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車いすゴルファー5人の挑戦と工夫<後編>「パラスポーツは不足を補う“工夫”こそが醍醐味なんです」

10月に千葉県で開催された日本障害者オープン(日本障害者ゴルフ協会/DGA)に出場した5人の車いすゴルファーに注目。後編も、引き続きゴルフの魅力に憑りつかれた選手たちの声をお届け。

PHOTO/Yasuo Masuda THANKS/新君津ベルグリーンCC

>>【前編】はこちら

「障害がある者が作るからハマる」
藤田宏さん(54歳)

「息子と嫁が楽しそうにゴルフをしているので、練習を見に行った。ドライバーを打ってみたら、150Yくらい飛んだんです」という藤田がゴルフを始めたのは44歳。それまでは、四輪レースで活躍していた。日本初、車いすでB級ライセンスを取得。地区大会では優勝するほどの実力だった。

藤田は20歳のとき、モトクロスのレースの練習中に脊髄損傷を負った。「子どももまだ1歳で明日から仕事はどうしようと。痛いより冷静でした」

車のコーティングなどが仕事となったが、元々機械をいじるのが大好き。人に頼まれどうしたら速く走るかを研究してやっていると、レース関係にどっぷり入っていた。

「自分で乗るのは趣味程度だったのに、結局スピード感が好きなんですね。僕はオートマ車なので、ミッション車とはハンディがある。でも、どこがハンディかはわかっているので工夫するんです」

さて、ゴルフだ。

「軽いものを思い切り振って、バーンと飛ぶ感じが気持ちよくて。次に近くのショートコースに行くため、自分でカートを作りました」

DGAのホームページでカートを見て調べ、高齢者が使うセニアカーを拾い、バッテリーを新品に代え、自分がやりたいように椅子が回るようにした。「次は本コース、と考えていた時、練習場(多治見わくわくG)と同じ経営のコース(中山道GC)の方が『うちで回りますか』と声を掛けてくれました」

ハーフデビューは55。「何て気持ちよくて贅沢な空間だって。こんな広い所を4人だけで回るなんて。芝がダーッとある景色にも感動しました」。

藤田のゴルフも研究と工夫だ。しかも、自分で作れる強みがある。

「アイアンはひざが邪魔になるんで打ちづらい。グリップが低い位置なのでライ角を寝かせるため、自分の工場で削ったり。でも、ゴルフの攻め方はカーレースとも近い。手前のストレートのコーナーでミスしたらスピードが出ない。だからそこは抑えた走り方をする。ゴルフも同じです。ドライバーだけ飛ばせばいいというものでもない。グリーンから逆算することも大事ですしね」

DGAのカートも藤田が作ったものだ。「健常者の技術を持った人が作るより、同じような体の人間が作るほうがハマるんです」

ゴルフはすべて自分の責任で心のスポーツだから面白いと藤田。

「目標は世界大会に出るチャンスがあれば1位を取ること。そして、障害者ゴルフの発展。車いすゴルファーを増やす運動を少しずつしていき、次の世代でパラリンピックの正式種目になったらいい。障害者と健常者一緒に車いすゴルフ体験会もしたいですね」

自分のカートも手作りの藤田。「新品だと60万くらいかかるけど、中古品を集めて20万かからないように。多くの人に協力したい」


「課題が楽しい。世界を目指したい」
大村実法さん(45歳)

「藤田さんのことを知った翌日には会いに行きました。僕の車いすも作ってもらっています」という大村は、20歳の時、仕事中に機械に巻き込まれて両足をひざ上から切断。

「これから先どうしようと思ったけど、悩んでも足が生えてくるわけではないので、できることをやろうと思いました」

皆に共通するのは“切り替え”。

「半年でリハビリ専門の病院に転院して、僕より障害が重い方も多く、一生懸命笑顔で頑張っている。お前ごときが何を悩んでるんだ、と言われているような気がして。そこから変わりました」

車いすの生活をすることに葛藤はなかったという。

さて、野球経験がある大村、ゴルフは18歳のときに始めた。ジャンボ尾崎が憧れだった。面白くなってきた矢先の事故だった。

「ケガして18年間、車いすゴルフがあると知らなかった。スポーツは好きでバスケも水泳もやったけど、あまりハマらなかった」

会社の上司の先輩の紹介で隣町の藤田と出会う。翌日すぐに球を打った。

「最初から当たったんです」とその時の動画を見せてくれた。美しい軌道を描いて飛ぶボールより、嬉しそうな表情の大村が印象的だ。

「それから毎日行きました。そのうち中古で僕仕様のカートを用意してくれて、それを今も使っています。90度の回転だけだとハンドルやキャディバッグに当たる。プラス15度くらい後ろに向くようになっているから振り抜けるんです」

そして、すぐにコースに行き130で回った。気持ちよかった。「昼食のビールを飲んで、こんなに楽しいことがあるんだと(笑)」

大村には妻と子供が4人いる。誰もゴルフはしない。

「費用面もあり、僕ばかり遊んでると思われるのでラウンドは月1回。やりたいという子は1人もいなくて残念ですが、一番下が手がかからなくなれば妻とも一緒に行きたいです」

ここ数年、大村や藤田の周りの方の協力があり、キーパーに動画を見せ、グリーンに跡が付かないのを説明してくれたりした結果、岐阜県だけでも10コース以上、車いすで回れるところが増えた。

「ゴルフ、全然飽きません。だって課題ばかりだから。皆さん障害の箇所が違うけど、自分なりの工夫やクラブのこだわりがすごくある。それを考え楽しくプレーするのが一番の魅力です。障害者ゴルフで車いすが初期費用は一番かかる。カートも安くはないし毎回コースに運ばないといけない。車も大きいものが必要。気軽に始めづらい。でも少しでも負担を減らすため、周りも協力してくれ、自転車屋の社長さんが誰でも使えるカートを置いてくれました(春日井グリーンG)。目標は日本オープンで勝ちたいし、世界の車いすゴルファーと戦ってみたいです」

大会では高校生ボランティアがティーを差してくれたりもする。皆、プレーは早いし、マナーも抜群の、真のゴルファーだ

他の部門の障害者ゴルファーの話も参考になる。「マスコットバットを振って飛距離が伸びたので曲がるようになって」(大村)。心技体の相談をしあう

「パラスポーツで工夫と世界が広がる」
野島弘さん(61歳)

大会中、皆から声を掛けられ、自身も親しげに声を掛ける野島は、チェアスキーで全日本代表として活躍したパラリンピアンである。ケガをしたのは44年前。オートバイで車と接触し脊髄を損傷した。

「昭和の時代、車いすの人って、TVでも街でも見たことがない。障害者という言葉もあまり馴染みのない感じでした」

当時はスロープもエレベーターも、洋式トイレも少なかった。

「今、日本はハード面では遅れてはいないけど、ソフト面は……世界中同じですけど、オリンピック・パラリンピックのとき『共生社会に!』と盛り上がるけど、終わるとまた下火に。この繰り返しです。20年の東京五輪の時も。でも、一定数、理解ある人は増えてきていて、前より断然ラクです」

この変化のなかに野島は居続けた、いや、変化を起こし続けた。

野島は当初、リハビリの一環として車いすバスケを始め、その後仕事に没頭、そしてスキーブームのなか、チェアスキーを始めた。

「非日常的なスピード感なので面白いし、同じものに夢中になってる人って、障害は関係なく仲間として受け入れてくれるんです。これはゴルフも同じ。自然のなかでするスポーツ特有なのかな」

「自然のなかにいるのが気持ちいい。4人というプライベートな空間で、初めての人とでも仲良くなれますし」(野島)

ゴルフは20年くらい取り組んでいる。「たまに出るナイスショットがたまらない。試合も楽しい。でも本来試合はしっかり練習して、それを試す場、同じく練習してきた方と戦う場だと思っていますけど、今、忙しくてできず違う楽しみ方になっていますね」。

スポーツも好き、人も好き。

「やっぱりまだ僕たちがスポーツをするには社会の理解は必要。ゴルフ場や周りの方がいいと言わなければできない。理解者を増やす、すべてのスポーツで同じです」

ゴルフの難しさを聞くと、「僕たちは、バランスボールに乗って足を上げたまま打っている状態。強く打とうと思うほどブレる。ベルトを強く締めすぎると体が動かなすぎて打てない。パットは足裏で傾斜を感じられないし、歩測もできない。反対側から見るほど動き回れないし、そのまま何となく打ってしまう。でもね、パラスポーツは何をやるにも工夫です。それが醍醐味。何かしら欠けたり機能しないものを補う工夫なんです」

そして、最後にこう締めてくれた。「パラスポーツをやってよかった。世界が広がるし仲間も増える。体を動かして楽しいだけでなく、コミュニティとしての場が広がります。何事も一度に全部は変えられなくても少しずつは変わってきていて、すそ野も広がっていて。障害者の話がお茶の間でも出てほしいですね。だって、駅で見る障害者より、ゴルフ場で車いすでこんなプレーして飛んでたよ、となると話がしやすいでしょう」

車いす部門の結果。(写真左から)2位・大村、優勝・藤田、3位・野島。皆お互いのプレーを見て自分のプレーの参考にしているという

カート乗り入れは、キーパーさんに直接影響の少なさを見てもらうのがいいという。「全く問題ない」と言う方が多いそうだ。課題はコースや練習場のスロープ、トイレなどのバリアフリー化にもあるが、高齢者対策にもつながることしてとらえるとよいのではないか

週刊ゴルフダイジェスト2023年12月5日号より

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