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【笑顔のレシピ】Vol.88「“恋愛禁止”は果たして子供のためになっているのでしょうか」

TEXT/SHOTANOW

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

前回のお話はこちら

「いやー。言えないですよ、お父さんには……」

最近になって教え子の女子から、こんなセリフをよく聞くようになりました。

僕は選手たちをよく知るため、ゴルフ以外の話をします。どんな勉強をしているのか、学校では何が流行っているのかなどなど。好きな人はいる? なんていう話もします。そこで返ってくるのが「親には言えない」という答え。どうやら、家庭内で恋愛禁止のルールを設けられている子が増えているようです。

きっと、ゴルフに集中する環境を整えたいという意図があるのでしょう。ですが、好きな人ができるというのは、他人の気持ちを考えられるようになることです。思いやりや感謝の気持ちをこれまで以上に覚え、相手から自分がどんなふうに見られているのか知るという想像力も育まれるでしょう。

もちろんそういった「能力獲得」のために人を好きになるのではありません。でも将来、プロのアスリートになり競技以外のプライベートで上手くいかないとき、どう対処したらいいかという訓練にもなります。

そもそも、本来10代のうちに自然に得られる「好きな人ができ、その人を想う」という経験をさせなかったとして、成人して恋愛で問題を抱えたとき、親がサポートに入るのでしょうか? そんなことはできませんよね。いつまでも手取り足取り教えるなんて不可能なのです。

恋愛禁止の家庭には、「本人が自立したら」と考えている親御さんもいるかもしれませんが、経験をしなければ自立はできず、苦しむのは選手本人です。これはゴルフでも同じで、経験や失敗を繰り返してはじめて自立をすることができるのです。

短期的に見れば、ゴルフに集中できない期間が生まれるかもしれませんが、その分、これまでなかった大切な経験をしているということ。

ルールで縛るのではなく、本人たちを信頼して、そのときにしかできない経験を応援する存在であってほしいと思います。

恋愛も人ととして成長するいい経験です(PHOTO/Hiroyuki Okazawa)

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2021年8月3日号より

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