【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.134「映像チェックはほどほどに」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Masaaki Nishimoto
ここのところ関西でもゴルフ場は、まあまあいっぱいで賑わってますね。練習場もコロナ禍でも土日はけっこう賑わってました。屋内での遊びなどが敬遠され、屋外のゴルフ場や練習場に若い人が増えたんでしょう。
そういう若い人らはおおむね、貸しクラブを借りて、練習場の3階の空いておる打席で打ってます。
僕なんか、なるべく人がいない3階で打つことが多いので、彼らの会話も耳に入ってきます。
「クラブ飛んでいきそうで怖いなぁ」と言いつつ力任せに振っとったり、「何で当たれへんのやろな」と一緒に来た仲間と言い合いしながらやっとりますわ。
まあ、ここまでは僕らが若い頃と同じ光景ですけど、違うのは、今の若い子らは“当たらへん”ときには携帯でYouTubeのレッスン動画のなかから、よさそうなものを選んで、すぐに解決策を見つけ出します。
その後に自分たちのスウィングを携帯で撮り、お手本のスウィングとは「ここが違う」とか言いながらチェックしてますね。
僕らの若い頃は、自分のスウィングは練習場の端っこに掛かっている鏡で見るくらいしかありませんでした。でも鏡を見ながら顔を上げて行うスウィングと、顔を下に向けている実際のスウィングとでは感覚もスウィングの形も微妙に違うから、本当の自分のスウィングを見られるようになったんは、ビデオカセットレコーダーが普及したときからです。練習場の打席の後ろに三脚を立ててビデオ撮影する人がぎょうさんいました。
でもこれが問題で、たとえばトップでのクロスシャフトを直そうと練習してビデオで撮ってチェックする。でも直ってない、それでもっとこうかな、もっとこうかなと深みに陥り、そのうちコマ送りみたいにスウィングの途中の形を分析して、「どこでおかしなってんのかな」となる。それをやりだしたらもう病気の始まりですわ。
映像で見て直そうと思う形と、実際に球を打つときの流れのなかでの形は若干、違ってくるもんです。
今の若い子らには、携帯の画像もチラッと見て、「ああ、こうなってるんか」というくらいにしときなはれと言いたいです。
「携帯に振り回されたらあきませんよ」
PHOTO/Masaaki Nishimoto
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年6月27日号より