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【クラブ・オブ・ザ・イヤー受賞クラブ物語】<アイアン部門&特別賞>タイトリスト「Tシリーズ」&テーラーメイド「スパイダーシリーズ」

多くのゴルファーに愛され、ゴルフの楽しみを提供した話題のクラブに贈られる「ゴルフダイジェストアワード」の「クラブ・オブ・ザ・イヤー」。2025年のアイアン・オブ・ザ・イヤーはタイトリストの「Tシリーズ」、特別賞はテーラーメイド「スパイダーシリーズ」が受賞した。それぞれの受賞クラブが生まれた背景に迫った。

アクシネット ジャパン インク
タイトリスト ゴルフクラブマーケティング
シニアマネージャー
根津博嗣さん

プロ・上級者向けのモデルではない

PGAツアーで11シーズン連続して使用率ナンバー1の座をキープしているタイトリストのアイアン。

「タイトリストには“ピラミッド・オブ・インフルエンス”という開発思想があり、すべてのタイトリスト製品における開発の基本となっています。『最高の製品』とは、第一に最高レベルのゴルファーによって評価され、使用される製品でなければなりません。そして、最高レベルのゴルファーが信頼をおく製品は、ゴルフの上達を目指すすべての“熱意あるゴルファー”にとっても『最高の製品』に違いなく、ピラミッドの頂点である最高レベルのゴルファーから下に広がっていくと考えています」とはタイトリストの日本支社であるアクシネットジャパンインクの根津博嗣氏。

「ただ、決してプロや上級者向けというわけではなく、すべてのゴルファーのスコアアップに貢献するように作られています。アイアンの開発ベースにあるのが『3D』と呼ばれるもので、『Distance Control(飛距離の精度)』、『Dispersion Control(バラつきの抑制)』、『Descent Angle(落下角度)』の3つの頭文字に由来します。

『飛距離の精度』というのは番手間の飛距離のギャップを均等にすること。『バラつきの抑制』はミスショットしても飛距離と方向性をできるだけ落とさない寛容性の高さ。『落下角度』はボールが最高到達点からグリーンに向かって落ちてくる角度のことで、これが適正であればボールを止められます。つまり、グリーンを狙っていくアイアンは、単に飛べばいいのではなく、横方向だけでなく縦距離のバラつきも抑え、ピンにできるだけ近くボールを止められる性能が求められます。それを実現するのが『3D』なんです」

T100

精密なパフォーマンスと研ぎ澄まされた打感を高次元で融合。薄めのトップライン、最小限のオフセット、進化したバリアブルバウンスソールを採用し、精密なコントロール性能とインパクト時のソフトな打感を実現

T150

T100よりやや大きめのヘッドサイズで設計されたフォージドアイアン。進化したバリアブルバウンスソールが安定感と安心感をプラスし、プレーヤーズアイアンらしいソフトな打感と抜けの良さをしっかりとキ―プ

T250

高強度スチールをフェースとボディに一体成形し、圧倒的な初速、抜群の安定性、一貫した性能を兼ね備え、卓越したパフォーマンス技術を洗練されたモダンなデザインの中に巧みに内包している

T350

鍛造Lフェースと中空構造、そして先進テクノロジーの融合により、洗練されたヘッド形状に再設計。安心感のあるルックスの中に最大限のパフォーマンスを備え驚くほどの飛距離と心地いい打感を両立

番手間のギャップを埋める“ブレンド”セット

「『T』シリーズアイアンには『T100』、『T150』『T250』、『T350』、そして軽量でロフトの大きい『T250ロンチスペック』の5モデルあり、カスタムシャフトはレディス、ジュニアまでカバーしています。これはアイアンに求める“やさしさ”はプレーヤーによって異なるからです。それでも、特にロングアイアンでは番手間の飛距離のギャップが出にくくなることもあります。そんなときは『ブレンドセット』と呼んでいる、違うモデルを組み合わせることが有効です。多くのプロも実践していますが、例えば『T100』アイアンのロングアイアンを『T150』や『T250』にするんです。我々は見た目も性能のひとつだと考えているため、異なるモデルを組み合わせても違和感がないシェイプになっています」

女子プロの使用者が急増中

「先ほども申し上げましたが、『T』シリーズアイアンはプロや上級者向けのモデルではありません。すべてのゴルファーのスコアアップに貢献できるクラブです。それを裏付けるように、今シーズン、国内女子ツアーで使用者が増えました。『タイトリストは難しい』と思わずに、まずは打ってみてほしいですね。見た目からは想像できないやさしさを感じられるはずです。『ベストスコアに貢献していく』、それがタイトリストの製品なんです」 

稲見萌寧と神谷そらは「T150」、岡山絵里と野澤真央は「T150」と「T350」のブレンドセットを使用し、すでに多くのプロがスイッチしている「Tシリーズ」。2026シーズンもツアーを席巻するだろう。

テーラーメイド ゴルフ
ハードグッズプロダクト デビュティーマネージャー
田中桂氏

見た目よりも機能を重視したパター

「『スパイダー』の登場まで、パターは“感性のクラブ”と言われていて、選手が気にしていたのは何よりも“顔”や“打感”。ところが『スパイダー』は再現性や寛容性といったパフォーマンスを重視して、見た目よりも機能を取ったんです」とはテーラーメイドのハードグッズプロダクトでパターを担当する田中桂氏。

「その後、プロから『同じ形状、同じ性能で、もうひと回り小さくできないか』という要望を受けて誕生したのが『スパイダー・イッツィー・ビッツィー』。オリジナルより約15%小型化されたヘッドサイズは、最新モデルにも継承されています」

2011年のマスターズではジェイソン・デイが同年発売の「R11」ドライバーと同じ白い「スパイダー ゴースト」を使い2位になり話題となる。デイは2015年の全米プロでメジャー初制覇を果たした際は黒いプロトタイプを使用し、世界ランク1位になった2016年には赤い「ゴーストスパイダー リミテッドレッド」を使用。これが翌年に市販された「スパイダー ツアー レッド スモールスラント」の原型となった。

「赤は芝の緑色の補色なので、強いコントラストを生み、構えやすさと残像効果を高めるため、今でも使っている選手もいます。赤のカラーリングだけでなく、デイが『スパイダー』に取り入れたものがあります。それはネック。当時の『スパイダー』にはシングルベンドかダブルベンドしかなかったのですが、彼はそれを切って小さなネックを溶接。これが現在、マキロイが愛用しているスモールスラントの原型になりました。

『スパイダー』のようなヘッドの大きなネオマレットは通常、真っすぐストロークしやすいようにベントネックでフェースバランスにしています。ところがデイは開閉を使うストロークなのでネオマレットの『スパイダー』にもブレードのような操作感を加えたんです。そこからスパイダーは多様なネック形状を展開し、最新モデルではマキロイらのスモールスラント、シェフラーが使うクランクネック、そしてダブルベンドの3モデルを展開し、ストロークによって最適なものが選べるんです」

スパイダーに必要な3つの要素

「初代から最新モデルまで『スパイダー』には一貫して守り続けている3つの要素があります。1つは“パフォーマンス”で、ブレにくさやミスヒットへの寛容性。2つ目は“ロール”、つまり転がりの良さ。3つ目は“エイム”、すなわち構えたときのアライメントの取りやすさです。“パフォーマンス”はヘッド外周に重量を配置し、クモが足を広げたような独特のシルエットで慣性モーメントを大きくし、ヘッドのブレを抑えます。素材や構造は進化していますが、この特徴的な形は不変です。

“ロール”は2011年から搭載されている『ピュアロール』インサートがインパクト直後のバックスピンを抑えて素早く順回転へ導きます。これはフェース面に向かって45度下向きに傾斜したグルーブ(溝)が特徴で、設計上は毎分25〜50回転の順回転を発生させます。“エイム”においても、一本線、T字、ボール幅の『トゥルーパスアライメント』など、多彩なアライメントを開発し、視覚的な構えやすさを追求してきました」

「『スパイダー ツアーX』はネック形状で選びます。『スパイダー ZT』はどんなストロークにも合うのでアマチュアに最適です」(田中氏)

“第4世代”はゼロトルク

「ジェイソン・デイやダスティン・ジョンソンが愛用した『スパイダー ツアー』を第2世代とするならば、2019年の『スパイダーX』は第3世代と言えるでしょう。このモデルから構造が変わり、アルミのボディ+ステンレスの外周部という組み合わせから、ステンレスの一体構造になり、内部に空洞を設けカーボンでふたをしています。これは最新の『スパイダー ツアーX』にも受け継がれています。

そして今年、新たに第4世代とでも言うべきいわゆる“ゼロトルク”パターの『スパイダーZT』が登場しました。形は従来の『スパイダー』とは異なりますが、“3つの要素”を備えつつ、シャフトがヘッドの重心位置に挿さっていることで、ストローク中にヘッドを回転させる力、“トルク” が発生しにくくなります。

つまり、真っすぐなストロークでも、開閉を使うストロークでも、軌道に対してフェース面が常に直角になるオールマイティなパターなんです。 どの『スパイダー』を選べばいいのかわからない人は、今秋に東京・八重洲にオープンした『TaylorMade FittingLab Tokyo』でパターフィッティングを行っていますので、どのスパイダー、どのネックタイプが自分に合うのか、ぜひ予約して体験してみてください」(田中氏)

週刊ゴルフダイジェスト2025年12月30日号より