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「19番ホールのお誘い」「チップ20万」「林の中で…」キャディは見た! 匿名座談会

セルフプレーが多くなったとはいえ、キャディ付きだとやっぱり安心しますよね? え、気を使う? 何をおっしゃる、気を使っているのはキャディさんのほう。え、空気みたいな存在? いやいや、その観察眼たるやベテラン刑事並み。今回は、そのデカ4人、ではなくキャディ4人がゴルファーにまつわるあれやこれやを語り合います!

ILLUST/Koki Hashimoto

4人のキャディ経験者が匿名で語ってくれた
●Aさん……関東地方の中堅コース現役キャディ。60代女性。キャディ歴25年
●Bさん……関東地方の有名コースの現役キャディ。50代女性。キャディ歴15年
●Cさん……元大学ゴルフ部。4年間、関東地方のコースでアルバイト。20代女性
●Dさん……元大学ゴルフ部。4年間、関西地方のコースでアルバイト。40代男性

GD では「第1回キャディさん、愚痴大会」の開会を宣言します!

全員 えっ、今日はそんな会なんですか?

GD ざっくばらんにお願いします。まずは、ギャラ・チップ事情から。

Cさん そこからですか。でも、正直「日当1万2000円はいいな」というのがキャディのバイトを始めたきっかけです。

Aさん それに、チップがもらえればプラスアルファだものね。

GD チップの相場っていくらぐらいなんですか?

Cさん 1000円をポチ袋に入れてスタート前に渡されることが多いです。それでテンションが上がるのは確か(笑)。ポチ袋を忘れたお客さんからティッシュにくるまれた1000円を渡されたこともあります。おじいちゃんからのお年玉みたいで、ほっこりしました。

Bさん うちのコースだと、正直、メンバーさんはほぼ全員くれます。

Aさん ホールインワンのときだと3万円とかね。

Bさん 後日、まあまあの額のクオカードが送られてきたり。

GD うらやましい!

Dさん 僕がアルバイトしてたのは関西の庶民的なコースで、10年前ですけど、バイト代は7000~8000円くらいだったかな。でも、勤務終了後にラウンドできるのが良かった。走りながら回ってましたね(笑)。チップはたまに、です。小銭がぎっしり入った謎の布袋を渡されたこともありました。たぶん2000円くらい入ってたかな。あと、関西なんで女性ゴルファーから“飴ちゃん”は必ずもらえます。関西では飴には「ちゃん」をつけます。

Cさん 先輩から聞いた話ですが、1万円のチップをもらったそうなんです。それが19番ホールのお誘い付き。丁重にお返ししたそうです。

Aさん 昔はときどき聞いた話ですね。19番っていっても食事だけだったらしいけど、その後、たびたび“ご指名”が入り、怖くなってアルバイトを辞めた人もいるみたい。

Dさん 僕はそういう経験はないですが、ゴルフ部っていうことがバレて「なら代わりに打ってよ」と言われて困ることはありました。正直、そんなにうまくないんですけど(笑)。

Cさん 
私もあります。学生バイトはキャディのユニフォーム支給がなくて、ゴルフウェアにビブスを着けているだけ。いかにも大学ゴルフ部だなっていうのがバレバレで。で、誰かが「キャディさん、代打!」とか言い出して、周囲がウケると、何度も言い出すんです。アレ、嫌でした(笑)。


Aさん 「類は友を呼ぶ」っていうけど、ゴルフでもそうよね。やっぱり雰囲気なんかが似た4人組が多い気がする。

Bさん 服やギアの趣味もかぶっていたりしない? 私の場合、4人のうち3人のドライバーがテーラーメイドのSIM2だったときは「ハッ」とした(笑)。シャフト、グリップもしっかり把握して、渡し間違えないようにしないといけないから大変。

Cさん スタート時、全員がシマシマシャツだったときは唖然としてしまいました。シマシマも微妙に違うんですけど、誰が誰かわからなくなってしまって……。あと、4人のうち3人のキャディバッグがドクロ柄だったことも。グループ内で流行りがあるんですね。

ファッションも似ちゃう仲良し4人組。〇ニクロはかぶっても、意外とバレにくいという情報も(特にパンツ)

Dさん 4人全員メガネ、というのはけっこうあるあるです。

Bさん お客さんの特徴をメモしたりする?

Cさん お客さんに見られないようにこっそりやってます。上着白、ズボン黒とか。それが途中で上着を脱がれた日には、またも大混乱(笑)。夏場は、ハーフでシャツを着替えてこられる方もいますし。そういう意味では、赤いパンツに白シャツ、サンバイザーの、ちょっと昔の石川遼スタイルの人はわかりやすくて助かります。

Aさん 
服装やギアはもちろんだけれど、球筋やタッチも把握しないといけないのよね。ビジターさんでも3ホールまでには覚えられるように頑張ります。

Bさん その人のパットのタッチでラインだって変わりますもんね。

GD さすがベテランキャディ!

Aさん ライン読みも「自分でしたい」という人もいるから、安易に「カップ1つ右」なんて言えません。聞かれたらもちろんお答えするんですけどね。

Bさん 私はキャディの指導を受けたとき、ライン読みは断定的な言い方はしないように言われましたね。「私は少し右に切れると思いますが……」みたいな感じで。というのも、いわゆる“ニギリ”をやっているゴルファーもいるので。昔はかなり高額だった時期もあったんですよね。それこそこのパットでウン10万かかっている、とか。

Aさん
 ああ、そっちの筋の方とかね(笑)。逆にそれでチップ20万円をもらったという話も聞きましたね。でも、もうずっと前の話ですよ。

Dさん 僕もそっち系の方についたことはあるんですけど、緊張しましたね。普通に回るんですけど、持っていくクラブを間違ったときとか……。スリルは味わえました。

Bさん でも、チップがいいから、あえて「担ぎたい」という人もいたけどね。

最近は諸般の事情ですっかり少なくなった“コワモテ系”。チップをはずむ人が多く、一部のキャディには人気が……

Dさん 僕は“飴ちゃん”のほうがいいかな(笑)。

GD 飴ちゃんは関西マダムの必携品ですけど、最近、女性ゴルファーも増えていますよね?

Bさん あら、強引な話題の振り方(笑)。でも確かにそう。うちのコースでは「男性に負けないぞ」タイプと「家にはお手伝いさんがいましてよ」タイプに分かれますね(笑)。前者は前のティーから打たない、後者はキャディをお手伝いさんと思っているのが特徴かな。あと「ティーがない、マーカーがない」と「どこ? どこ?」を連発するのはたいてい女性ですね。

Aさん あとは、ぬいぐるみのヘッドカバー。女性はウッドが多いから、バッグを開けると犬や猫がいっぱい。4人ともぬいぐるみ系を使っていると、もうカートの後ろが動物園みたい(笑)。

Dさん ぬいぐるみヘッドカバーって落ちやすいものが多くないですか?

Aさん そうそう。だからこちらも気をつけてはいるんだけど、カート道を走っているときの振動で落ちてしまうこともあるんですよね。でも、カート道で落ちたことは確かだから「次の組が拾ってくれるので」と言ったんですが「うちの〇〇ちゃんがまいごー。かーわーいそう」って。

Cさん 〇〇ちゃんて、ヘッドカバーにも名前あるんだ(笑)。でも確かにカート道に落ちているヘッドカバーはたいていぬいぐるみ系の気がします。

GD 動物自身が逃亡したという説もあります。

マダムのキャディバッグはヘッドカバーの動物園と化する場合も。ときどき脱走するので、特にウサギは要注意との情報も

Dさん あとはすごく几帳面で、アイアン1本1本にカバーをかけていて、打つたびに外して戻す人……。道具を大事にしているんだなというのはわかるんですけど。

Aさん ウッドのネコちゃんカバーで5番、7番がほぼ同じなんですけど、それが入れ替わっちゃってて「7番かと思ったら5番だったわー」とか……。ネコちゃんに「5」とか「7」とか入っていると助かるんですけどね(笑)。

Bさん あと、マダム4人のパーティで全員が自分のバッグをカートの端に積んでほしいとリクエストされたことがありましたね。端がクラブの出し入れがしやすいのはわかるんですけどね。「では今日は2バッグになさいますか?」と言っちゃいました(笑)。

Cさん でも、総じて女性ゴルファーで嫌な経験は少ない気がします。キャディ付きプレーをする女性が少ないというのもあるかもしれませんが。

Dさん 飴ちゃんもくれますし……。

Aさん またそれ(笑)。

お客さんにごちそうになるオロナミンCがおいしい!

GD 飴ちゃんのほかにも、これから暑くなる時期、飲み物もたっぷり必要になりますよね?

Cさん そうなんです。もちろん、ドリンクは自分で用意するんですけど、キャディのぶんも持って来てくれる人もいて、その心遣いには感激します。真夏は凍らせてあったり。

Aさん 茶店でごちそうしてくれたりね。

Bさん 冷えたオロナミンCのおいしいこと!

Dさん 同感ですね。

GD しかし、冷えた飲み物でお腹の急降下が始まるお客さんも……?

Aさん いますね。茶店の後より、お昼休憩の後が多いかな。クラブハウスの冷房が効きすぎていたときなど……。

Bさん もともと年配の方はトイレが近くなっているケースも多いですし。林近くで異変を感じてフッと見たら立ちション。見るんじゃなかったーって思いました(笑)。

Cさん 女性用トイレにズンズン入る人もどうかなーって思いますね。

Aさん トイレの数も限りがありますもんね。4人全員が行きたくなったら大変。えー、私は小だけでなく“大トラブル”に遭遇したことが何回か……。

Bさん 私もあります……。

Aさん 急に林に入って行って、戻ってきたら服がドロドロになっていて。林は斜面になっているので転げてしまったみたいです。濡れタオルなどをそっと渡します。

Bさん 私はズボンが破れて戻って来られたお客さまに「ティッシュちょうだい」って言われましたね。

Aさん キャディはもちろん、ほかのプレーヤーもなんとなく気づくんですよ。でも、そこは武士の情けというか。

Bさん 誰も何も言いませんね。

GD ほかにも「あー、見ちゃった」という経験は?

Cさん 林で卵を産んでらっしゃいました(笑)。私がちょうどボールを見つけて「ありましたー」って言おうとしたら、その方が「おー、あったあった」って。じゃあ、私の見つけた球はいったい……って。

Bさん ボールを蹴っているのはときどき見ますね。

Dさん アメリカの前大統領は足使いがうまいと聞いたことがありますね。“ゴルフ界のペレ”と呼ばれていると(笑)。

Aさん あと、林のすごく奥、なんなら隣のホールに行ったかなというときに、すんごく手前で「打つねー」って。「そこじゃないでしょ」はありますよ(笑)。でも言いませんけどね。

GD そういえば、最近、多くのゴルファーが距離計測器を持っていますよね。あれ、キャディ付きのプレーでも皆さん使ってます?

Cさん 使います、使います。「残り何ヤード?」と聞かれてお答えしたら、自分で測った距離と「3ヤード違うな」とか言われてギャッ。

Aさん 最近では4人全員持っているケースもあるし。みんな使ってみたいんですよね。

最近ではクラブ自慢より距離計測器自慢がゴルファーたちの日常。一人が買うとみんな買う。買うと使いたくなるのが人情だ

Bさん 私は、そういうプレーに真剣な感じのゴルファーは好きですね。一打一打を大切に、という姿勢とか。

Aさん ニギッているからかもね(笑)。

Dさん 「その木からグリーンエッジまで〇ヤードです」とかいうふうに言えば、トラブルにはなりませんけどね。だって確かな情報ですから。

Aさん あと、接待ゴルフでよくあるのが、事前に「キャディさん、今日はあの人だけをしっかりケアお願いします。僕らはほっといてくれていいんで」と言う人。

Bさん 「あの人」が接待されているほうですよね。

Aさん そうそう。するとね「あの人」はすごくお上手で。ずっとフェアウェイをキープしているからケアなんてしなくていいんですよ。逆に「ほっといて」と言ってきた人が右に左に曲げまくって、無視するわけにもいかなくて困ってしまいました(笑)。

Cさん 私も経験あります。接待あるあるですね。

何事も人のせいにしない姿勢、私たちも見習わないと!

Aさん とはいえ、お客さんの8割9割は素敵な方たちだと思う。

Bさん 確かに。悪い印象は残りやすいけれど、実は数はとても少ないんです。うちはメンバーコースで“コース愛”が深い人が多いんです。自分のプレーはファストで、空いている時間は目土。目土がなくなってきたら、私たちが袋に補充するんですけど、その補充も自分でササッとやってらして。

Aさん メンバーさんって、そういうほんとに素敵なゴルファーと、カートにどーんと座って動かないタイプとに分かれるんですよね。

Bさん 私は、どーんと座っている人は家では肩身が狭い人なんじゃないかと想像しています(笑)。

Cさん ゴルフってほんとに人柄が出るから、そういう意味でも勉強になります。

Bさん 正直「自分のライン読みが間違っていたかも?」というときも「ああ、俺のタッチが弱かった。キャディさん、ごめんね!」とか。

Aさん 自分の調子が悪くても、帰る際は明るく「いやー、俺も修業が足りないな。練習してから、また来るよ!」と言ってさわやかに帰るとか。

Dさん われわれも、普段の生活から、かくありたいですね。

GD 最近は、新規ゴルファーも増え、そういう人たちの多くがセルフを選択すると思うんですけど、ぜひキャディ付きプレーも経験してほしいと思います。そこにはまた新しい世界が待っています!

失敗を他人のせいにしない。“素敵ゴルファー”の基本はコレ。笑顔とユーモア(とチップ)をプラスできたらもう最強!

週刊ゴルフダイジェスト2022年6月14日号より