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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.897「練習を重ねた人間でなければ我慢のプレーはできません」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


トーナメント中継で「我慢のゴルフ」「ここが耐えどころ」というフレーズを聞きますが、どのようなプレーが我慢や耐えることなのでしょうか。個人的には18ホールずうっと我慢しているつもりなのに、いいスコアで上がれません。(匿名希望・44歳・HC17)


「勝負の行方を決める大事な局面、ここが我慢のしどころです」というフレーズはゴルフに限らず、スポーツ中継ではよく耳にする表現のひとつです。

昨年のMLBワールドシリーズの第7戦、4対4の同点で一打出ればサヨナラの場面でドジャースにとって絶体絶命の局面で登板していた山本由伸投手の状況はまさに「我慢のしどころ」だったでしょう。

スポーツには、勝敗の分かれ目やチームの勢いが明らかに入れ替わる瞬間が感じ取れることがあります。どんなスポーツや勝負事にも、潮目に似たゲームの流れがあると思います。

「我慢」「耐えどころ」といった表現は、そのゲームの流れが向きや勢いを変化させる局面を示す合言葉のようなものではないでしょうか。

流れは対戦を客観的に見ている側には感じ取れても、プレーヤー当人には分からないことが多くあります。

試合経験を積み重ねるに従って流れというものが分かり、それが試合勘や勝負どころと呼ばれることもあります。ここで改めて我慢という言葉に向き合ってみました。


調べてみたら仏教ではおごり高ぶる煩悩を七慢と呼び、そのひとつに我慢が含まれていたのだそうです。

その後、時代を重ね人に弱みを見せないで耐え忍ぶ姿として見られるようになり、今でいう我慢の意味で使われるようになったみたいです。

優勝争いのトップに立っているプレーヤーが、最終日のバックナインに入って3パットのボギーを叩き、次のティーショットも曲げて林の中へ入りピンチに。このままズルズルいってしまうのか……。

放送席ではこんな時こそ「ここが我慢のしどころ」というフレーズの出番ですね(笑)。

ここでプレーヤーが考えないといけない点は「次の一打について攻め方を一つに絞る」とか「中途半端なスウィングをしない」ことくらいでしょうか。

アドバイスするとしたらこの2点のみ。ピンチだからといって、普段とは違う特別なことをしようとしてもそれは無理です。

ピンチだからこそ自分にできる最善の方法に集中して最善を尽くす──それが「我慢のゴルフ」です。

18ホール我慢すればいいスコアで上がれるのでは? という質問ですが、それは我慢は美徳だと思い込んでいるのだと思います。

我慢さえすればスコアが良くなるとは言えません。ちなみにわたしはプレー中に我慢はしませんよ。

正直できないですし、もし我慢したとしても現実は変えられないですから、ミスが出てもすぐに切り替えて「ま、いっか」で次のプレーやホールに進む。

この気持ちを新たに切り替えることが肝心なのです。

失敗を我慢ですべてカバーするのは、失敗と向き合わないでなかったことにするだけじゃないかしら。

今より少しでも向上したいのならば、やるべきことは我慢ではなくて、課題の究明、それを克服するための練習です。

試合でスコアを伸ばせなかった選手がホールアウト後のインタビューで「今日は我慢の一日でした」と語るのは苦しいラウンドを耐え忍んだ自分を褒め、気持ちを明日へ向ける合言葉だと思ってください。

大切なのは、我慢しないといけないときに我慢できるだけの技術を身に付ける“練習”なのですよ。

「気持ちはもちろん大切ですが、技術があるからこそ踏ん張ることができるのです」

週刊ゴルフダイジェスト2026年2月24日号より