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「リーダーになれる人材を」石川遼、中島啓太を輩出した吉岡徹治のジュニア育成メソッド

練習にサーフィンを取り入れるなど、楽しみながら上達することを掲げる「美々津ゴルフアカデミー」。ゴルフの練習でも、単に技術を高めるだけではない独特の指導を行っていた。

THANKS/美々津CC、サンエースゴルフセンター PHOTO/Takanori Miki

吉岡徹治

62年宮崎県延岡市出身。アジアジュニアゴルフ協会代表理事。公立高校教員を経て杉並学院中学・高校ゴルフ部、代々木高校ゴルフ部で多くのトップジュニアを育てる。「サーフィンで体重が6キロ減った。シニア世代もやるといいですよ」

>>前編はこちら

難しくていい。大人と同じことを教えます

アカデミーはミーティングから始める。とても大切な時間だ。

「ここはゴルフの学校。マナーやエチケットなどを皆で読み合わせします。挨拶も声をそろえて。僕は校長で、生徒会を皆で運営できるようにしたいんです」

練習場では、遊びの要素も取り入れながら、基本練習と自由練習を行う。

「中島啓太も教える岩本肇コーチなどトップクラスのアドバイスを受けながら作った最新のコーチングと、トラックマン2台を持ち込んで行います。リフティングは遊びのなかで。手首の強化にもなるし、クラブに慣れ、何よりゴルフに興味を持つことからです」

難しいことを、しかも厳しく教えている感じがするが、子どもはすぐに吸収するのだという。

「難しくても、大人と同じことを教えます。それに厳しく言っても嫌味は言わないこと。何かができたらちょっとした成功でも褒めること。これがやる気につながる。自分がサーフィンをやったから改めてわかった思いです。長く指導者をやると、できて当たり前になるんですよね」

ミーティングはしっかりと

子育てメソッドから作った「10のルール」「スタート前の注意事項」などを声に出して皆一緒に読む。「啓太たちにも読み込ませました」。30秒を計りながら、その日の課題を皆の前で言葉にする。「最初はムリでも一生懸命話すと慣れてくる。1年もすれば司会もできるようになります」


リフティングは最高の“遊び練”

修造もびっくり!? 熱血校長

直野梨海さん(小6)はほぼ初心者。校長の熱い指導を受け「ゴルフは楽しい。体全体を使うのが面白いけど、体重移動が上手くできないんです」

球運びも球拾いもなぜか楽しい

最初はボールの入ったカゴを重そうに運び、練習後は球拾いを楽しそうに行う双子の中村守くん(小2)と真美ちゃん(小2)

15秒口頭反省で考えを整理

15秒で今日の練習の反省を。「考えたことを言葉に出すと、脳のなかが整理される。文字に残すとよりよい。最初は時間がかかっても待って聞くことです」

目土とスコアつけはしっかりとする

「もちろんプロを目指すのも素晴らしいですが、ここはプロの育成より、リーダーになれる人材の育成に重きを置いています。ゴルフができてリーダーができたら世界にも通用する人材になります。だからスコアが一番ではないですが、スコアをつけて把握することは目標として大事です」(吉岡)

朝のサーフィンの後、夕方には美々津CCに集合。ここは宮崎で2番目に古いオーシャンビューのコース。朝、波に乗った海を見ながら、ハーフラウンドを行うという贅沢さだ。

「基本さえ押さえておけばそのうち真っすぐ飛ぶようになる。手首の使い方をきちんと指導すると、めちゃくちゃなスウィングにならずにプレーンに乗る。小さい子でもトラックマンで測定するのもいい。自分の数値を興味を持って見ると発見があります。それにプロと同じことを言われたほうが楽しいし、プロや上手い人と一緒に回れるのはもっと楽しいでしょう」(吉岡)

中村俊一くん(中1)は、ゴルフをきちんと始めて1週間。昨日、初ラウンドでハーフ61が出た。

「飛ぶのが楽しい。でもドライバーが真っすぐ行きません」

この日は、2回目のラウンドにして、吉岡氏の教え子たち、プロの堺永遠さん(19)、小6時に九州ジュニアで優勝した平田兼慎くん(中1)、今年マンデーを通過しプロツアー数試合に参戦した香川友くん(中2)と回るので、「すごく嬉しい」と張り切っている。

3人とも280Y級。3人がバックティーで打った後、中村くんは初心者ティーに走って打つ。

全員、目土袋を持ち、人のプレーをしっかり見たり、教え合ったりしてラウンドしている。

それを見てうなずく吉岡氏。

「半年もすれば、中村くんも同じところから打てるようになりますよ。それに(中島)啓太なんかも先輩に可愛がられて育てられた。そういう選手は下の子の面倒も見る。ラウンド中、初心者を邪魔にしたりしないんです」

ゴルフの精神を鍛えることにもつながるのだ。堺プロは語る。

「僕も篠優希選手など上手い人と回れたりしたのが勉強になった。だから今はこうしています。教える立場の自分が、試合で『ダメでした』という姿を後輩に見せるのはカッコ悪い。自分を追い込むことができます。目標はツアーメンバーになること。メンタルを安定させて、体を鍛えて今のスウィングで飛ばしたい。サーフィンも気分転換になるし、マッチョ目指して頑張ります(笑)」

現在、美々津CCゴルフアカデミーのメンバーは、女子5人、男子4人の合計9人。うち経験者は3人。吉岡校長以下、地元の“先生”たちや、頼りがいがある先輩たちの指導も受けながら、切磋琢磨し楽しく成長中。日向から世界へと羽ばたいていくのだろう。

プロもトップジュニアも初心者も。
教え合い、見て覚える

互いを見て勉強になったという2人の夢はマスターズ優勝だ。「スウィング改造は今のうちにやったほうがいいと考え頑張ります」(平田くん)「プロの試合は勉強になった。試合全体を作るリズムも必要だと感じました」(香川くん)

「プロだけでない。リーダーを育てるんです」

13番パー3と海と美々津の街を背景に記念撮影。初体験のサーフィンについて堺プロは「よりバランス力が必要。ゴルフの練習にもなる」。中村くんは「面白かった。立ったらバランスが崩れたけど……」。平田くんは「予想以上に難しくて、でも面白かった」。香川くんは「バランスが鍛えられる。ゴルフは飽きないけど、釣りも好きだし、違うスポーツをやるのも楽しい」。アカデミーの生徒は県北の延岡、日向地区のジュニアたち。「次は女子もサーフィンをやろう!」と張り切る校長。ゴルフ&サーフは、心身のバランスを整え、鍛えてくれる。また、地元や仲間とのつながりも作ってくれるのだ。

週刊ゴルフダイジェスト2022年11月1日号より