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【ゴルフ野性塾】Vol.1692「インパクトはバナナを握り潰す強さ」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

昨日6月30日、福岡市中央区の

赤坂おけだ糖尿病内科で2度目のワクチン接種を終えました。
1回目同様、痛い処もなければ痒い処もない、日頃と変らぬ健康体が維持できている。
左肩に打って貰ったが、腕は真っ直ぐに上がるし、左右に捻っても痛み異和全くなしだ。
抗体出来ていなければ3回目を打って貰いたい。
7月8日、熊本にてテレビ収録。
それ迄は福岡けやき通りマンション15階で昨年2月下旬から続く外出せずの日々を過す。
風が吹き込んで来る。
梅雨の明けはまだ先か。
現在時7月1日午後2時15分。
いつの間にか7月に入った。
移動多き日々は昨年2月下旬で終ったが、時過ぎるは早い。
もう7月なのだ。
横に繋がる雲の上に丸く千切れた雲、ぽつりぽつりと横に並ぶ。
風が止んだ。
女房と長男雅樹は自分の部屋の冷房を入れて過す。
私は入れない。気温30度の時でも冷房なしだ。
だから気温の上がる午後の3時間、2人は居間に来ない。

グリップの絞めの強さを鍛えよ。 

グリップは強く握らず、そっと握れ、というレッスンがよくあるような気がしますが、知り合いのシングルの人はしっかり握っていると言っていました。プロは本当にそっと握っているのでしょうか。また、握る強さは、フィンガーやパームなど握り方とも関係があるのでしょうか。(京都府・田中純也・35歳・ゴルフ歴5年・平均スコア95)

年齢が生む振りの強さはあります。
若い時は日頃の生活の中で力仕事もあれば、力を必要とする運動や遊びもあったと思う。
だから野球バットを振るにしてもテニスラケットを振るにしても、同じ7割の力で握ったとしても力の入り様は強かった筈。
それが老いれば変る。
力仕事から遠ざかり、激しい動きの運動から遠ざかると日頃の生活の中での振りの強さは穏かになって行く。
70歳過ぎれば顕著になって行く。
当然、日頃の生活の中での握りの7割の強さだとしても、若い頃の7割とは強さが違う。
そっと握れと指摘されても、そっとの強さが異なって行く。

私の東京在の友人が呟いた。
「女房の肩を久し振りに抱いた。昔と同じ様に抱いたんだが、女房が言ったんだ。昔よりは随分と優しい抱き方になったのネ」と。
「昔って何年前だ?」
「15年前か、それとももっと前か忘れてしまったよ。でも抱いたんだ」
「恥ずかしくなかったのか?」
「この年で女房の体に触るのは恥ずかしいさ。でも記念写真撮る為に背中側から両の肩に手を置いて抱いたんだ。俺、何でも後ろからが好きでさ、無意識の内に手を置いていたんだ」
「女房殿、驚いただろう」
「イヤ、全然。それでこれからたまに抱いてやろうと思ったよ」
「それ以上は行かないんだろうな。もしもそれ以上、行けるとしたら古稀の化け者だ」
「無理だネ。気持ちも体も追い付かない。そして女房が言った。優しい手の置き方と抱き方になったって。そんなものかと思ったが、年を取るって優しさが滲み出て来るのかも知れないな」
「昔は激しかったのか?」
「そりゃあ、若かったからネ。抱くのもその後も激しかったと思うぜ。今は縁遠くなって、その気もなくて忘れちまったけどな」
「女房殿は強く激しいのが好きだったのか?」
「多分。聞いた事はないが、そうだったと思う。でも、それも15年以上も前の話だ。俺も若かったんだな」

過去を想う。
一人で生き、一人で過して来た過去を抱く人、幾人おられるだろうか。
人、変り行くものと思う。
グリップ、然り。
バナナを握る強さでアドレスに入り、バナナを握り潰す強さでインパクト直前に入り、握り潰したままでフィニッシュに向え、と教えた人がいた。
鹿沼のハンディ5の方だった。
「バナナですか?」
「いつも食べてるだろ」
「いえ。食べてません。バナナって結構高いもんですから、食べるのは給料後に箱買いして寮に置いている紅玉リンゴだけです」
その方は1週間後の日曜日、バナナを二房持って来てくれた。
一房は熟して黒っぽいバナナ5本、一房は青みの残る熟す前のバナナ3本だった。
「若い時は誰でも力持ちだ。柔かく振れと言ったって、黒くなったバナナと青っぽいバナナじゃ硬さと張りが違う。今は青いバナナを握り潰す力で握りゃあいい。俺位の年になれば、黒バナナか茶バナナを握り潰す力で振ればいい。周りの変化、己の変化、そして結果を怖れるな。怖れたら終るぞ。特に君の場合はゴルフ始めるのが遅過ぎたんだから」
鹿沼市で鉄工所経営されてる方だった。
私は鹿沼CCに入社して2カ月過ぎた新米研修生。
鹿沼市内の八百屋さんで買ってくれたバナナだった。
握り潰せば綺麗に食べるのが難しくなる。
握り潰す直前の強さでバナナ握りをやり、そして南1番のスタートで食べた。

私はグリップの握りの強さを大柿七郎さんと松田専一さんに教わった。
バナナを買って来てくれたのは松田専一さんだった。
今、二人共、鬼籍に入られた。
力仕事に携たずさわる方の握りはそっとと言っても強い握りだと思う。
貴兄の知るシングルの方の仕事は力仕事なのか、机仕事なのか、それを確かめるべきであろう。
理由はある。原因もある。それが人の世の常と考える。
若い時は青バナナ、50歳過ぎれば茶色バナナ、そして60歳過ぎれば黒バナナを握り潰す強さでアドレスに入るか、トップ時の握りの強さにすればいいと思う。
私はアドレス時の握りの強さよりはトップ時の握りの強さを意識する。
その方がスウィングスピードの加速性、強まるからだ。
弱くは握らない。強くも握らない。握りの強さ崩れた時、ダフリ、トップは生じる。
己の握りの強さを知るは己一人。
ゴルフスウィングは如何に美しく握ろうとも、逆に無駄な動き多い握りであっても己の振りであり、我流の振りであると思う。

研修生時代、一日を終えし後の風呂場、浴槽の中に両の手を沈めての絞り湯飛ばしをやっていた。
最初はどうやっても水面から出て来なかった。
絞った湯が水面を割って出て来る様になったのは、ゴルフ始めて1年過ぎた頃と記憶する。
雨の日の研修会だった。
風呂に入る事が許可された。
浴槽、湯は飛んだ。
5人程の研修生が入っていた。
「強い握力してるんだな」と先輩研修生が言った。彼の所属コースは日光CCだったと思う。
無意識の内に湯を絞り飛ばしていた。
止めた。
「やってくれ」と頼まれた。
「この深さから10センチ飛ばすのか。飛距離出るのも当り前だな」
彼は真似た。
湯は飛ばなかった。
3年後、私はプロテストに通った。彼は通らなかった。
栃木県で一番研修会の成績のいい方だったが、プロテスト最終日のスコアが崩れていた。
風呂の中、湯を真上に絞り飛ばす遊びを勧めます。
握り方よりも何よりも、まずは絞めの強さを生む努力必要なのではと思う。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月20日号より