩きを目指せばいいのです。
それで貴兄の球質は変ると思う。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2021年12月14日号より