米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT／M.Matsumoto

今年もステップ・アップ・ツアーでの岡本プロの解説、地上波とは一味違う放送の感じで楽しませてもらいましたが、今年の下部ツアーについてどのように感じることがありましたでしょうか。（匿名希望49歳・HC5）

テレビ中継の解説をやっていると視聴者の方から、「いつも楽しみにしています」と言われることがあり恐縮することがあります。

わたしたちのようなプロゴルファーによるテレビ解説が、どれだけ視聴者の役に立っているのか正直わかりません。

ただ、解説者駆け出しのころに比べれば、今はモニター画面を眺めながら、ある程度落ち着いて話ができるようにはなり多少は成長してきたかな? とは思います（笑）。

ですが、中国新聞ちゅーピーレディースカップとSkyレディースABC杯と2週連続で、ABC杯はステップ・アップ・ツアー唯一4日間大会の長丁場。

実況は午前、午後の長時間に及ぶので、さすがに体力が続かずヘトヘトになってしまいました（汗）。

ステップの解説のお仕事に携わらせていただいてから、はや12年がたちました。

それまでほぼ放映されていなかったステップ・アップ・ツアーの大会の模様が、2012年度からスカイAにより全試合、予選から決勝まで生放送されることになったのです。

その間、女子プロゴルフ界の様相は大きく変化してきました。

2012年、この年29億5000万円余りだったLPGAツアーの賞金総額は、2023年の今年度には44億9000万円に達しました。

一方ステップ・アップ・ツアーの賞金総額も、1億1000万円（全5大会）から5億500万円（全23大会）へと成長を遂げています。

また2017年には、下部ツアーであるもののステップ・アップ・ツアーは世界ゴルフランキングの対象となって海外ツアーへの門戸が広がり、そこへ挑戦する若い選手のモチベーションとツアーそのものの魅力も高まっています。

そうなると、広告媒体と評価する見方が強まり、レギュラー、ステップともにトーナメント開催を望む多くの企業スポンサーの方にとっても魅力的なものになってきたといえます。

先日開催されたちゅーピーレディースでは、台湾出身の19歳のウー・チャイエン選手が今季3勝目をマーク、翌週のABC杯ではルーキー・小林光希選手が初優勝を飾りました。

しかし、新人選手がいきなり勝つのも、今じゃ珍しくもありません。

昨年は櫻井心那選手がシーズン5勝の新記録でステップの賞金女王となり、今年はレギュラーで既に3勝しているのですから、ウー選手が来年同じことをやったとしても驚くことはないかもしれませんね。

実はABC杯の試合会場で台湾出身のレジェンド・涂阿玉選手と再会しました。

ウー・チャイエン選手を指導しているそうで、ウー選手について「今はまだ4日間を戦い抜くスタミナをつける体力作りのトレーニング中だし、自分で自分のゴルフを組み立てるプレーを学ばせている段階。この指導方針に関して、親には口を挟まないようにお願いしています」と言っていました。

ステップ・アップ・ツアーを見てきて思うのは、確かにツアーのレベルは十数年前と比べて上がっていますが、レギュラーとの違いは、やや大きくなっているかもしれないということです。

ステップ・アップ・ツアーで勝てても上では苦労しそうというプロが多く感じるからです。

その理由のひとつに、状況に応じて弾道の高さとスピン量を打ち分ける技術のある選手はわずかしかいない──わたしの眼にはそう映っているからです。

もちろん、だからダメだというわけではありません。

今から自分の課題を見つけて、練習を積み自分を高めていけばいいのです。

わたしが解説者駆け出しだった2013年のステップ・アップ・ツアーでプロ初優勝した、当時19歳でルーキーだった鈴木愛選手を見たとき、ツアーで活躍すると感じ放送でも言った記憶があります。

実際、彼女は翌年のステップ開幕戦に優勝すると、9月に開催された日本女子プロ選手権でツアー初優勝し、その後はトッププレーヤーとして2度賞金女王の座にも就きました。

現状に満足することなくこだわりをもって高みを目指していくことできる選手がトッププロへと駆け上がるか否か。

それの初めの一歩を見ることができる楽しさがあるのが、ステップ・アップ・ツアーの魅力のひとつかもしれませんね。

「日々の練習の積み上げができる選手が、最終的には勝っていきますね」（PHOTO by AYAKO OKAMOTO）

週刊ゴルフダイジェスト2023年10月24日号より

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