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30代女子プロ本音トーク<後編>菊地絵理香×若林舞衣子「ゴルフに飽きることはない。単純に、上手くなりたい」

若手の活躍が目立つ女子ゴルフ界。ベテランと呼ばれるようになったプロたちも多くを経験し、人生の選択をし、進化し続けている。そして今回、30歳以上の女子プロが自ら輝くための新しい大会、「KURE×LADY GO CUP」が創設された。後編では、大会に出場した若林舞衣子と菊地絵理香に、30代を過ぎての変化や今後の目標について話を聞いていく。

PHOTO/Shinji Osawa THANKS/取手国際GC

若林舞衣子(左)……88年生まれ、新潟県出身。開志学園高校卒業後、07年プロ入り。ツアー4勝。ママプロとして昨年優勝!「いつか息子と一緒にゴルフがしたいですね」
菊地絵理香(右)……88年生まれ、北海道出身。東北高校卒業後、08年プロ入り。ツアー5勝。19年の結婚後に2勝!「自分が9割、でも1割くらいは主人のほうを見ています(笑)」

>>前編はこちら

――結婚、出産、環境が変わっても勝利を挙げた菊地と若林。今の思いを聞いた。

菊地 20代半ばまでは将来に対しての不安はあまりなくて、自分がそれなりに稼げていれば大丈夫だと思ってて。でも30代が目前になり、自分の調子も下がったり、周りの方々にも「30になると引退も近づくよね」と言われると……。

若林 いやいや、まだ早い(笑)。

菊地 それに反応しちゃう自分もいて。実際ツアーに残っていくのは厳しい部分もあるし、ずっと稼げるわけでもないと考え始めて。だから、こういう試合を作ってもらえるのは、人生設計やゴルフへの取り組み方に対して、視野が広がり、考え方が変わるきっかけにもなる。若い選手たちもいずれは経験する感覚だと思います。

若林 本当に、20代のときは不安なんてなかったし、ずっとこの世界で生きていくと思っていたけど、調子がいい悪いの浮き沈みもあって安定している仕事ではないから。それにゴルフの世界から退いた人生のほうが長いんですよね。でもなるべく長く試合は出たいから。

菊地 出たい(笑)。

若林 レギュラーでずっと頑張りたいけど保証はない。こういう試合があるのは一つの希望です。何試合にも増えるといいなと。

菊地 舞衣子は出産も経験してツアーに戻ってきて、しかも優勝した。本当にとんでもなくすごいことだと思います。今までそういう人が少なかったのは(20年ぶり6人目)、それだけ難しいことなんですよ。普通に試合に出るのも難しいし、皆より絶対的に自分にかける時間はない。でも彼女の存在はすごく大きいと思うんです。若い選手たちにも希望になるし、もちろん私にもすごく励みになって頑張ろうという気になります。


「試合に臨む姿勢は変えない」

「根本的に直したいショートゲーム。後半戦はそれをしっかりやりたいです」(若林)

若林 エリカだって優勝してるじゃん! でも私の狙いは、私にできるんだったら「自分にもできる!」と思ってもらうこと。周りのサポート体制は人それぞれ違うと思うので、どんな環境の人でも戻れる環境や制度作りは必要になってくる。私は姉が協力してくれたり恵まれているけど、そういう人ばかりではない。天秤にかけなくてもいいようになればいい。ツアーでも託児所が増えてきています。私たちがもっと発信して、さらに増えたらいいと思います。

菊地 それにしても、周りから女子プロは結婚が遅いとか、結婚すると実力が下がるとか、当たり前に思われる感じは嫌だった。

若林 わかる。周りの目はやっぱり気になるよね。彼氏が来たらダメだったとか、結婚したらダメじゃんとか、周りに思われたくない。でも、勝手に気にしていたのかも。

菊地 何かもう浮かれてるって思われてるんじゃないかと。

若林 でも、それが励みになって、言われないように頑張ろうというのもある。でも本当はそんなこと気にする必要ないよね。

今の若い選手は
「見てください!」という感じが出ている

菊地 若い選手はあまり気にしないかな。ゴルフも1年目は勉強だという意識はない感じ。出るからには5年先輩でも10年先輩でも関係ないと。いい意味で謙虚さがない。でも勝負の世界では絶対に必要なこと。それに私たちの時代なら「ビッグマウス」と言われていたような言葉も、今はすんなり受け入れられる時代だとも思います。

若林 そういう感じはあったね。

菊地 今の若い選手は勝負師。口にも出るし行動力もある。技術的にも最初から総合力の円が大きいです。伸びしろもあるから、その円がどんどん大きくなる。もっともっと活躍すると思います。

若林 自分を信じ切れるのがすごい。自信があるのが強みかもしれない。技術も、ただ飛ぶだけじゃない。(西村)優菜なんかは飛距離は私たちと変わらないけど上手い。皆、練習もトレーニングもしているし。生活がゴルフ一色です。

菊地 私たちも昔はそうだったね。

若林 私たちの頃は海外挑戦も少なかった。思ってはいたけど行動できなかった。それもすごい。

菊地 私ね、見られるのがあまり得意じゃないんです。

若林 でも「エリカ様!」って言われているよね。

菊地 それは無視してても大丈夫。わかって応援してくれてます。

若林 冷たくされるのが好きなのかも(笑)。

菊地 若い選手は「見てください!」という感じが持てている。

若林 それがスター性だよね。

菊地 うらやましい。プロゴルファーに向いてるなって思う。私なんかカメラが来たらずっと下を向いているのに(笑)。

若林 私たちはとにかく一生懸命やろう。でも私、飛距離は伸びましたね、確実に。

菊地 逆に怖い、何でって(笑)。

若林 (一ノ瀬)優希も伸びたと言ってたし、出産は関係あるのかな。トレーニングは前のほうができたけど、やっぱり力の使い方というか、適度に抜けるようになったのかもしれない。でも、ゴルフってメンタルがほぼすべてじゃない。そこは変わらないかな。

菊地 確かにそうだ。でも私はもうボロボロ(笑)。打たれ弱いから。

若林 いや、強いよ!

菊地 鈍感になっている部分はあるかな。5年くらい前はもっとこんなふうにできたなということに、今は反応しづらくなったり。

若林 それ、ゴルフに関して?

菊地 そう。ショット。細かいところがもっと繊細だった。でも逆に繊細じゃなくなって、よくなった部分もあります。

若林 私はあまりミスを気にしなくなった。ミスを嫌がる動作をして、それが逆のミスにつながるときがあったけど、今はミスが怖くなくなり思い切り動けるようになった。何年もやってくると自分を知れます。こういうときはこうだと傾向と対策みたいなのはわかる。

菊地 そうだね。練習量は減ってます。トレーニング量は減ってないけど、疲れも取れにくくなっているのであまり無理せず休みも入れる。あとは一応結婚したので、自分のゴルフが一番ですけど、独身のときより主人のほうも少し見ていないといけないというのはあるから(笑)。でもそれがマイナスと考えたことはないです。

若林 お互い、パートナーの理解はあるよね。

菊地 理解はあるけど、協力的ではないです(笑)。

若林 旦那さんがキャディでお互い個人事業主という感じだから。うちはサラリーマンで全くゴルフを知らなかった人なので、協力せざるを得ない状況になっている。

菊地 でもまあ、心強い存在です。

若林 1人でいるより将来の不安は減ったかな。

「ゴルフが好き。
単純に上手くなりたい」

菊地 でも私たち、ゴルフしかやってきていないので不安しかないよね。ありがたいことにプロアマでもすごい方とお会いできる機会があって、私がこの職業だからリスペクトしてくれたり、気を使って話をしてくださいますけど……。

若林 ゴルフがなくなったら普通の社会で生きていけるのかなって。私はまだずっと試合に出続けられてきたので、出られなくなるときのことが未知の世界です。

菊地 私はプロ入りしてQTを4回も失敗しているので、ステップ・アップ・ツアーには戻りたくないという一心で頑張っている部分もある。あそこの苦しさもわかるし、這い上がるのも本当に大変だから、常に危機感はある。

若林 私は本当にゴルフしかない。もしシード落ちしてステップに出る試合があれば出たいという気持ちはあります。ただ、妥協はしたくない。どこでも全力でいきたい。

菊地 そう、全力で。

若林 ステップでは、あまり練習や練習ラウンドをしないと聞くこともあるんです。そういうのは嫌だなって。常に上を見ていたいです。プライドではなくて、そういう気持ちがないと楽しくない。

菊地 私もそうかもしれない。準備はきちんとして出たい。

若林 出るからには優勝目指して。これくらいでいいと思ったらそれまで。今年私は前半で体調を崩して3週連続休んだので、後半頑張らないと!

菊地 私はもっと優勝争いをしたい。そこでつかめるものもあるし、発見もある。でも私も最近子どもがほしいと思うようになりました。

「緊張感もプレッシャーも好き」

「今も充実しているけど、優勝争いをしている自分が一番生き生きしています」(菊地)

若林 当然、その時期その時期で変わるよね。でもそれがタイミングだし、私も漠然とは、息子に弟妹がいたらいいなと思うし。

菊地 子どももゴルフもという感じだから。でも子どもに恵まれたらまた感覚は変わるのかなと思います。それにしても皆、復帰が早いし、どんな体力してるのって。

若林 何もしないと本当に暇なの(笑)。でも女子プロって忙しいのが好きだし、きっと慣れてくる。私はこの世界で戦っていきたい気持ちが強いので、頑張るのみ。2人目はタイミングだし授かりもの。そこは流れに身を任せて今は頑張ります。私たち、やっぱりゴルフが好きだよね。勝負や優勝争いもだけど、単純に上手くなりたい。

菊地 皆、ゴルフに飽きることはないと思います。

若林 だって満足いくゴルフってあんまりないもんね。

菊地 そうそう。

若林 ああ、またダメだったって(笑)。これは一生続くんだね。

7月に開催された「KURE×LADY GO CUP」は、女子プロ自ら公式インスタグラムを通して様々な情報を発信する「LADY GO」が主催。協賛の呉工業のメイリン・ウー・クレメンツ社長は「私自身、30代で結婚・出産し、育児をしながら会社の経営もしてきた。アメリカでは育児と仕事の両立は普通で、社会でも大変重要な存在なのです」。女子プロたちは真剣勝負を楽しんだ。「今回は無観客で残念。今後もっと発信するうえで、どうしたら楽しんで見てもらえるか。いろんな形の試合、マッチプレーなんかも面白いですよね」(原)「数年ぶりに高校の同級生の佐藤のぞみと回った。お子さんが生まれて2年、こんないいプレーができるんだと。ワクワク感で若い頃のようになれました。レジェンズツアーも発展してほしいですけど、そこまで待てないという現状もある。年に1、2回でもこんな試合があれば選択肢の一つになります」(有村)

【出場選手の声】
「私はあまり変化を感じず鈍感なのかも。このままいきます!」(木戸愛)
「体の変化はある。体重を増やさないようにしてます」(笠りつ子)
「結婚してだいぶ経つけど楽しくゴルフも上手くなってるかな」(藤田さいき)
「3年ぶりの試合。皆心配してくれたけど、緊張感もよかった」(佐藤のぞみ)
「皆に会えるのもうれしい。続けてほしいですね」(下村真由美)
「こういう道しるべがあるのはいい。体の面はお金をかけることも大事」(佐藤靖子)

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月6日号より