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「趣味は筋トレ」「試合前にウッドを全部変えた」19歳のヒロイン・尾関彩美悠インタビュー

今季も女子ツアーは20歳前後の若手が大活躍。今回は、ツアールーキーながら住友生命Vitalityレディス東海クラシックで初優勝を果たした19歳のニューヒロイン・尾関彩美悠に注目。ツアーのことからプライベートまでいろいろ聞いてみた!

PHOTO/Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa、Hiroshi Yatabe

趣味は筋トレ。体力には自信あります

渋野日向子の後輩、岡山県作陽高校を3月に卒業したばかりの尾関彩美悠は、ツアー参戦17試合目で見事、初優勝を達成した。

GD 岡山県倉敷市の出身ですが、どんな子供でしたか?

尾関 家の中でおままごとをするというより、男の子たちと外で鬼ごっこしたりする、わんぱくな感じです。とにかく体を動かすのが好きでした。

GD ゴルフは6歳から始めたということですが、きっかけは?

尾関 祖父と父が近所のゴルフ練習場でティーチングプロをしていたので、それに付き添う形で自然に始めました。ウチは親子3世代、ゴルフ一家なんです。祖母も母も姉もみんなゴルファーです。

GD 学生時代、ゴルフをしないオフとか、休日は何をしていましたか?

尾関 もともとあまり遊びに行くタイプではありません。買い物も好きじゃないんです。趣味といえば「筋トレ」ですね。家の倉庫にトレーニングルームがあって、父が集めたトレーニング器具がたくさんあります。なぜかそこにいるのが好きで、音楽を聞きながらスクワットとかルームランナーとか、トレーニングばかりしていました。小さいころは朝5時に起きて近所をランニングなど、体を鍛えるのが好きなんだと思います。だから体力には自信あります。

GD プロになろうと思ったきっかけは?

尾関 ゴルフの試合を見るのが好きで優勝している選手を見て「いいな~。楽しそう」って思ったんです。それでティーチングプロの父に「私、本気でゴルフやる!」って宣言したんです。確か中学3年生くらいだと思います。父も本気じゃないなら教えないと言っていたので、そこから本格的にゴルフに取り組むことになりました。

GD お父様からどんなことを教えられましたか?


尾関 ゴルフでは基本的なことばかりです。いつも言われているのは「リズムを大切にすること」です。それと「トップとフィニッシュさえ決まればいい」です。最初と最後が決まれば、ヘッド軌道とかインパクトの形とか、中身は自然についてくるからって。父の教えは、とてもシンプルです。余計なことを考えなくていいので、悩むことも少ないです。

「“リズムを意識”父の教えはすごくシンプルです」

「細かいことを意識するのではなく、リズムやトップ、フィニッシュなど、全体を常にイメージしています。そのほうがシンプルで迷うこともありません」

GD 昨年6月、高校3年生で日本女子アマチュア選手権を制覇。4打差からの大逆転でしたね。

尾関 首位と差があったので優勝は難しいと思っていました。だから最終日はトップ3を目指そうと。優勝できたのは本当に嬉しかったです。パットが決まってくれたのがいちばん良かったですね。

GD その勢いのまま2021年のプロテストで一発合格。しかもトップ通過でした。

尾関 実はトップ通過を狙っていました。選手みんなに「トップで通過するから」って言いまくっていたんです。わざと自分にプレッシャーをかけて、そのなかで有言実行しようと強い気持ちで臨みました。それを達成できたことは、大きな自信になりました。トップ合格だったので学校に行ったらみんなに「よくやった、おめでとう!」って言われて、本当に嬉しかったですね。

GD プロ資格を取得し、いよいよツアーデビューとなりますが、シーズンインはどうでしたか?

尾関 3月の卒業まで学校の用事とか、退寮の準備とか、すごく忙しくてツアーに向けた準備はほとんどできませんでした。だからトレーニングも練習も不十分なままシーズンインという感じでした。

GD 前半戦は予選落ちが続きましたが、ツアー初参戦の感想は?

尾関 アマチュアのときは、大きな試合があると、次の試合まで間が空くので、悪い部分の修正とか、気持ちの面での整理もつくのですが、プロの試合は毎週です。予選落ちして悔しい思いを引きずったまま、次の試合も戦っていたので、けっこうメンタルがやられていました。上手くコントロールできませんでしたね。

「トップ通過を宣言することでプレッシャーをかけて戦いました」

「トップ通過という、プレッシャーを乗り越えられたことは自信になりました。プロテストの翌日、父からご褒美に犬を買ってもらって、とても嬉しかったです」

「大会2日前に替えた新しいクラブがハマったんです(笑)」

GD 「住友生命バイタリティレディス東海クラシック」でツアー初優勝。その勝因は?

尾関 いま考えるとクラブがハマったのかなって思います。大会2日前にウッドをすべて新しいクラブに替えたんです。前のクラブも気に入っていたのでギリギリまで悩みましたが、構えた感じがいいし、ボールの曲がりも抑えられていたのでイチかバチかで替えました。それが見事にハマりました。私はドローヒッターなのですが、左へのミスが多かったので、そこを新しいクラブでカバーできました。

GD 最終日、最終組は新世紀世代の山下美夢有、プラチナ世代の吉田優利と同組でしたが、一緒に回っていてどうでしたか?

尾関 2人とも複数回優勝を経験している選手なので、めちゃめちゃ勉強になりました。グリーンをどう狙っていくのかとか、ここでパットを決めてくるのかなど、参考になることばかりでした。緊張もしなかったですし、自分のプレーにも集中できたし、メンタル的にも楽しく回れたのが、勝因のひとつになったのかなと思います。

「構えた感じがよくて曲がり幅も少なくなった」

尾関は試合の2日前にドライバー、3W、5W、3UT、4UT、5UTのウッド系6本すべてを「スリクソンZXプロトタイプ」に替え、初優勝を飾った

GD 自分の武器となるショットを教えてください。

尾関 ショートパットです。小さいころから自宅のパターマットで練習していたのもありますが、グリーン上にいるのが好きなんです。練習グリーンも1~2時間は普通にいますし、パットはカップインするラインが無数にあるので練習していても楽しいんです。とくにライン読みは自信あります。調子がいいときは、そのラインにさえ打ち出せば、全部入る気がするくらいですから。住友生命のときも本調子ではなかったのですが、大事な場面でいいパットが決まってくれました。

GD 最終日の18番まで吉田選手と同スコアでしたが、どんな気持ちでしたか?

尾関 プレッシャーはありませんでした。(吉田)優利さんのセカンドは絶対チャンスにつけてくると思ったので、私はしっかり振り切ることだけを考えていました。結果として1.5mにつけられ、バーディを取ることができました。プラチナ世代の優利さんはテレビで見ていた憧れの選手です。そんな優利さんと一緒に優勝争いができたことは、すごく嬉しかったです。最終ホールはギャラリーもたくさんいて、久しぶりの光景で気持ち的に最高でした。

「最後のパットはラインのことしか考えていなかった」
最終日の18番ホール。1.5mにつけたウィニングパット。「最終日最終組は2回目でしたが、ギャラリーの声援が嬉しかった。優勝パットはラインしか考えていなかったですね」

GD 今季の目標にはツアー1勝とシード権獲得を掲げていましたが、すでに達成です。次なる目標はありますか?

尾関 直近の目標は米ツアー共催の「TOTOジャパンクラシック」の出場権です。将来的にいえば、メルセデスランク1位が目標です。4年以内に達成したいと考えています。まずは国内ツアーです。その後、米ツアーなども考えていきたいと思っています。

GD 前週のメジャー「日本女子プロ」で、プロテスト同期で19歳の川﨑春花が初優勝しました。その影響はありましたか?

尾関 とても刺激になりました。最終日のプレーはテレビで見たのですが、あのピン位置で64を出したのがすごいです。プレーぶりもすごく楽しそうで、少し羨ましかったですね。

GD 最後の質問です。将来の夢はありますか?

尾関 今はゴルフ人生を頑張るだけですが、女性としては結婚や出産など、幸せな家庭を築くことが夢です。ずっとゴルフしかしてきていないので、やったことのないことがしたいです。洋服を買ったり、オシャレしたり、友達と旅行したり。

週刊ゴルフダイジェスト2022年11月1日号より