【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.842「来季もきっと日本女子ツアーに新たなスター選手が登場してくると思っています」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
今年の女子ツアーは、竹田麗央選手の大活躍で終わりましたが、来シーズンは彼女のほかにも有力選手が海外参戦する予定みたいですが、国内ツアーがどうなるか心配です。岡本さんはどのようにお感じになっていますか。(竹中俊介さん・46歳・HC12)
海外へ選手が行ってしまうことで来年の日本女子ツアー人気が減退するのでは? ということですが、結論から言いますと、わたしは心配をしていません。
このようなことは、毎年同じようなことが言われていると思います。去年は、国内のシーズンが終了したのち12月にUSLPGAのファイナルQTを突破した西郷真央、吉田優利の両選手に加え、TOTOジャパンに優勝してツアー出場権を取得した稲見萌寧選手が米ツアーに臨むことになりました。
2017年からのメンバーである畑岡奈紗選手をはじめ、笹生優花、渋野日向子、古江彩佳、勝みなみ、西村優菜の6選手を合わせて9人の日本人プロが常時海外でプレーすることになりました。
そして今シーズンの米女子ツアーは、どう展開したでしょうか。リディア・コー選手が不調から復活優勝して、ネリー・コルダ選手が5試合連続でツアー優勝して圧倒的な強さを見せつけていました。
日本勢は、シェブロン選手権では10人中9人が予選通過して、5月の全米女子オープンでは21人の日本人選手が出場し笹生優花選手が優勝。
2位に渋野選手、6位に古江選手、9位タイには竹田麗央、小祝さくらの2選手が入り、日本人選手が一大勢力になったことを世界に強く印象付けました。
その後も全米女子プロで山下美夢有選手が2位タイ、7月のエビアン選手権では古江選手が優勝を飾りました。日本人選手はもはやメジャートーナメントになくてはならないものになったようです。
国内ではプロ3年目の竹田麗央選手が、日本女子プロ選手権と日本女子オープンの公式戦2連勝を果たし、TOTOジャパンで8勝目を挙げて来季からの米ツアー参戦権と年間女王も獲得しました。
最後にセントアンドリュースで開催されたAIG全英女子オープンで史上最多19人の日本人選手が出場したことも特筆すべき点かもしれません。
総合力と経験を求められる厳しいコース条件もあり10人は予選落ちしましたが、岩井明愛選手と米ツアーに参戦する西郷真央選手が7位タイに入りました。
「あの優勝争いに加わりたかったですね」
と、さっぱりとした表情で話していた岩井明愛選手のホールアウト後の言葉が良かったことを記憶しています。わたしはあの言葉から「やるだけはやった」という達成感と「それでも足りなかった」という悔しさ、それに今にわたしもという気持ちが感じられたからです。
彼女のプレーを見ていると、ラフからのショットやアプローチでのヘッドの抜き方など技術の引き出しが増えていることがうかがわれました。
彼女も今週の5日から始まるファイナルQTに挑戦すると聞いていますが、これを「優秀なプレーヤーの国外流失」と見るべきなのでしょうか?
そうではありません。
去年もトッププレーヤーが米ツアーへ行きましたが、国内のツアーは開幕から最終戦までとても面白く、熱く盛り上がっていましたよね?
いまは、それを可能にするだけの選手層の厚さがあり、ゴルフ界の裾野は広がっているのだと思います。
選手がいなくなって寂しくなる気持ちはわからないでもありません。
しかし、応援するプレーヤーたちの海外での活躍を見守り、日本から応援する楽しみに変えましょう。
むしろ、日本を巣立っていく将来性ある若いプレーヤーの背中を押してあげるべきではないかと私は思います。
竹田選手は今年年間8勝しましたが、初優勝や初めてシード権を獲得した選手も多くいました。
それだけ日本女子ツアーは、実力伯仲しているとも言えるわけです。
来季もきっと、ここ4シーズンの女王である稲見、山下(2連覇)、竹田選手に代わるスター選手が登場してくることを大きく期待していますし、きっと新たな選手も出てくると思います。
みなさんもそう考えていると新シーズンが楽しみになり、待ち遠しくなってくると思いますよ。
「肉体も社会も新陳代謝が良いと活性化されますよね(笑)」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2024年12月17日号より