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【さとうの目】Vol.272 小林伸太郎「地元・群馬の新規大会で攻めた36歳」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は小林伸太郎。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa

今回は先だって開催された新規大会「For The Players By The Players2022」について話したいと思います。JGTO主催、選手会共催で、最大の特徴は冠スポンサーがついていないことでしょう。成り立ちは、コロナ禍で試合が減った現状をなんとかしようと、JGTOがいくつもの企業を回ったことに始まります。そのうちのひとつが会場となった群馬のTHE RAYSUM でした。

同コースは、過去に日本プロも開催した名コース。普通の大会には興味はないようでしたが、一方で「世界に通じるいいコースにしたい」という強い思いがありました。そこでJGTOは提案します。試合のためにコースを無償提供してくれないか。そこでプレーした選手が、コースに対して意見や提案を行うことで、世界に通じるコースにアップデートしていきましょう、と。両者の思いは一致し、協賛という形で今後10年間、コースを無償提供していただくことになったのです。

大会名にある「Players」とは、出場する選手だけではありません。コース関係者、大会スタッフ、ボランティアの方々……未来に向かうすべての人を指したものです。大会はポイント制のステーブルフォードで行われましたが、ボギーを恐れず、バーディを取りにいく攻撃的で前向きな姿勢を見せることができたと思います。


さて、試合は36歳の小林伸太郎選手が、地元・群馬で嬉しい初優勝を飾りました。04年、佐野日大高3年のときに日本ジュニアを、東北福祉大3年の07年には日本アマを制した、アマチュア時代は全国区の選手でした。プロ転向は09年、すぐに頭角を現すかと思いきや、初シードは15年と7年もの時間がかかりました。

飛距離は出るし、ショットも上手い選手ですが、どうにも押しが弱いのがこれまでの印象。最終日を最終組で回った、全英オープンの出場権がかかったミズノオープンで、ボクはラウンドレポーターにつきましたが、彼のゴルフは消極的に映りました。それは解説の青木功プロも同じだったようで、試合後、「小林のパットには入れてやるという気持ちが見えない。入ったらいいな、という打ち方だ」と言っていました。

その言葉で覚醒したのでしょうか。先の日本プロの練習場で話をする機会があり「青木さんの言葉で、見えなかったものが少し見えてきました」と言っていました。果して本大会では、ルールに“乗って”、果敢にバーディを狙いにいく積極的なゴルフを見せてくれました。

営業に飛び回り、ディレクターとして本大会を作り上げた田島創志も群馬出身。群馬で最後のトーナメントが開かれたのは、優勝した小林選手がプロ転向する前年の08年、このコースで開催された日本プロ。名選手を輩出してきた群馬だけに、今回の優勝が群馬のジュニアに刺激を与えたことは間違いありません。これも新規大会が目指す未来でもあります。

「元々強く、実績のある選手。その実直な人柄から、実に21社のスポンサーがついており、多くのファンが応援にかけつけていました。ファンや地元声援がどれだけ力になるか。改めて思い知らされた勝利です」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2022年11月1日号より