【陳さんとまわろう!】Vol.255 サム・スニードは、本当に美しいスウィングでしたよ
約60年前、サム・スニードとプレーしたことがある、という陳さん。生で見た”ナチュラルスウィング”について語る
TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ
私より30~40ヤードは
飛ばしていた(笑)
――サム・スニードの話が前回出てきました。その日の試合が終わってホテルに帰ったら、体を休ませるためにベッドで寝る、ということでしたね。
陳さん そう。1日試合をしてくると疲れるからね。体も疲れるし、頭もね。だから夜のご飯を食べる前にとりあえずベッドに横たわって、少しでも疲れを取り除いてやることが大事なんだねえ。疲れが残っていると次の日の試合に必ず影響するんだ。ベッドで休む時間がないときは、食べることですよ。しっかり食べる。そしていつまでもお酒なんか飲んだりしないで、早く寝る(笑)。
――陳さんはスニードとプレーしたことありましたよね。
陳さん はい。スニードはカナダカップ東京大会(1957年)で初来日して、そのあと何回か日本に来ているんですよ。一緒に回ったのは61年かな。千葉の紫(CC)すみれコースで開場記念模範競技という催し物があって、それにスニードと一緒に私が呼ばれたんだ。あと中村寅(吉)さんと石井茂さん。この4人でプレーして、集まったたくさんのギャラリーに技術を披露したというかな。そのときに早く寝る話を聞いたと思うんだね。
――スニードと一緒に回って、どうでしたか。ナチュラルスウィングといわれる流れるような体の使い方に定評がありましたが。
陳さん スニードのスウィングは東京大会の前の年のウェントワース大会で見ていたからね。生で見るのはこのときが初めてでしたけど、スニードという強いアメリカの選手がいるということは彼のレッスン書を読んでいましたから、知っていましたよ。台湾ではスニードのレッスン書が有名だったのよ。私も強いプロゴルファーになろうと上を目指していましたから、手に入れて読んだわけね。でもぜんぶ英文だよ。チンプンカンプンだよ。ただイラストが出ていたし、トップオブスウィングとかわかりやすいゴルフ用語が出ていましたから、まったく理解できなかったわけではありませんでしたけどね。
――本を読んで、生のスウィングを見て、ついに一緒にプレーして。一歩一歩本人に近づいていったわけですね。
陳さん アハハ……。もうね、ドライバーは私より30ヤードから40ヤード違っていたからね。飛ばしてましたよ。だって、スニードは180センチで80キロはあったはず。私はそれより一回りも小型だったからね(笑)。でも美しいスウィングでした。どこにも力が入っていないの。ベン・ホーガンがリストのスナップを使ってボールをビシッと叩くのに対して、スニードにはそういう動きはないんだ。あくまでゆっくりしたスウィングでクラブを振っていくわけよ。それでいてボールが飛ぶんですからスウィングアークが大きいんだ。
――ウェントワースでアメリカ代表のホーガンとスニードが練習場でボールを打っているのを見て、陳さんはホーガンのほうがスニードより技術が上だと判断。以来、ホーガンの影響を強く受けてきました。
陳さん はい。ホーガンを知ったのも見たのもこのときが初めてでさ。練習場で何をみんな騒いでいるんだと見に行ったら、2人がボールを打っているわけね。見比べていたらスニードの球がブレるのに対して、ホーガンの球は狙ったところへ落ちるんだ。ほう、と思ってさ。また、打球の高さが一定しているのにも技術の高さを感じたものだから、私の関心はスニードよりホーガンになったわけね(笑)。
陳清波
ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた
月刊ゴルフダイジェスト2024年12月号より