【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.923「自分に負けたくない気持ちが”負けず嫌い”だと思います」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら AIG全英女子オープンで桑木志帆選手が初優勝。昨年の山下美夢有選手に続いて2年連続でメジャー制覇を果たしました。解説の岡本さんも……
ゴルフに限らず、プロアスリートはみんな決まって負けず嫌いな性格だと言われますが、ほんとうにそうなのでしょうか。またそうでないとプロにはなれないとしてもトップに上り詰めることはできないのでしょうか。(匿名希望)
「気持ちが強くなければプロになれない」 昔はよくそんなふうに言われていました。
でもこれ、今だとハラスメントに当たるのかもしれませんよね。
プロスポーツの世界は今も昔も結果ですから、その厳しさを例えてそんな言い方がまかり通っていたのかもしれません。
結果がすべての過酷な勝負の世界であっても普通の人と同じですから、「気が強い」「負けず嫌い」の人間だけが集まってきていると考えるほうが不自然だと思います。
実際これまで過ごしてきた長いキャリアを振り返ってみても、記憶に残るような負けず嫌いな人に出会った覚えはありません。
もちろん、ビックリするほど頑固だったり気難しい人はいましたが、それだけプロの世界はユニークな選手がたくさんいるとも言えます。
一口に「負けず嫌い」と言ってもニュアンスの違いがあることにも気づきます。
ささいなことでも勝ち負けにこだわり、何としても自分が勝っていると主張したがる人や、明らかに悪いのに自分の非を認めないという人と、逆境にあっても粘り強くへこたれない、劣勢を跳ね返そうと力を尽くす人では違いますよね。
負けるのが好きで負けてうれしい人はいないと思います。
それでも人間、生きていれば何かしら勝ちか負けに直面します。
そのなかで人より少しでも有利なポジションに立っていたいと思う気持ちが、どうしても強く表に出てしまうのは、どんな人の心の中にもある普通の感情で、程度問題ということだと思います。
そんな当たり前な負けず嫌いの性分ですから、多少とも持ってないほうがおかしいのであって、アスリートであるプロゴルファーが十人並み以上の負けず嫌いであるのはむしろ当然ともいえます。
ですが、ゴルフは対人競技と違い相手のプレーを直接妨害したり、処理しにくいように導いたりはできません。
ゴルファーは自然条件と対峙しながら、自分の中にある”敵”と戦うことが求められます。
そのため、目に見える相手を打ち負かす競技ではないからゴルフを選んだと言う人がいるかもしれません。 人と争い勝負を競うのが好きではないというタイプには合っているかも。
わたしもどちらかと言えばそっちのほうかもしれません。
駆け出しの頃はよく記者の人から「ライバルは誰?」と質問されましたが、わたしは誰かに勝ちたいと思ったこともなかったし、自分のことで頭がいっぱいでした。
好敵手の存在が向上や成長をさせるなんて言われますが、それは書き手の都合であって私は違いました。
同世代に目立った選手がいれば刺激をもらうのは確かですけど、誰々に勝ちたいというような感情を持つことはわたしにはありませんでした。
わたしが思うに、負けず嫌いという言葉は、その人の性格や性分を表すものではなく能力なのだと思います。
負けるのはイヤだ、それならそのために何をやるか。
今の自分がどういう実力なのかしっかり把握して、どう解決すればいいか自分で考えて行動する。
その道を選び自分の足で歩く能力が負けず嫌いではないでしょうか。
わたしは自分以外を敵だと思うようなプロはいないと思いますし、そんなエチケットもわきまえないゴルファーは誰も相手にしませんよ。
誰もが憧れるトッププレーヤーは、きっと心優しい「負けず嫌い」だと思っています。

「矢印が外ではなく自分の内面に向いている人は成長していくはずです」 (PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2026年9月15日号より


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