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【イ・ボミのスマイル日和】Vol.18『試合ができること』は決して当たり前ではない

2年連続賞金女王など輝かしい実績を残し、2023年に惜しまれつつも日本ツアーを引退したイ・ボミ。これまであまり語られてこなかった生い立ちや現役時代の秘話など、あらいざらい語り尽くす

TEXT/Kim Myung Wook PHOTO/Takanori Miki

イ・ボミ 1988年生まれ。15、16年賞金女王。日本ツアー21勝のレジェンド

>>前回のお話はこちら

プロアマに出られなくても、
できることはあると思うんです

日本ツアーを引退してからは日韓を行ったり来たりして、さまざまな仕事をするようになりました。

所属先の大会でもある国内女子ツアーの「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」では大会アンバサダーを務めています。

大会を主催する立場からの視点での仕事は、現役時代とは違う経験をたくさんさせてもらっているのですが、今でも思い出すと胸がぎゅっと締め付けられることが昨年ありました。


ゴルフファンなら記憶していると思うのですが、大会前日のプロアマ戦で8名の選手が棄権・欠場した“異常事態”が起こりました。

プロアマ戦は、スポンサーの方々と直接交流できる大切な場です。大会を支えてくださっている方々にとっても、特別な時間だと思います。

だから、ここまで欠場者が出たのはプロゴルファー人生の中でも本当に記憶にない異例の出来事でした。 体調不良などで欠場者が次々と出て、最終的には待機選手4人の上限を使い切ってしまいました。

でもそこからさらに数人が抜け、運営の方々は練習場にいる選手にまで声をかけて、必死に走り回っている状態でした。

実際に試合を欠場した選手もいれば、大事をとってプロアマを休み、翌日の試合に備えた選手もいます。『試合でいいプレーをしたい』と思ってコンディションを優先する気持ちは、すごくよくわかります。

現役時代は私も体調管理にはすごく気を使いましたから。でも、今の私は”アンバサダー”という立場で、少し違う角度からその光景を見てしまったんですね。

そうしたときに、正直、すごく大きな衝撃と戸惑いを感じたんです。その中でも、一番心に残っているのは、主催者である延田グループの社長の姿でした。会場に到着するなり、関係者の方々に対して何度も深く頭を下げて謝罪していました。

その姿を見たとき、言葉が出ませんでした。1人のプロゴルファーとして、申し訳なさと情けなさで胸がいっぱいになってしまって……。「どうして社長が謝らなければならないんだろう……」と、胸が締め付けられる思いでした。

大会運営側が選手を代表する形で頭を下げる。今までそんな姿を見たことがなかったので、その背中を見て、私たちがどれだけ多くの人に支えられているのかを、改めて強く感じました。プロの試合は、”当たり前”に開催されているように見えるかもしれません。でも、それは決して当たり前じゃないんですよね。

大会を支えてくださるスポンサーの方々がいて、プロアマに参加してくださる関係者の方がいて、初めて私たちはその舞台に立つことができています。もし、その土台への感謝の気持ちを忘れてしまったら、ゴルフというスポーツの価値は少しずつ下がってしまう。

試合の数だって減ってしまうかもしれません。仮に体調不良でボールがちゃんと打てない状態だったとしても、できることはほかにもあると思うんです。その場でレッスンをしたり、一緒にコースを歩きながらお話をしたりするだけでも、参加してくださった方にとっては「来てよかった」と思える時間になるはずです。

そういうホスピタリティも、プロとしてすごく大事なことだと思います。今回の騒動では、櫻井心那ちゃんが、手首を痛めているにもかかわらず主催者側の組から別の組へと何度も穴埋めに回ってくれていました。

1人の選手にそこまで負担をかけてしまう運営のあり方については、見直すべき部分もあると思います。 それと同時に、選手自身も「支えられている存在」という意識を強く持たないといけないんじゃないかなと感じています。

自分の成績だけを追いかけるのではなくて、大会を作る方々へのリスペクトをちゃんと形にしていくこと。その積み重ねがあってこそ、ツアーは続いていくもの。 だからこそ、今の若い選手たちにも、その大切さを忘れないでいてほしいなと、私は心からそう願っています。

「飛距離アップ術を伝授しました!」

「イベントで飛距離アップのコツを聞かれたので『今食べたいものを10回言ってから打つ!』と伝えました。コレ、本当に飛ぶんですよ」

月刊ゴルフダイジェスト2026年6月号より