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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.54 「プリファードライ、安易に適用しすぎ!?」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Hiroshi Yatabe

前回のお話はこちら

今回のお題はプリファードライです。知らない人おるでしょうから一応説明させてもらうと、雨などでコースコンディションが悪くなったときに、ボールを拾い上げて、拭いて、決められた範囲に置けるというローカルルールです。

このローカルルールを適用するかどうかは、大会の委員会が決めるんですけど、僕が思うに、どうもこのルールは安易に適用されすぎておる気がするんです。

ゴルフの精神では、「あるがままに」が大原則やと僕は思うとります。せやから、プリファードライはゴルフの精神に反する訳で、このルールはギリギリまで適用せんようにせなあかんのではないかと、僕は思うんです。

ある大会でプリファードライが適用されたときに、競技委員さんに「どうしてプリファードライなんですか?」と聞いたことがありました。


下のコンディションが悪いとボールに泥が付いて、それが不公平になる、という説明でした。確かにフェアウェイにいったボールに泥が付いていたら、「せっかくフェアウェイキープした意味ないやん」と考えて、「アンフェアや」と思う選手もおると思います。

せやけど、プリファードライが適用された試合では、泥がついていようが、いまいが、全員がボールを拾ってええライに置いています。「プリファー」とは「好きな」という意味やそうです。つまり「好きなライ」ということです。

普通にラウンドしておれば、フェアウェイに打っても、1日に1回や2回は、ディボット跡にはまる不運なことがあります。そこでどう打つかがプロゴルファーの腕の見せどころやと僕は思うんです。

出場選手全員がそれをやっておれば、賞金が懸かっている試合やから、僕も背に腹は代えられないので、ボールを拾って置き直します。けど、だんだんと自分が情けなくなってくるんです。「ゴルフって、これでええのか?」と考えてしまう訳です。

町内会のコンペなんかでは、いわゆる「6インチ」でプレーすることはあります。100が切れん人もぎょうさんおるのですから、プレーファストの観点から、それもありやと思います。けど、プロの試合でそれをやってもええのか、と僕は思うのです。

プロの腕の見せどころが減りますわ

「プリファードライが適用されると、ディボット跡から打つ選手はひとりもおらんようになってしまう。腕の見せどころがのうなってしまうのです」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月2日号より