キーワードは「健康」「女性」「コミュニティ」 JGAが考える日本ゴルフの未来<前編>
週刊ゴルフダイジェスト
先日、日光カンツリーで開催された日本オープン。1927年に創始され、第1回大会はアマチュア12人、プロ5人の合計17名で争われた。今年で90回目を迎えるが、この日本オープンを主催するのが日本ゴルフ協会(JGA)。そのJGAが今、大変な局面を迎えているという。
PHOTO/ Tadashi Anezaki

>>後編はこちら
- 先日、日光カンツリーで開催された日本オープン。1927年に創始され、第1回大会はアマチュア12人、プロ5人の合計17名で争われた。今年で90回目を迎えるが、この日本オープンを主催するのが日本ゴルフ協会(JGA)。そのJGAが今、大変な局面を迎えているという。 PHOTO/ Tadashi Anezaki >>前編はこちら ……

公益財団法人日本ゴルフ協会
専務執行役
山中博史
——今年から日本オープン優勝者にマスターズの出場権が与えられることになりました。
選手にとっては大きなインセンティブになり、日本オープンの価値も高まったのではと感じています。発表の直前に出場資格が付与されるとの連絡が来たのですが、まさか日本オープンが入っているとは思わず、我々にとってもビッグサプライズでした。世界中に数あるナショナルオープンの中から選んでいただけてありがたく思っています。
同時に全英オープンの出場権も見直され、これまでは日本オープンの優勝者のみに出場権が与えられていましたが、優勝者がすでに別のカテゴリーで出場権を有している場合、日本オープンの2位以下の選手に繰り下がることになり、タイが生じた場合は世界ランク上位者に出場権が付与されることが決まりました。
——JGAは昨年100周年を迎えました。
100年前に東西7倶楽部でスタートしたJGAですが、今でも正会員は全国のゴルフ場です。ただかつては2400以上あった国内のゴルフ場ですが、現在は約2100コースまで減っています。さらにこれからますます少子高齢化が進み、今は楽しく健康でプレーしているゴルファーも5年後、10年後にはゴルフができなくなる人も増えるでしょう。ゴルファー人口の減少で、多くのゴルフ場の経営も苦しくなっていくことは避けられませんし、現在600万人とも700万人とも言われているゴルファー人口を簡単に増やすのは正直大変厳しいと思います。
――今後の日本のゴルフはどうなっていくのでしょう?
前述の通り、少子高齢化が進み、国内のゴルフ人口は減っていく一方で、外国からのインバウンドは引き続き好調です。例えば、お隣の国、韓国のゴルファーの数は日本と同じくらいだと言われています。しかし、韓国にはゴルフ場が500コースくらいしかありません。プレー料金も高く4~5万円ほどだとか。それが日本に来ると安い、コースコンディションやサービスもいいと喜ばれています。プレーするだけでなく、ゴルフ場を買収して経営するケースも多くなってきました。特に地方で国際線が就航している空港に近いゴルフ場などでは、外国人ゴルファーの受け入れは重要になっていると思います。実際に観光庁もゴルフを含めたスポーツツーリズムの推進を後押ししています。
——そもそもJGAとは何をしている組織なのでしょうか?
1924年に創立し、2012年には公益財団法人に移行したJGAですが、その後2021年に定款(ていかん)を変更し、ゴルフの健全な普及と振興を図る活動がJGAの最も大切な事業であることを明確にしました。以前は正会員であるゴルフ場のための組織だったのですが、公益法人になったため公益目的、つまり不特定多数の方を対象とした事業を優先しなければならなくなったのです。また国からは、税制上の優遇も受けている分チェックも厳しく、定款に定められていることをしっかりとやらないといけなくなりました。
——具体的にはどのようなことをやられているのでしょう?
日本オープンをはじめとするナショナルオープンやアマチュア競技の主催のほか、選手の発掘・育成・強化、ナショナルチーム、オリンピック関連、外交、ゴルフ規則やハンディキャップ関連もJGAの大切な役目ですが、これらは一部の人たちのための事業であり、もっと不特定多数のゴルファー、あるいはゴルフをしていない人へもゴルフの普及と振興、ゴルフのイメージアップを第一に考えないといけなくなってきています。
——しかし、ゴルフ人口は減っていく一方です。
その対策のひとつとしてJGAでは、R&Aからも助成金を頂き、「ゴルフと健康」「女性とゴルフ」にも力を入れています。ゴルフは1ラウンドで1万歩以上歩くといわれ、1日5~6時間自然の中でプレーするので健康にも大きく寄与するということで、R&Aも「ゴルフと健康」に力を入れているのです。また女性ゴルファーを増やすことも急務。R&Aは50年後、100年後にゴルフが皆に愛されるために何をするべきかを考え、各国に資金的なサポートをしているのです。日本はゴルフ場の数、ゴルフ人口でアメリカに次ぐ第2のゴルフ大国ですのでR&Aも大きな関心を持っています。

R&Aは50年後、100年後にゴルフが皆に愛されるため、「ゴルフと健康」「女性とゴルフ」などでJGAにも資金的なサポートを行っている
また、R&Aからは「コミュニティゴルフ」の普及も求められています。ジュニアゴルファーといえば、その多くは競技に出て、将来プロになり、トッププレーヤーを目指していますが、そうではなく、ゴルフをしたことがない子供やその親たちにゴルフを普及する活動です。本当は学校教育に取り入れてもらいたいのですが、安全面や指導者の確保が難しい。そこで野球クラブやサッカークラブのように地域単位、つまりコミュニティでやれないものかと。
イギリスに「Golf It」という9ホールのコースと練習場やパークゴルフなどが一体になった施設があるのですが、そのような取り組みを栃木県鹿沼市で既存の9ホールを転用して試験的にスタートすることを今週発表します。ゴルフをしたことがない子供たちや親に、まずはゴルフ場に来てもらいゴルフクラブを握ってもらう、球を打ってもらうことから始めます。“ジュニアゴルフ”というとどうしてもスクールや大会になってしまうことが多いのですが、もっと手前の草の根運動から始めようという動きになります。
JGAジュニア会員の数も石川遼選手や宮里藍選手が出てきた頃は1万5000人近くいたのですが、現在は約9000人と少なくなっています。ところが女子はそこまで減っていないのです。それは間違いなく今の女子プロの活躍のおかげです。現在プロで活躍している多くの選手はJGAナショナルチームや各地区連盟の強化選手プログラムから育ちました。そう考えると彼らや彼女らがプロの試合やナショナルオープン、オリンピックで活躍することは、日本のゴルフの普及振興に繋がっているのです。また彼らの活躍でゴルフ熱が高まると、JGAの会員であるゴルフ場の来場者も増えることに繋がるのです。
——健康でいることで、できるだけ長くゴルフを続けてもらう、女性とジュニアゴルファーを増やし、ゴルフ人口の減少を食い止めようということですね。
しかし、JGAの一番の問題は、国やゴルフ界から求められる事業を遂行するための資金がないこと。JGAの今の財政は大変苦しく、本来行うべき活動やあるべき姿には程遠いのが現状です。物価も高騰しています。国からの助成金も、ゴルフに限ったことではありませんが、かなり減額されています。となると自分たちで収入を得なければなりません。また出費を少しでも減らすためにJGAの事務所も数年前に家賃が安い場所に引っ越しました。今までやってきた事業を取りやめたり、かなり縮小したものもあります。代理店任せだったスポンサー探しも、自分たちでも見つけてくるようになりました。
>>後編はこちら
- 先日、日光カンツリーで開催された日本オープン。1927年に創始され、第1回大会はアマチュア12人、プロ5人の合計17名で争われた。今年で90回目を迎えるが、この日本オープンを主催するのが日本ゴルフ協会(JGA)。そのJGAが今、大変な局面を迎えているという。 PHOTO/ Tadashi Anezaki >>前編はこちら ……
週刊ゴルフダイジェスト2025年10月28日号より


レッスン
ギア
プロ・トーナメント
コース・プレー
雑誌




















