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【PGAツアーHOTLINE】Vol.11 トニー・フィナウ<前編>「自分を信じ続けられる力」

ARRANGE/Mika Kawano

PGAツアーアジア担当ディレクターのコーリー・ヨシムラさんが米ツアーのホットな情報をお届けする隔週連載「PGAツアーHOTLINE」。第11回の注目選手は、先日のザ・ノーザントラストで5年ぶりの優勝を果たしたトニー・フィナウ。

シルバーコレクターの汚名返上

16年のプエルトリコオープンで初優勝を挙げてから1975日。トニー・フィナウの心は決して揺らぐことはありませんでした。PGAツアーのプレーオフシリーズ初戦、ザ・ノーザントラストでおよそ5年ぶりにツアー2勝目を挙げた彼は、記者の質問に対してまばたきもせずこう言ったのです。

「ずっと自分を信じてきました。それがすべてです」

恵まれた体格に加えて、ゴルフ以外のスポーツもこなす高い身体能力。ドライビングディスタンスは常に上位。勝つための条件をすべて満たしながら勝てなかったここ5年、フィナウは40回トップ10入り(今年だけで7回! )し、8度の2位を積み重ねてきました。そんな彼はいつしかツアー指折りのシルバーメダルコレクターと呼ばれるように。

才能がありながらなぜ勝てない? そう言われ続け、性格がやさしすぎるからでは? と解説者や専門家たちが理由づけしてきました。いくら外野の声に惑わされないようにしても次第に自信が揺らぐのが人の常。しかしフィナウはもう2度と勝てないかもしれないという雑念を振り払い、「自分を信じ続けた」のです。

フェデックスランキングは常に上位にいるが、なかなか勝てずにいたフィナウ。焦ることなく、コーチのサマーヘイズとじっと腕を磨いてきた。その努力がようやく報われた。松山英樹とも仲良し

フィナウは言います。「今日はジャスティン・トーマスに勝つ。今日はジョン・ラームに勝つ。自分ならそれが絶対できると信じて1日をスタートさせている」と。

だからプレーオフシリーズ初戦のザ・ノーザントラストで世界ランク1位のラームの楽勝ムードが漂っても、決着がこれまで1勝3敗と苦手なプレーオフにもつれ込んでも、決して諦めることなく自分を信じ続けたのです。

するとプレーオフ3戦負けなしのキャメロン・スミスがサドンデス1ホール目でティーショットをOBゾーンに打ち込む痛恨のミスで自滅。フィナウに待ちに待った2勝目が巡ってきたのです。

「5年前も今も自分のメンタルは変わっていません。勝てないことを周囲にいろいろ言われてもなにも影響を受けませんでした。自分を信じること。たとえアプローチがとんでもない方向に飛んでしまっても次のショットに自信を持って立ち向かいベストを尽くす。これからも僕はずっとそうするつもりです」

コーリー・ヨシムラ

PGAツアーのアジア全体のマーケティング&コミュニケーションディレクター。米ユタ州ソルトレーク出身でゴルフはHC6の腕前

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号より

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  • PGAツアーのプレーオフシリーズ初戦「ザ・ノーザントラスト」は、ハリケーン襲来でコースがクローズに。一昨年のZOZO選手権以来の月曜日決着と相成った。 初日から首位を走った本命J・ラームは、予期せぬ中休みに「(コロナを2度経験し)自粛期間が長いから、ホテルでいかに退屈せず過ごせるかわかっている」と余裕のコメント。多くの選手が「部屋で休む」「映画を観る」とインドア派だったなか、2打差の4位に……
  • 優勝争いを続けるトニー・フィナウがまた勝てなかった。先のジェネシス招待でマックス・ホマとのプレーオフに敗れ、3試合連続の2位。もはや彼が勝てないのは「ツアーの七不思議」の1つだ。 フィナウが初優勝にして唯一の勝利を挙げたのはいまから5年前(16年)のプエルトリコオープン。そのときもプレーオフでの決着だったが、勝ちきってトロフィを掲げた。以来ここまで2位に甘んじること8回。完全なシルバーメダ……