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【ゴルフイップス解体新書】#3 <トラウマ型>“恐怖心”が体の動きを委縮させる!

忌まわしい「イップス」の原因と対処法について、メンタルコーチの石井亘氏が徹底解説する「ゴルフイップス解体新書」。今回は、イップスの原因として最も一般的だという「トラウマ型」について詳しく聞いていく。

前回のお話はこちら

GD 「トラウマ型」「自己暗示型」「神経不全型」。この3つの中で、イップスの原因として最も多いのが「トラウマ型」というお話でした。

石井 はい。ではまず「トラウマ」という現象について考えていきましょう。

GD 前回お話しした私の「4連続シャンク」事件。月例競技中、パー3のティーイングエリアで、後ろの組も見ている中での4連続シャンクは思い出すだけでも汗が噴き出てきます。これはトラウマでしょうか?

石井 まさにトラウマですね。トラウマとは、簡単に言うと「恐怖記憶」のこと。たとえば過去に犬に追いかけられて噛まれた経験があると、それが恐怖記憶として脳の奥にある「扁桃体(へんとうたい)」という部位に刻まれます。

GD 扁桃体……どこかで聞いたような。

石井 『とんぼ』ではないですか?

GD あ! そうです。漫画『オーイ! とんぼ』のイガイガ編に出てきたタイの選手が、扁桃体に異常があって恐怖を感じない、という設定でした。

超攻撃的なゴルフが持ち味の「ヒート」は、偏桃体の異常により恐怖を感じないという設定だった(『オーイ! とんぼ』第432話より)

石井 扁桃体が過去の恐怖刺激を感知すると、条件反射的に体がストレス反応=トラウマ反応を起こしてしまうようになります。一種の条件反射ですが、専門的には「恐怖条件付け」といいます。

GD 熱いモノに触れると無意識で手を引っ込めてしまうアレですね。

石井 そう。無意識かつ瞬間的に起こるので、自分では反応を制御することができません。

GD ゴルフでも同じことが起こると?

石井 はい、沢山。池越えのショットは得意ですか?

GD いえ、よくダフって池に落としたり、引っかけてグリーン左奥に外してしまったり……。

石井 実はそれもトラウマ反応のせいかもしれません。過去に池に落として大叩きした苦い記憶が扁桃体に刻まれていることで、打つ瞬間、無意識のうちに筋肉の一部が硬直し、体が止まってミスを誘発するというわけです。

GD 練習場では難なく打てる100Yのショットが、目の前に池があるという「条件」によって、反射的にストレス反応を起こしてしまう、と?

石井 はい。左サイドがOBのホールでよく引っかける、バンカー越えのアプローチでいつもザックリする、など一定の条件下でミスが重なると、それが「苦手意識」を生む。これも、トラウマの弱い形です。

GD そう考えると私のゴルフはトラウマだらけな気も……。

石井 GDさんだけでありません。ゴルフを続けていく中で、技術的には絶対に上手くなっているはずなのに、スコアや成績が伸びないのは、こういった恐怖心を、経験を重ねるにつれて増やしてしまうからです。

GD ホームコースで左がOBの難しいホールがあって、初めて回る人は難なくクリアしていくのですが、何度も回っているメンバーたちは、よく引っかけてしまいます。これも経験が邪魔をしていると言えそうですね。

石井 恐怖心が大きくなると、筋肉はさらに萎縮しやすくなるので、イップスの症状はどんどん深刻化していきます。

GD トラウマ型イップス……恐るべし!

石井 トラウマ型イップス克服のヒントは、苦手意識や恐怖心を抱えながらも、スコアや成績を伸ばしているゴルファーを観察するとわかりますが、長くなりますので、また別の機会に。次回は、イップスの原因の2番目「自己暗示型」について説明していきます。

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石井 亘

いしい・わたる。ゴルフ好きのメンタルコーチ。「本来の力を発揮させる!」を信条に、20年にわたり、プロやテスト受験生、アスリート、音楽家、医師、経営者、中高生など1000人近くを指導。「メンタルトレーニング石井塾」主宰