【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.218「芝の薄い季節のゴルフは上手くなるチャンス」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tadashi Anezaki
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- 高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。 PHOTO/Hiroyuki Okazawa >>前回のお話はこちら ヨコシン(横田真一)が1月の末に行われたヨーロッパのシニアツアーの最終予選会をトップ通過して、今年の出場権を獲得しました。すごいことです。彼と……
3月に入り女子ツアーが開幕、男子ツアーの開幕は1カ月後ですが、いよいよ日本のツアーもシーズンインを迎えます。
この日を迎えるにあたって、プロたちはオフの間に合宿したりするわけですが、僕もレギュラーツアーのときは、宮崎とかサイパンやハワイなど暖かいところに行ってラウンドをしてました。
一度、トレーナーもつけてトレーニングをやったんですけど、腰を悪くして開幕戦を迎えられなくなってしまった苦い経験があるんで、トレーニングよりもっぱらラウンドをしてました。
日本の冬の時期に常夏のハワイでラウンドするんは、暖かいところでゴルフができるので体が動くんでいいんですけど、何よりライがいいんですよ。綺麗な芝から止まるグリーンに冬に球が打てるわけですから、そらいい練習になります。
ただね、これが必ずしもいいことばかりやないということを思い知らされたんですわ。暖かいハワイから寒い真冬の日本に帰ってきたら、それまでの綺麗に芝が生えそろったフェアウェイとは違い日本は枯れた薄芝と条件が悪い。それである年に、アプローチがおかしくなって、ちょっとアプローチイップス系みたいになったことがあるんです。なんと5メートルのアプローチも乗らなくなりました。
日本は5月くらいまでは薄芝で、風もあってライが悪いから、春先は僕にとってはチャンス到来で、実際、条件が悪い春と秋が成績がよかったんです。
それが、真冬に暖かいところの綺麗な芝で練習した直後に、まだ寒くて枯れた薄芝で打とうとすると上手く打てなくなるわけです。
1~2カ月くらいの短い期間でも環境適応みたいなもんがあって、体の動きも快適で楽なほうに馴染んでいくもんかなと思ったりしました。
修行時代は、真冬にスキー用の上着と手袋を左右にして、厚着して不自由な状態でも打てるクラブ使いを覚えたもんです。
うちの師匠の高松志門さんがやっとったから僕もやっておったんですけど。でもそういう厳しい環境で覚えたもんは、短い間の快適なときに身に付いてしまったもんと違って、その後も長い間身に付いているもんやなと思います。あまり楽したらアカンいうことですわ。

「寒い時期のゴルフも上手くなるチャンスと思えば、楽しめますやろ」

奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2025年3月25日号より