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松坂大輔 vs 上重聡「終わらない夏」<前編>延長17回の激闘から26年、2人の舞台は競技ゴルフへ

PL学園出身の上重聡と横浜高校出身の松坂大輔。甲子園でのあの激闘からもう26年。しかし2人の夏は「まだまだ終わっていません」と上重。野球からゴルフへと舞台を変えて、現在は競技ゴルファーとしてライバルであり続ける2人の姿を大阪に追った。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/大阪オープン

夏の甲子園がまだ始まる前の7月末、上重と松坂は太子カントリークラブ(大阪府)にいた。河内郡太子町にあるコースで、富田林市のPL学園からほど近い。「負けるつもりはありません」と上重、「暑さ? これくらいじゃあ全然」と松坂。元高校球児の気力と体力はケタ違いだ、特に夏は。

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横浜高校とPL学園高校の随一の名勝負といえば98年8月20日に行われた夏の甲子園、準々決勝。9回を終えて5対5のまま延長に突入、当時はまだタイブレークのシステムはなかった。11回表に横浜高校がエラー絡みで1点を奪ったが、裏にPLはヒット2本で1点。16回表、横浜は内野安打などで1アウト満塁。1点も許せないPLは思い切った前進守備。

スクイズがありそうな場面だったが投手・上重はキャッチャーに「スクイズを察知したら目で合図をするから」と言って勝負。バウンドの高い内野ゴロで1点入り、横浜が延長で2回目の勝ち越し。「終わった」と誰もが思った裏の攻撃でPLはヒットとエラーで1アウト3塁。

すると内野ゴロの間に1点が入り同点。流れが横浜とPLを行ったり来たりした。結果はご存じの方が多いだろう。延長17回の表に横浜が2ランホームランで2点。PLはマウンドに仁王立ちする松坂の前に惜敗。松坂のその日の投球数は250だった。

負けたPLの選手のなかには号泣する者もいたが、上重は「自分がやってきたことを全部出せた」と泣かなかった。「試合で負けたことに泣いている人はいなかった。多分自分のプレーに悔いが残ったのでは」と当時の上重は語っている。

2人の戦いの舞台はフェアウェイへ

大阪オープンはプロやアマチュア、男・女とも同じ舞台で戦う試合。松坂が上重のひとつ前の組でスタートすると、いきなりキャディが「フォアー」と叫ぶ。344ヤードのパー4、松坂は周囲の期待に応えドライバーを持ったのだが、慣れない白ティーからの景色に惑わされてOBを叩きボギー発進。

すると、次の組で上重はアイアンでティーショット。うまく刻んだ。グリーンとティーイングエリアで接近すると、松坂が何やら両手でポーズを作り、上重にアピールした。ちょっとした仕草で周囲の人は気付かないのだが、上重は「あれは『俺がドライバーで攻めたのに、なんでアイアン? もっと攻めろよ』という意味ですね」と説明する。二人は会話をしなくても何でも伝わる仲なのだ。

26年前、「スクイズを察知したら目で合図をするから」とキャッチャーに言ってポカンとされた上重だが、実際のところ、PLの元エースと横浜の元エースは目と目で会話ができるらしい。

上重は大阪オープンが競技ゴルフ初出場。松坂はABEMAツアーなどに参戦経験のある先輩ゴルファーだ

今春からフリーアナに
「ゴルフの仕事も楽しみです」

大阪オープンは、松坂が38・33の71、上重は47・43の90で松坂に軍配。しかし、試合後の表彰式で上重が“飛び入り”で舞台に上がると、今度は上重がその場を制した。

アドリブを交えながらの司会進行は、さすがアナウンサー歴20年余りのプロの仕事。「今日は(松坂に)19打差つけられちゃいました」と話すと参加者が沸く。26年前に甲子園で日本中の視線を釘付けにした2人が、2024年の夏、またみんなの視線を独占している。

クラブを握る姿とマイクを握る姿。どちらもフリーアナ上重聡の顔だ。「競技のヒリヒリ感は嫌いじゃないです」とは、さすが元高校球児。ベストスコアは昨年出した71

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週刊ゴルフダイジェスト2024年9月24日号より