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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.855「素振りは退屈な練習かもしれませんが続けてやってみませんか?」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


野球人の私はよく素振りをしていました。ゴルフで素振りを練習としてやっている人はあまり見ません。ゴルフでは、野球ほど素振りが重要視されてない感覚がありますが、岡本プロはどう思われますでしょうか。(匿名希望・48歳)


クラブやバット、ラケットでスウィングだけをする素振り。言われてみれば、最近は昔ほど熱心に行われてはいないような気がしますが、変化したのはいつ頃からだったのでしょうか。

素振りは実際にはボールを打たないのですから、ボールを飛ばす快感もないのでつまらないというのはわからなくもありません。

昔は基本の動きを体に覚え込ませるまで、素振り練習に励まされたものでした。

素振り練習は絶対の基本! という考えが強くあったとは思います。

だからといって、素振りが必要以上に美化され、スキル向上において絶対にやらなければならない練習と指摘したいわけではありません。

しかし、以前にも「素振りの重要性」をお話ししたことがあるように、クラブやバット、ラケットといったボールを打つ道具を手に持ってスウィングする動きを体に覚え込ませるには、素振りは何よりも有効な方法です。

スポーツでは、各種目ごとに特有の動きに伴う技術が要求されますが、その動きを習得するには、そのときに使う筋肉へ記憶させることに大きな意味があります。


頭ではなく、人体の各部に刷り込まれた筋肉の記憶が、必要な動きをスムーズに再現し、良いショットへ導くのです。

それは理屈抜きの反復練習で培われる条件反射の動きで、その基本が素振りと言っていいでしょう。

ボールを打たない素振り練習が、今はあまりされていませんが、たとえば剣道での素振りは現在でも最重視されていると思います。

ゴルフにおいても素振りはとても大切な練習で、古典的ではありますが、ある意味において科学的にも優れた練習法のひとつだと思います。

ゴルフは、数ある競技のなかでも知的な面が強く、耳と耳の間のスポーツと言われることがあり、練習のためのさまざまな器具が考案される傾向も見られます。

なかでも、部屋の中でもスウィングできるように短くしたぶんヘッドを重くしたスウィングのバランスが取れるようにした素振り用練習クラブは傑作だと思いますね。

ほかにも、ヘッドがリリースされ加速したときに、カチッと音が鳴るような素振り棒など、ほんとうに感心します。

世界のゴルフ業界は、実に想像力に富んでいると実感します。

こう見ると、退屈と感じていた素振りに取り組んでいた時代に比べ、今はずっと進化した素振りで上達できるようになったとも言えそうです。

たまに行く練習場で3~400球も打ち込むより、毎日100回素振りを続けるほうが、地味だけど上達は早いと思います。

考え方を変えれば、ボールを打つことはできませんが、素振りのほうがヘッドスピードの速度アップの効果は大きいし、素振りにシャンクはありません(笑)。

ラウンドから遠ざかっていた冬の間、トレーニングと素振りだけは続けてきたという女子プロが、久々にボールを打ったらなぜか飛距離が伸びていた、なんて話もあるくらいです。

素振りの効力は決して軽視できないのです。

ゴルフの神さまは知っています。

「球を打たず素振りなんかしたって上手くはならない」「素振りなんていつでもできる」と言っている人に限って、もともと練習をしない人だっていうことを。

何かと理由を付けて、素振りをやらない人が多いっていうことが問題だと思います。

すべては実践と継続ですよ。

「コースに行かずに素振りだけで18ホール回ってみるとオモシロイかもね!」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年4月15日号より