【クラブ駆け込み寺】Vol.12「アイアンで止めたいなら“長尺化”がオススメ」
“頑固オヤジ”が勇退し、あとを継いだのが練習場で小さな工房を営む通称“アニキ”。今回は「“飛ばす”より“止める”アイアンを探していますが、しっくりきません」という相談が寄せられた。
ILLUST/Kochi Hajime
Q. グリーンで止められるアイアンが見つからない
アイアンの新モデルを試打しても、どうもピンときません。165ヤード前後をキャリーで運べて、止められるアイアンが欲しいのに見つかりません。どうすればいいですか?
止めるためのロフト角が足りていない
9月なのに、まだ暑いですね。雨が多かったせいか、コースの芝の状態は悪くなさそうですが。せめて10月には、ベストコンディションになってほしいですね。
「秋の新モデルを打ち比べたんですが、どれもイマイチで。確かにショートアイアンは飛ぶんですけど、7番とかがしっくりこないんです。打球が強すぎる感じで」
競技志向の常連さんで、55歳になったばかりなんですが、シニア競技に向けてもう少しラクに運べるアイアンが欲しくなったんだとか。
「アイアンは飛んでも止まらないと意味がない。どうも、止めやすい7番が最近のクラブだと、プロモデルしかないんですよね」
「そうですね。コントロールショットも含めて、アイアンをやさしくするのは十分なロフト角の確保です。今どきの新モデルは、アスリート向けでも“ちょい飛び系”とか、ストロングロフト化が進んでいますけどキャリーで運ぶ、ランを止めるという点では難しくなっているだけです。以前師匠の“頑固オヤジ”さんと議論したんですが、3番アイアンを短くしたらやさしくなるのか、と。実際試したら、ヘッドスピードが足らなくなり、ライナーのゴロしか打てなくなって。極端なストロングロフトのアイアンも、それと同じなんです」
今どきは7番でロフト角30度前後が主流ですが、ひと昔前は5番相当のロフト角です。つまり、1インチ短くした5番だから、上がらないし飛ばなくなるのが当然です。
「それでも低重心化とか反発性能などで高弾道化を意図していますが、コントロールショットなどはガクッとパフォーマンスが落ちることがあります。ロフト角が少ないほど、高さもスピン量も激減してしまうので」
「じゃあ、どうするのが正解なの?」
止まる秘訣はシャフトの長さ
台風の影響で36ホールに短縮されたフジサンケイクラシックで、51歳の片山晋呉プロが16位タイに入っていましたが、7番アイアンを抜いて7番ユーティリティを入れていました。理由は、硬く締まったツアーのグリーンでもやさしく“止められる”からだそうです。
調べてみると、モデルはキャロウェイ『パラダイムAiスモークHL』の7番。ロフト角を可変ホーゼルで31.5度に調整していたとか。7番アイアンの数値とほぼ同じですが、レングスが4番アイアン相当の38.25インチあります。ヘッドスピードを乗せやすく、重心深度も深いヘッドなので、ラクに高さとスピン量を確保できるわけです。
この事例からもわかるように、グリーンを狙うクラブのやさしさは“止めやすさ”であり、それには“長尺化”が最も有効なポイントというわけです。
「私は基本的にユーティリティが好きじゃなくて、165ヤード前後まではアイアンで打ちたいんですが、その場合はアイアンを長尺化すればいい、ということですか?」
「そうです。ロフト角の大きめのモデルを選び、1〜1.5インチ伸ばせばいいんです」
「でも、振りづらくなったり、扱いにくくはなりませんか?」
「ウッド類やユーティリティより短いレングスで、ミート率が下がるはずがありません。長くなったぶん、加減してもヘッドスピードを確保しやすくなるだけです。ただ、バランス的にヘッドを少し削って重量を軽くする必要があるかもしれません。シャフトの軽量化よりも効果的です」
「新品のヘッドを削るのは、少し抵抗がありますね……」
「番手は6、7番だけでもいいですし、物置にしまい込んである中古の再利用でOKです。ストロングロフトでなければ、むしろオススメ。ただ、フェースの溝規制をクリアしていないと競技では使えないので注意してください」
月刊ゴルフダイジェスト2024年11月号より