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【世界基準を追いかけろ!】Vol.107 選手間の“格差”が競争力を生む!? 知られざるジュニアの“契約”事情

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回はジュニアゴルファーのモニター事情とモチベーションの関係について、自身の経験をもとに話してくれた。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 以前も紹介しましたが、ABEMAツアーで優勝した髙宮千聖君(※1)はコーチの黒宮さんから見て、どういう選手ですか。

黒宮 ジュニアで成績が伸びる子は、(1)真面目(2)努力をする才能がある(3)高い身体能力といった特性を持っていますが、髙宮は本当に真面目ですね。

GD 福井工大附属には、そうした特性を持った選手がほかにもいますか。

黒宮 中田彩夏(さやか)という子は、この3つの全てが当てはまる選手です。お兄さんが星稜高校の4番バッターで、彼女もDNA的に高い身体能力を持っています。

GD ツアーに出た経験は。

黒宮 まだ、そういうレベルではないです。でも、全国大会に行けたらクラブメーカーの担当者を紹介すると言ったら、すごく努力をする子で、今年全国に行ったんですよ。

X “人参”効果ですね。

黒宮 批判もあるでしょうけど、今のジュニアのゴルフ業界で一番足りないものは差別化だと思うんですよ。僕らの時代は、成績上位の選手は着ているウェアやシューズで分かったんです。当時は、フットジョイのシューズを履いて、タイトリストのキャップをかぶるのが一番のステータスで、ジュニアゴルファーたちはそのモニター契約(※2)を獲得できるように必死に頑張った。

X 先ほどの中田さんのように、真面目で努力家という選手には、そういうモチベーションを与えるのはイイことですよね。

GD 昔のモニターはどういう内容だったんですか。


黒宮 モニター契約はS、A、B、Cのランク分けがありました。

目澤 あるメーカーは、スコアで60台かアンダーパーを出したらシューズ1足。逆にスコア75以上はマイナス1足でした。

GD そういうのがモチベーションになっていたわけですか。

黒宮 凄いモチベーションですよ。学生時分から、ちゃんとした契約書が届き、自分に対する評価に相当する物が送られてくるという、あれはたまらなく嬉しかったですね。

GD 先ほど黒宮さんが、批判の話をしましたが、学生がそういう厚遇を受けるのはよろしくないという意見もあると思います。

黒宮 トップ選手は得られた待遇を維持しようと努力もするんですよ。その危機感とか、良い意味でのプレッシャーは、プロゴルファーに近い経験をするわけです。成績が出なくてSランクからAやBランクに落ちると、いつも同じウェアを着て、汚れたシューズを履き続けたり、傷付いたボールを連続して使うとか。

目澤 見た目で分かりましたね。

GD 黒宮さんは当時、Sランクだったんですか。

黒宮 はい。中学3年時まではあるメーカーのモニターだったんですが、Sランクは削り出しのウェッジが貰えたんです。全中(全国中学ゴルフ選手権)で英樹(松山英樹)と回ったんですが、当時、英樹はBランクで、普通のウェッジだったので、メチャメチャ羨ましがっていました。そういう時代が、一瞬だけあったんですよ(笑)。

(※1)2003年2月3日生まれ。熊本県出身。福井工業大学。2022年「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIPCHALLENGE in FUKUI」で、史上6人目となる下部ツアーでのアマチュア優勝を果たした。現在はプロ転向 (※2)モニターとは、「手腕や名声のあるアマチュアゴルファーは、広告に一切関与しないことを条件に、メーカーなどから用具を受け取ることができる」というもの。メーカーとアマチュアゴルァーとの間で結ばれる『モニター契約』における上限は年間クラブ1セット、ボール24ダースいう規定があった。しかし2022年1月1日より、新「アマチュア資格規則」が発効し、すべてのスポンサー関連の制限が廃止されることとなった

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに。2022年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月18日号より