【PGAツアーHOTLINE】Vol.12 トニー・フィナウ<後編>「精神のレベルアップ」
PGAツアーアジア担当ディレクターのコーリー・ヨシムラさんが米ツアーのホットな情報をお届けする隔週連載「PGAツアーHOT LINE」。第12回のテーマはトニー・フィナウの“メンタル”について。
ARRANGE/Mika Kawano
優勝の決め手は「自分を信じること」
初優勝から5年以上勝てず、「勝てないのはツアーの七不思議」といわれていたトニー・フィナウが、先月のザ・ノーザントラストでツアー2勝目を挙げたとき、ツアー仲間たちが大喜びしました。
優勝を競い合う者同士がライバルの勝利を喜ぶ。紳士のスポーツだから当たり前? いや決してそうではなくフィナウはレアケースです。
「ロッカールームが一気に盛り上がった」というのはローリー・マキロイ。「いいヤツだから僕らも応援したくなる」と声を弾ませました。
PGAツアーのメンバーには仲良しが多く、皆から慕われているトニー・フィナウ。ライダーカップの米国代表にも選ばれ、今は順風満帆のときを迎えている
「優勝争いをするたび( 勝利に)近づいているという実感はありました。あとちょっと、あと一歩まで迫りながら優勝を逃していたのは、それだけゴルフが摩訶不思議なゲームだからです」(フィナウ)
自分のプレーしかコントロールできないのがゴルフ。だからこそ「自分を信じ続けることが重要」だと、フィナウは繰り返し力説します。それが唯一の勝利にたどり着くための方程式なのだと。
「サンデーバック9にクラッチパットを決めきれず勝利を逃してきたのは、信念が欠けていたのかもしれません。だから最近は自信が信念に変わるくらい強く自分を信じています。スポーツは結果がすべて。勝てないというレッテルを貼った人たちを納得させるためにも、勝てるということを証明しなければならなかったのです」
勝てなかった時期も「自分は勝てる」と信じていた。
「でもやはり世界のファンの前で負けるのは辛かった」と本音もチラリ。
「ただプレーオフで立て続けに負けたことでハングリー精神に火がつきました。負ければ負けるほどハングリーになる。ハングリーだからこそ次は絶対に勝つ、と自分に言い聞かせることができたのです」
飛距離はアドバンテージになってもフィナウにとって決定的な勝因ではありません。実力伯仲のトッププロたちが4日間しのぎを削って1打しか差がつかない世界。「一点の曇りもなく自分を信じなければならないのです。ゴルフはそれくらい難しい。相手を倒すことができると信じなければ勝利をつかむことはできません」
彼の信念が3勝目、4勝目に繋がるかどうか、我々もしかと見届けることにしましょう。
コーリー・ヨシムラ
PGAツアーのアジア全体のマーケティング&コミュニケーションディレクター。米ユタ州ソルトレーク出身でゴルフはHC6の腕前
週刊ゴルフダイジェスト2021年10月12日号より