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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.108「“グリーンブック使用禁止”が比嘉一貴の躍進を生んだ?」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa

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今シーズンの男子ツアーの賞金王は、比嘉一貴くんに決まりそうですね(※カシオワールドで決定)。

実は、彼が学生の頃に、台湾での試合で会場に向かうバスで一緒になったんですが、そのときの印象が非常によかった。なんというか、人懐っこくて、可愛がってやりたいいう気持ちにさせる子ですわ。それ以来、試合で一緒に回ったことはなかったんですが、球を打っておるところは気にして見たりしてました。

今年の日本プロのときのプロアマで彼と一緒の組になったとき、2カ月前のツアー選手権での優勝のお祝いを言いがてら、「オマエがこんくらいのときから知ってんねんからなあ」と言って、腰くらいの高さに手をかざしたら、「いや、もうちょっと大きかったと思います」いうて笑ってました。

彼は158センチと小柄ながら、思い切りのええゴルフをします。

この比嘉くんの活躍の背景には、グリーン上やその周辺の形状や速さや距離などの細かな情報が書かれた「グリーンブック」が、今年から使用禁止になったことが遠因としてあったんかもしれません。


僕は知らんかったんですが、比嘉くんは、ナショナルチーム時代に受けた指導が身に付き、プロになってからも練ランでグリーン周りなどの傾斜や起伏を、自分で傾斜測定器を使って調べメモに記しておったそうです。

なんやあの顔には似つかわしくないコマいことやっとんねんなと思いましたけど(笑)、それを今年から、グリーンブックの禁止を機にやめたらしいですわ。

片山晋呉から「いいものを持っているんだから、もっと感覚も使ったほうがいい」いうようなことを言われ後押しにもなったみたいです。メモと感覚が違ったときに迷いながら打っとったのを、感覚重視にしたことで、考えすぎずにシンプルにプレーできるようになったんやないでしょうか。

この比嘉くんの話を聞き、まさに我が意を得たりの思いです。僕もほんの少しの間だけヤーデージブックを使っていた時期がありましたが、使わんようにしてせいせいしたことを覚えてます。

シニアツアーでは、いまだ限定的ながらグリーンブックは使用可になっていますが、僕は早く使用禁止にしたらええと思ってます。

「体は小さくても、思い切りのええゴルフをしますね」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2022年12月13日号より

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