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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.756「上達する人はゴルフが好きで継続できる人。性格は関係ありません」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


ワンマンで自己中心的な人ほどゴルフが上手いと言われて、ちょっとイラッとしてしまいました。確かに「ゾーンに入る」とより強くなると思いますが、ゴルフ向きの性格なんてあるのでしょうか?(匿名希望・44歳・HC0) 


スクラッチハンディで自他ともに任ずる腕前のあなたは、そんなことを言われると、自分がわがままで自分勝手な人間と見られているようで、気分を害してしまったのでしょう。

何となくお気持ちはお察しします。

結論から言うと自分本位の性格でなければゴルフは上達しないなんてことはありません。

もちろん、ゴルフの腕が上がっていくに従って、いつの間にかそんな性格の人間になっていくなどということもありません。

一方で、上手い人ほど負けず嫌いで性格がキツいというような見方があることは承知しています。

ですが、それは何の根拠もない言いがかりですよね。

ゴルフは個人競技だから、仲間との協調性やチームに対する犠牲的精神が要求される団体スポーツとは対極の位置にある。

だから優れたゴルファーは、個人主義を究めている者にこそ向いている……そういう思考で作り出された偏見じゃないかしら。

ですが、きちんとした大人なら周りに迷惑にならないよう、社会的なルールに沿って律することができるはずです。


スポーツにも個人競技と団体競技を問わずルールがあるのですから、好き勝手な行動はとれません。

そう考えると、プレーする内容と本人の性格は、それほど関係ないのではないでしょうか。

性格が出るとすれば、それは種目にかかわらず、上手くなりたいと願って練習を積み重ねる、その努力の姿勢に表れるのではないかと思います。

ゴルフ向きの性格は? と聞かれても、そんなものがあるとは思えませんし、わたし自身がとにかくゴルフ向きの性格だとも思いません。

ただ、100人全員がゴルフ好きになるとは限りません。

ゴルフの魅力にハマる人、飽きる人、どちらでもない人、人間はそれぞれ。

ゴルフに限らずひとつの道で目標を果たし、ある種の境地に達するには時間を要します。

そこまでの努力を持続できるかどうか、そこにも性格は関係してくるかもしれません。

わたしの経験から言えることは、スポーツ万能と言われるようなタイプの人は、得てして長続きしない傾向が強いということです。

始めた当初は上手くいかず、上達も遅くコンプレックスを抱えていた方がむしろ、コツコツ積み上げる持続力を発揮したりする。

天才的なヒラメキを見せていた若い子が、もうしばらく続ければ素晴らしい逸材として開花したのに……と残念に思ったことは少なくありません。

でも、ゴルフに飽きてしまい、ほかにやりたいことを見つけたのなら、それもひとつの選択肢です。
もっとも大切なのは、本人がゴルフをどれだけ好きになるか、ということでしょう。その純粋な気持ちが努力の持続力を生む。

好きこそものの上手なれ。

何かを好きになるのは、性格で決まるわけでもないのですから、やっぱり「ゴルフ向きの性格」といったものはないと思いますね。

数あるスポーツの中で、足の速い遅いや、体格の優劣にもそれほど影響されないゴルフは、あえて万人向きといって言い過ぎではない種目です。

プレーする上で有利な性格も不利な性分もない。

世界中で多くの人に愛されている理由もそこにあるのではないかしら。

ゴルフに魅せられ、ハマりまくって練習を続け、レベルが向上してくると、新しい目標や課題を見つけ次々と泉のように新たな欲が湧いて出てきます。

人生訓では「初心忘るべからず」と説かれますが、わたしはこういう場合、「初心、忘るべし」と言いたいです(笑)。

普通は、年月がたち賢しくなってくると、志を立てた当時の汚れのない気持ちを忘れてはいけないという意味ですが、わたしは年季を積み技術も身につけてビギナーではなくなり、もはやピュアではなくなっている今の自分のレベルを自覚して、そこからどう進化できるかが大事なのだと言いたいです。

自分勝手で自己中心だからゴルフが上手い、って陰口を叩く人は自分自身がその傾向があるからこそ、上級者に対してそう言いたくなるのでは?

でも、自己中心的だからこそ他人の見方に満足せず、自分なりの観察や考えをもとに個性のある独創的なアイデアを生むことができるはず。

もし陰口が気になるのなら、自分勝手は逆に褒め言葉だと思って、あなたのレベルアップを目指してはどう?

言われなくても、ゴルフはマナーとエチケットを守るスポーツ。誰に文句を言われる心配もありませんよね。

「アナタの踏み出した小さな一歩が遠くまで連れてってくれる。それが普段の練習です」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2023年3月14日増刊号より

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