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【笑顔のレシピ】Vol.86「人生には、思い通りにならないことがたくさん訪れます」

TEXT/SHOTANOW

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

前回のお話はこちら

昨年の今ごろ、コロナ禍の影響でインターハイや“甲子園”など、学生の試合が相次いで中止になりました。

僕のアカデミーでも、目標にしていた大会がなくなってしまった選手が多くいます。中止が決まったとき、いや、正確には中止になるだろうという時期から、コーチとして彼らのために何ができるのか、何をすべきなのか悩みました。

そして僕は、最終的に本人たちが答えを出すのをトコトン待つと決めました。

理由は2つあります。1つは、なくなった大会の意味が選手それぞれで違うということです。その大会を「これまでの集大成」と思っている子もいれば、「キャリアの中の通過点」と位置づけている子もいました。思いや重みが違うため、心に開いた穴の大きさや形は人によってバラバラ。それをこちらが勝手に作った大きさのフタでふさぐのは、乱暴だと思ったのです。

PHOTO/Hiroaki Arihara

もう1つは、この先の人生で同じくらい大きなカベにぶつかったときに、自分の力で乗り越えられるような人間になってほしかったからです。コロナ禍での大会中止のように、人生では不可抗力によって傷ついたり、前進することを妨げられるようなことが何度か訪れます。そのとき、グッと歯を食いしばって前に進む、生きる力を身につけてほしいと思いました。

さて、そんな選手たちは約1年経ってどうなったのか。結論から言うと、まるでそんなことがなかったかのように、次の目標に向かいガンガン前進しています。本当に強くてたくましい姿を見て、教え子ながら尊敬をします。

もちろん直後には喪失感から練習に身が入らない子もいたり、アカデミーにもちょっと気持ちが抜けてしまったような雰囲気が漂っていた時期もありました。でもそこで、選手たちの力を信じて本当に良かった!

大人の価値観や考えを押しつけなければ、子どもの成長はいつだって想像をはるかに超えてくれるのです。

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月20日号より

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