【20-21ティーチャー・オブ・ザ・イヤー受賞】球を打つより効果的!「ゴルフスイング体操」とは?
JLPGAの20-21年ティーチャー・オブ・ザ・イヤーを受賞した松村公美子プロ。受賞内容は「ゴルフスイング体操」。安全で効率的な体の動かし方を身に着けて、ケガ防止・上達に役立てよう!
THANKS/宝塚高原GC PHOTO/Masaaki Nishimoto
正しい体の動きを理解すれば
ムリなくムダなく自然に動ける
「体の故障をきっかけに、機能解剖学(筋・骨格・関節の構造や機能)に着目するようになりました。スイングの本質を示したかった。これを説明するため研究し、できたのが『ゴルフスイング体操』です」
これを長年実践、多くのゴルファーに健康維持、ケガ予防、技術の向上・効率的習得を図ってきた。
「本質的な動きを説明するとき、機能解剖に即した、たとえば肩甲骨の内転・外転(※1)といった言葉をきちんと使っていきたいんです」
体の仕組みを考えると、これまでのセオリーが間違っていることもあるという。たとえば……
●アドレスは股関節から前傾する。
「周りの筋肉が上手く動きません。股関節は軟骨の球状関節でできているので、グルグル回すと壊れやすく、力の伝わり方も非効率」
●2軸で体重移動。
「左右の股関節に体重を乗せる動きでは筋肉が効率よく動かない」
●体をねじり上げていく。
「体の上下のねじれは使いますが、ムリにねじると筋全体はらせんの動きをして腰への負担が大きい。筋肉は、収縮と伸長を使わないとパワーを発揮しません」
●正しい軌道にシャフトを乗せる。
「手先を使うと広背筋などが上手く動かない。手元を前額面(※2)の4時から8時くらいまでの場所で大きく回す動きをすれば、シャフトがオンプレーンになっていきます」
●フェースローテーション。
「球をとらえるのに必要ですが“手を返す”動きはミスにつながる。肩甲骨の内転・外転を正しく行うことで、ムリなくできます」
(※1)内転=体の正中面に近づける運動、外転=体の正中面から遠ざける運動 (※2)前額面=人体を前後に分けた面
古江彩佳のルーティンには
理想の動きが詰まっている
エクササイズで「型」をつくる
ここまで、難しい言葉ばかりに聞こえたかもしれないが、“体操”に落とし込めば、いつの間にか身についていくから不思議だ。
「『ゴルフスイング体操』は、武道でいう『型稽古』なんです。単純な1つの同じ動きを入門者から名人まで練習する。入門者には振り方を覚える近道ですし、名人になるほど得ることは多いんです」
ポイントは「体幹から末端へ」。体幹側が正しく動くから手先・足先も動く。
「サッカーボールを足首だけで蹴っている人はいません。すべての筋肉を筋繊維の向きに動かしたほうが体を壊しにくいし上手く動く。効率的に出力もできます。肩甲骨と仙骨と寛骨を上手く使うエクササイズで、スイングに必要な動きにつなげていきましょう。毎日でも取り組んでください。ボールを打つより、体の内側を探りながらやるほうが効率がいい。姿勢もよくなるし、腰や肩の痛みが減ったという方もいますよ」
体幹から末端へ。パワーを伝えていく
松村プロ考案、人体分割イメージ。安全な筋出力のための5つのラインと筋出力の向き。「筋出力(筋肉が発揮する力)の向きはどの競技でも原則として、体幹側から末端側へ向かいます。上肢の動きは肩甲骨、下肢の動きは寛骨、体幹の動きは仙骨が動力の源です。正しく使えるようにしましょう」
【上肢】肩甲棘〜上腕骨中央〜肘関節〜橈骨・尺骨の間・中指
【体幹】仙骨中央〜脊柱中央
【下肢】腸骨前部(腸骨稜)〜膝頭〜脛骨中央〜母趾
さっそくトライ!
ゴルフスイング体操
肩甲骨まわり
(1)イヤイヤの動き
まずは小さな動きから。両手を胸で交差させて肩甲骨を意識しながら左右に小さく水平回旋。肩甲骨をほぐし、スムーズな始動とテークバックとインパクトゾーンをイメージ
(2)肩甲骨の外転・内転
(3)腕をぐるぐる回す
骨盤まわり
(1)側方回旋
肩の高さを変えずに、骨盤を入れ替えるイメージ。仙骨を中心に片方の寛骨を上げながらもう片方の寛骨を下げる。腰痛防止にもなる
(2)前傾・後傾
寛骨より仙骨を突出させて骨盤を前傾し、次に寛骨より仙骨を凹ませて骨盤を後傾、何度か繰り返す。ほぐしながらストレッチ。いいアドレスには力に強い仙骨を突出させることが大事
(3)水平回旋
軸をキープしながら、仙骨を中心として片方の寛骨を前に出し、もう片方を後ろに動かす感じで。骨盤を前傾して行うと始動・切り返しの動作につながる
(4)ぐるぐる回す
骨盤をほぐすためによい。悪いアドレスは股関節から前傾してひざを曲げること。これは常に意識しながら骨盤周りをほぐそう
週刊ゴルフダイジェスト2022年2月22日号より