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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.829「誹謗中傷に前向きで建設的な意見ってほとんどありませんよね?」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


パリ五輪では柔道、レスリングをはじめサッカーのビデオ判定などでも審判の「誤審」が話題に上りました。ゴルフでは自己申告ですが、この問題について岡本さんはどう思いますか?(匿名希望・44歳・ゴルフ歴22年)


パリ五輪が開催中、忙しくしていてじっくりテレビ観戦する時間を取れなかったのですが、柔道で金メダルが期待されていた日本人選手がまさかの敗退を喫したり、判定で異論が出たりしたことをニュースでは知っていました。

そのほかにも、男子サッカーや男子バスケットボールでも審判の判断が話題に上がっていましたね。

スポーツは通常、競技の公正を保つため、厳正なルール規定を設け、競技の進行を正しく導くため審判員によって監視されています。

また近年では肉眼ではとらえ切れない分野についてデジタル技術を応用したハイテク判定機器も導入され、その公平性・透明性が追求されています。


それでも、主審は人間が務めるため、どうしても不可解な判定など偏りが話題になります。

しかし、誤審問題は今に始まったことではありません。

灰色判定が多かったせいかもしれませんが、昨今だとSNSなどで抗議や憤まん、暴言、怒号が溢れることになりました。

ミスジャッジは昔からあることですが、これでもかという勢いで過激な人たちがネットを炎上させたと思います。

スポーツは国境を越え、あらゆる競技者の間に平等というのが建前であり、オリンピックはその崇高で象徴的な舞台です。

競技を観る人は全世界に何十億人もいるのに、その試合を仕切るのは主審ひとりです。

人間ですから、いつどんなときも完璧というわけにはいきません。

けれども観る者は審判にパーフェクトを求めます。

規則があり審判がいるから競技は成り立ちます。

審判はあらゆるプレーや複雑で微妙な状況も正しく判定できて当たり前だと考える。

これがもともと平等とは言えないのではないでしょうか。

主審や副審などに対して、観戦者は知らず知らずのうち、あまりにも厳格に構えてはいないでしょうか。

負けた側のサポーターが試合後になって、審判の不手際を責め立てるのは切ないとしか言えません。

パリ五輪に関するSNSに満ち溢れている罵詈雑言、誹謗中傷を眺めていると、とても暗い気分に襲われます。

こんなことになるのなら、いっそもうオリンピックなんて開催しないほうがいいとさえ思ってしまうことが悲しいです。

五輪に限らず、何か問題が起こるとネットでは誹謗中傷ばかりで、建設的な意見が広がるということがないのはなぜなのでしょう、ほんとうに不思議です。

ゴルフ競技もライブではあまり観戦できなかったのですが、山下美夢有選手はほんとうに惜しかった。でも、松山英樹選手が銅メダルを獲得してくれました。

ですが、その後のゴルフ熱の盛り上がりはあまり感じられず、ゴルフ協会はもう少し国を挙げての態勢を見せてほしかったと思います。

少しだけテレビ観戦した五輪のゴルフについて言えば、女子選手の多くが通常のツアー競技以上にプレーが遅かったという印象がありました。

プレー時間制限は設けられていたとは思いますが、なんとなくちょっと緩いと感じてしまいました。

そのとき、ふと思い付いたのは、次回大会から国際オリンピック委員会に働きかけてプレーファスト規制を課すことで、一般のツアー競技のスピードアップも促進できるのではないかということでした。

ここ数年来、改善が叫ばれながら世界のツアーでスロープレーの事態が好転していない問題があります。

リオで復活して以来、東京、パリと3大会を経てゴルフが五輪種目に定着し、世界のトッププレーヤーが参加する五輪を統括するIOCの影響力を借りれば、ひょっとしてスロープレーの抑止には貢献できるのでは……。

自己申告が基本であるゴルフならではの問題でもありますが、そういう側面で審判の方に積極的に協力を仰ぐのは発展的でいいのではないかしら?

「たとえ誤審であっても、すぐに切り替えるしかありません」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2024年9月17日号より

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