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【さとうの目】Vol.270 岩田寛「変わらないスゴさ」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は、41歳のいぶし銀・岩田寛。

PHOTO/Tadashi Anezaki

8月のセガサミーカップで、昨年の中日クラウンズ以来のツアー4勝目を挙げたのは岩田寛。実は41歳の寛の優勝は、世界的に見ても実にレアな優勝でした。というのも今年のPGAツアーでも欧州ツアーでも、40代の優勝は米欧共催のバラクーダ選手権のチェズ・リービー(40歳)だけ。現時点でアジアンツアーでは一人もいません。日本ツアーを見渡しても、寛に次ぐ年長優勝はミズノオープンで30歳になったばかりのスコット・ビンセントで、残る優勝者はすべて20代です。

先日のパナソニックオープンで蟬川泰果選手がツアー史上6人目のアマチュア優勝を果たしたように、若手の大躍進は世界的なトレンドです。そうした流れのなかでの寛の世界最年長優勝は、1勝以上の価値があるとボクは思います。

寛の特徴をひと言で表せば“変わらないスゴさ”。体型も飛距離も、天才的なショートゲームも。2ボールパターで打ったらすぐに歩き出すパッティング、成功しても薄いリアクションや失敗すると誰の目にも明らかな落胆ぶり……年齢を重ねれば良くも悪くも多くの人が丸くなっていくものですが、その戦いぶりも雰囲気もデビュー以来、あまり変わらないのは寛くらいだと思います。


その変わらぬ寛らしさのなかに、今なお抱き続ける海外挑戦への熱き思いがあります。昨年10月のZOZOチャンピオンシップで初日トップに立ち、PGAで戦っている嬉しそうなあのときの表情は忘れられません。

また、寛はセントアンドリュースのウェア契約をしているので、今年の全英に行きたい思いも強かったと聞きました。

今シーズンの寛はあと一歩のところでメジャー出場を逃しています。春先の関西オープン5位、中日クラウンズは3位で、どちらか優勝していれば世界ランキング100位以内で全米プロに出られたはず。全英の出場権のかかったダイヤモンドカップでは、72ホール目に短いパットを外して今平周吾に優勝を譲ります。あれを入れていたとしてもプレーオフで勝てた保証はありませんが、あと一歩のところでセントアンドリュースへの道を逃しました。さらにミズノオープン開催週の月曜日に開かれた全米オープンの予選会では、36ホール戦った末、プレーオフで敗れ、3人に与えられる出場権を得られませんでした。 

日本プロで寛と話す機会がありました。そこで、もしLIVゴルフから誘いがあったらと話を振ると、「PGAに行きたいからボクは行きません」とキッパリ。ここでもブレないところが寛らしい。

メジャーにあと一歩というのは確かに残念でしたが、あと一歩の悔しさが、さらに海外挑戦への思いを強くし、大きな目標となっている可能性も。ゴルフも少しずつ改良を加え進化しているのが、40代になっても第一線で活躍できている要因。日本開催のZOZOチャンピオンシップでの活躍はもちろん、秋の活躍次第では来季のメジャーやPGAへの道がさらに開けるはず。期待しましょう。

「41歳になっても平均飛距離は296ヤードで、ランク14位(9月26日現在)。PGAでは飛ぶほうではないにしても、十分に戦える飛距離。美しいスウィングと天才的なショートゲームは今も健在です」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月18日号より