ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、前回に引き続き元プロ野球選手の坂口智隆氏。

現役時代のバッティングもそうやったけど、僕はどちらかというと理論にこだわるタイプ。だから、現役を引退した今は何とか一日も早くうまくなりたいと、ひたすらゴルフにこだわっています。そもそも棒を振って球を打つということ自体は野球もゴルフも一緒なんです。

でも、ゴルフは上半身と下半身の動きに“時差”があって、下半身が先に動かなくちゃいけないのに対して、野球では腰を先に回転させて打ったら絶対にダメ。腰を回そうと思うと野球選手はボールにぐーっと寄っていくので振り遅れてしまう。その違いがありますね。

ただ、理論としてはわかるけど、止まったボールを打つことはなかったので何かが違うのかうまく当たらん。その使い方の違いに体がついていかない感じなんですよ。まだ現役をやめて間がないこともあって、若い選手から頼まれて自主トレを手伝ったりすることもあるんですけど、その時、バットを振ってアドバイスしたりして帰ってくるやないですか。それでゴルフの練習に行くと全くダメで、とんでもないスライスばかり出てしまう。「そもそもゴルフって曲がるもんだ。だったら曲がる方向を一定にできれば大崩れはしない」と考えても、曲がる角度や方向が一定しないんですよ。だから、100を行ったり来たりで伸び悩んでいるという状態ですね。でも、何が違うんですかね、バットとクラブって。もう悩みまくりです。

それと僕が嫌いなのはパター。まず自分がパットしている姿が好きじゃないんですよ。僕みたいに身長があるとパットの時は、どうしても背中をかがめて構えるけど、そのシルエットが好きじゃなくて、影が映るとめっちゃダサいなあって思ってしまう（笑）。ドライバーやアイアンは、背筋が伸びて影がすっと立っているからそういうクラブが好き。打てる打てないは別にしてシルエットは大事ですから。

それにしてもゴルフって不思議なスポーツですよね。野球をやっていた頃は何万人が見ている前でバッターボックスに入ってもそんなに緊張なんてしたことなかったのに、ゴルフは、数人に見られるだけで何であんなに緊張するんですかね?　特に朝の第1打なんてガチガチですよ。それに僕は同伴者が「シーン」としてしまうとかえって打ちづらい。少しくらいしゃべってもらっていたほうがいいですね。

さて、前回お話ししたように、僕の目標はベストスコア92を何とかして85にすることです。そのためにはドライバーのOBを減らすこと、それに尽きます。今ちゃんと当たって真っすぐ飛べば200Y後半から300Yぐらいは出ます。ドライバーでフェアウェイにボールを置ければ、仮に3パットしても楽に80台が出るはずなんですよ（※この取材の後、84をマーク）。

いずれにしても、うまくなりたいですねえ。70台とかは出なくてもいいから安定して80台前半で回れるようになりたい。でも、現実的には今ぐらいのスコアで今日は100が切れたとか、今日はダメだったとかいってワイワイやっているのが一番楽しいのかもしれませんけどね。

坂口 智隆

1984年神戸市生まれ。神戸国際大附高時代に投手として甲子園出場。2002年、ドラフト１位で近鉄に入団。その後、オリックス、ヤクルトで主力として活躍。プロ通算1526安打。22年に現役を引退し、現在は野球評論家。ベストスコア84

週刊ゴルフダイジェスト2024年6月18日号より