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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.56「ディボット跡も、長い目で見ればラッキー!?」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO /Hiroaki Arihara

前回のお話はこちら

僕が「あるがまま」にこだわるのは、それがゴルフの精神やということもありますが、スキルと深くつながっているからなんです。

ボールというものは、いやボールに限らず、地球には引力があるんやから、丸い重たいものは低いところへ向かいます。高いところに落ちた丸いものが、そのまま高いところに止まることは、めったにありません。

高いところなら、これはティーアップしておるのと同じやから、打つのは簡単やね。アッパーブローでもダウンブローでもアウトサイドインでも何でもOKです。

せやけど窪んだところにあるボールは、そうはいきません。スキルが必要になります。上からガツンといくのか、それともわざとトップさせてゴロでいくのか、そういう選択もゴルフの楽しみやと僕は思うのです。


「いや、スコアさえよければ技術なんて関係あらへん」と言うなら、どうぞ6インチでやってください。けど、長いこと、歳がいってもゴルフを楽しみたいなら、僕は「あるがまま」をお勧めします。

誰でも歳を取ります。どんなに筋肉隆々で飛ばし自慢の人でも、必ず衰えます。僕も60歳を過ぎて飛距離に関しては、それなりのゴルフをせなあかんようになってます。自分の現状を認めて回らんことにはコースマネジメントもできませんから。これは誰でも通る道やと思います。

ところが、パワーで力任せのゴルフをしてきた人は、なかなか自分の衰えを認められんみたいなんです。いつまでも「オレ、ここは9番アイアンで乗ったはずなんやけど……」とか昔の飛距離のことばかりグジグジ言うとります。そんな昔の話を聞かされても、ちっとも面白(おもろ)ないですよ。

おまけに、いつも「6インチ」でばかりでプレーしておった人は技術を磨いてこなかったせいで、飛ばんようになった部分をスキルでカバーできへんのです。

それが自分のスキルを育ててくれると思えば、ディボット跡にはまったときは、その場ではアンラッキーやと感じたとしても、ゴルフ人生という長い目で考えればラッキーということやないですか。

一歩引いて現状を受け入れると、また違ったゴルフの面白さが味わえるようになります。

「ティーアップするときと、グリーンに乗ったとき以外はボールに触らんゴルフをやっておれば、いろいろな対処方法を考えて覚えていきます」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月16日号より