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【笑顔のレシピ】Vol.87「勝者と敗者の間に技術的な差なんてないんです」

TEXT/SHOTANOW

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

前回のお話はこちら

夏は学生最後の大会が開催されたり、今年はオリンピックが予定されていたりと、スポーツ選手にとって大きな舞台に挑んでいく時期でもあります。

そんな場所に立つ選手たちのインタビューで、誰もが一度は「最後は気持ちです」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。古臭い精神論ともとらえられがちですが、この「最後は気持ち」というのは、ベストなパフォーマンスを出すうえでは、欠かすことのできないピースなのです。

先日、女子プロテストの最後のラウンドがあり、僕のアカデミーでは上野菜々子が合格の切符を勝ち取ってきました。最終のテストは4日間のストローク競技で、カットラインは4アンダー。アンダーパーでフィニッシュしたものの、残念ながらカットラインに届かなかった選手が8人いました。

4日間の競技で、その差はわずか1~3打。1ラウンドに換算すると、1打あるかないかという差しかありません。トーナメントでも最終日に2打差、3打差という展開がありますが、その大会期間に限れば、勝者と敗者には“ボールを打つ能力”の差はほとんどないといえるでしょう。これくらいレベルが拮抗した状態になると、技術の差より自分の力を出し切れるのかというほうがパフォーマンスに及ぼす影響は大きくなります。

大舞台に立つ選手たちはそういった状況が分かっているからこそ、「最後は気持ちです」という言葉を発するのです。

試合で選手ができるのは、今やれることを精一杯やりきることだけ。つまり、“周りに流されない気持ち”や“自分を信じる気持ち”こそが最高のパフォーマンスを出すのに必要なことなのです

ジュニアの大会などでは、ラウンド前に「よくボールを見て」とか「カット打ちのクセに気をつけて」という技術的な助言をする親御さんがいます。でも、プレーをするのは本人。最後は選手の強い気持ちを信じて、送り出してほしいと思います。

実力が拮抗するなかで、1打の差を分けるものは、結局「気持ち」でしかありません(PHOTO/Hiroaki Arihara)

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月27日号より

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