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【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.273 「ゆるさは年のせい?」の巻

毎月ゴルフを欠かさず、普段から運動するようにしていますが、最近はいろいろな所の“ゆるさ”で年を感じるようになりました。おいしそうな料理を見て「ヨダレが垂れそう」なんてよく言いますが、昼食のメニュー表を見て本当に垂れてしまうとは……。友人には「ヨダレ垂らしてたろ~」なんて言われ、ちょっと恥ずかしくなってしまいました。トホホ……。

ILLUST/アオシマチュウジ

初めてのコースはキャディさんがとても可愛い

年を取るといろいろな所がゆるんでくるもので、時々自分が情けなくなる。

先日は、友人に誘われて木更津方面へゴルフに行った。秋晴れで気持ちの良き日。今年も残り一カ月となっているのにも関わらず、気温が20度近くあるのは、寒くなくて嬉しい限り。だが、こんな私でも地球温暖化がちょっとキニナル。

今回は初めてのコース。なんでも昼飯がとても旨いらしく、とても楽しみだ。そして、キャディさんのウェアが可愛いと評判になっているそう。

コースに到着してロッカールームへ。身支度を整えて、1番ホール。320ヤードのパー4。早速カートに乗ったキャディさんが登場した。白いパンツに白いタートルネック。ピンクのラインがとてもチャーミングで可愛らしい。

私らの世代と言えば、かなりのおばさんが、青だか緑だか、言葉では表せない色のウェアを着ていた。まるで町工場の作業服みたいな恰好をしていたものだが、今はスタイリッシュになったものだ。

ヘアスタイルもポニーテール。ピンクのサンバイザーにシューズもピンクで、とてもイケてる。


私の見立てでは、彼女は20代前半。「君いくつ?」なんて聞けないから、あくまで予測である。と思っていたら、友人が「キャディさん、君いくつ?」なんて聞きやがる。「23歳でーす」だって。私の予測は大当たり。

「なんか運動やってるの」なんてまた聞いている。

「はい! 研修生で、バイトでーす」と答えている。今のゴルファーは男女ともに、細身でアイドルのような体型の人が多い気がする。彼女も細身だが、なるほど、筋肉質のようだ。しかも小顔。可愛いキャディさんと回れるとあって、おじさん一同大喜びである。

かつ丼の写真があまりに旨そうで目を奪われる

前の組がホールアウトしたので、キャディさんから「では、お願いします」と声がかかる。一打目はフォローの風に乗ってイイ感じ。二打目の残りは140ヤードくらい。8Iでパーオンに成功。2パットでパーをとり、幸先よし。

こんな調子のまま4オーバーで前半をホールアウト。これはなかなかの好スコア。可愛いキャディさんのご利益なのかもしれない。

さて、評判の昼飯。まずは生ビールですぞ。メニューは写真付きで、料理雑誌やグルメ本のようにキレイに撮られている。まずは「豆アジの唐揚げ」と「なめろう」を肴にビールを楽しむ。

「豆アジ」は頭からバリバリ食べる。揚げ方よし、味付けよし。「なめろう」はねっとりとしているのに、魚が新鮮なのか身がシコシコとしてとても美味。思わず「アサリのかき揚げ」も追加してしまった。この食堂は大当たりである。さて、〆のメシは何にしようか。

けっこういい感じにお腹に収まっているので、ソバかうどんか……、ラーメンの単品くらいかな。なんて考えていたが、ふと目に付いた地元豚のかつ丼に釘付けになってしまう。

丼から肉厚の豚カツを箸で持ち上げている構図の写真だった。半熟の地卵の濃い黄身が、その肉から滴るように、ねっとりとまとわりついている。丼のご飯からも湯気が立ち昇り、米粒が立ってピカピカと輝いている。

思わず出たヨダレを指摘され恥ずかしくなる

「旨そうだな……」と眺めていると、知らず知らずのうちにヨダレが出てしまった。いけね、と思い慌てて手で口元をぬぐう。すると友が「お前、今のヨダレ?」とニヤニヤしながら尋ねてきた。

まずい現場を押さえられた。「かつ丼の写真を見たら、ついつい出ちゃった」と白状する。最近確かに、「かつ丼食べてないなぁー、かつ丼食いたいなー」と、ことあるごとに考えていた。まさかヨダレになって表れてしまうとは……。

小丼にもできると書いてあるので、それで注文した。写真通り、いや、それ以上の旨さであった。

後半のスタートホール。バッグからボールを取り出そうとしゃがんだとたんに、「ブッー」と屁が出た。大きな音ではなかったので、知らん顔をしていたが、「お前、屁こいたろ?」と友人に大きな声で言われてしまった。

ヨダレも恥ずかしいが屁も同じ。いやそれ以上だと思い、「してないヨ」ととぼける。「したろ」「してない」が続き、よりによって可愛いキャディさんに「こいつ屁したよね」と聞きやがった。

するとしばらく沈黙。困ったキャディさんが小さな声で、「時々耳が遠くなって、何も聞いてません」と頬を赤らめながら言ってくれた。

もちろん彼女は耳が遠くなる年齢ではない。その可愛い嘘が、屁こきおじさんを救ってくれた。

年は取りたくないなぁー。

かつ丼で ヨダレ垂れるわ 加齢かな

月刊ゴルフダイジェスト2022年1月号より