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【ゴルフの、ほんとう】Vol.729「無理にパー72にこだわらなくても良いと思うのは私だけでしょうか」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


日本の男子ツアーを見ていて感じることは、コースが短いということです。PGAツアーのようにモンスターコースをロングショットで攻めるような光景をあまり目にしませんが、今後、日本のコースは変わっていくのでしょうか。(匿名希望) 


毎年マスターズの舞台となるオーガスタナショナルが、コースの全長を延ばしてきています。

そこにはタイガー・ウッズ選手の登場による影響が少なからずあるかもしれません。

というのも、タイガーは、1997年にプロとして初めて出場したマスターズで、18アンダーで2位に12打差をつけ史上最年少の初優勝を飾ります。

これを受け、オーガスタナショナルは1999年に6925ヤードだった全長を60ヤード延伸。2年後の2001年にタイガーがマスターズ2勝目を挙げると、翌年には大改造を行って7270ヤードに。

その後もオーガスタ側は「タイガープルーフ(タイガー対策)」と呼ばれる細かい改造を繰り返すものの、タイガーは2019年に5回目の優勝を果たし、今年はとうとう7510ヤードの長さにまで達しました。

タイガーの登場以降、世界中からパワープレーヤーが続々と現れることになり、今では400ヤード近いドライバーショットが出ることもあります。


プレーヤーのアスリート化に加えて、ボールやクラブの性能が進化して飛距離の伸長は今も持続しているのが実情。

当然、オーガスタナショナルでなくても、競技の舞台となるコースはそれなりの対応をしてきたと思います。

日本の女子プロゴルフ界も例外ではありません。先日のトーナメントでは、菊地絵理香選手が4日間通算20アンダーで快勝しました。

会場となったコースは6560ヤード・パー72でしたが、それも菊地選手だけが飛び抜けて走ったわけではなく、後続の選手も1打差で最後まで競り合うという高いレベルの優勝争いでの決着でした。

国内の女子の試合でも、全長6500ヤード前後のコースなら、優勝スコアは20アンダーに達してもおかしくない時代になっているわけです。

PGAツアーはパワー全盛の勢いで、コースがどんどん長くなっています。

今後はもうパー72でやろうとするなら、8000ヤードのコースが必要になるかもしれない、なんて気もします。

そういえば、2018・19年に茨城県のザ・ロイヤルGCで開催された国内男子のミズノオープンは、8000ヤードを超える史上最長のコースセッティングで話題を呼びました。

では、8000ヤードのコースが設定できなければどうするのか。

パーの打数を少なくするとか、コース内のトラップを増やし、グリーンを硬く締めるというセッティングにするなどなど。

パー72にはこだわらずに、パー71とか70というように、コースの長さに合わせたパー打数の設定をするトーナメントが増えても不思議には思いません。

その昔スコットランドの海岸地方で、羊飼いたちが小さなボールを棒で打ち、狙ったウサギの巣穴に転がし入れるというゲームを発明した、というのがゴルフの発祥とも言われています。

それから数百年。

ボールもクラブも、プレーヤーも、それぞれに進化して、ゴルフは似ても似つかない別のものになりました。

なかでもわずかこの数十年間に起こったゴルフギアの革命によって、それまでのゲームとは違うスポーツに変わってきました。

歴史を重んじ伝統を守れと主張する人もいるでしょうが、すでにゴルフは、長い歴史の中で大きな変化を繰り返してきているのも事実です。

飛距離の差は何にも増して大きいです。

距離の長さは、やはりホールの難易度につながってきます。

そう考えると、技のみでパワーに対抗するという構図が成り立ちにくくなっている?

それが正しいのか正しくないのかは、正直わたしにはわかりません。

ただ、スコアを追求するプレーヤーが、是が非でも飛ばさなくちゃと躍起になればなるほど、ボールが曲がりやすくなるのも、ゴルファーならわかりますよね。

ゴルフはこの先、どう進化するにせよ、まだまだもっともっと面白くなると確信していますが、みなさんはどう思われますか?

「日本の国土を考えると難しい面がありますから、
臨機応変に対応すればいいと思います」(PHOTO/Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2022年8月16日号より

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