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【ゴルフの、ほんとう】Vol.728「急激な成長や成果を求めるから焦りが生まれるんです」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


昔からのスポーツの名言として「勝った試合よりも、負けた試合から学ぶものは多い」というのがあります。失敗から学ぶとも言いますが、成功から学ぶものはないのでしょうか?(匿名希望・HC12) 


「失敗は成功のもと」という言葉があります。

似たような言い回しとして「失敗のないところに成功はない」「失敗は現在進行中の成功」や発明王エジソンの言葉として「Failure is the mother of success」という格言もありますね。

この名言・格言はスポーツに限らず人気があるようで、書店には「失敗学のススメ」というような書籍がズラリと並んでいるのを見かけたこともあります。

成功のために、失敗を恐れてはいけないという考え方は基本ということなのでしょう。

確かに、仕事やスポーツの専門的スキルをマスターしようとしている場面で、初めから難なくできてしまうことは稀で、誰もがすぐには上手くいかないことがほとんどです。
ゴルフも同じで上達曲線も右肩上がりの一直線というわけにはいきません。


少し階段を上がったと思うと、どうにも停滞する期間が訪れ、ようやく少しレベルアップすると、また同じような停滞期が巡ってくるというような、らせん状を描いて上昇していくのが普通だと思います。

練習を継続するなかにも、小さな失敗が繰り返されていて、いつしか課題をクリアするちょっとした成功が次なるステップへと導いていきます。

つまり、前進させるためには、多くの失敗という名の課題や反省材料を得たエネルギーが原動力になるのです。

ミスや失敗を、間違いを犯したと認識する必要はないと、わたしは思います。

わたし自身も多くの失敗を重ねてきた末、今の自分があるのであり、その経験がわたしを鍛え育ててくれたことを否定することはできません。

確かにわたしはメジャータイトルに挑戦して何度か近くまでは迫ったけれど届かなかった。
でも、それをミスとか生涯の悔いとは思っていません。
人生の途上で味わったささいなミスを含めて、わたしはそのひとつひとつの事を失敗だとは考えてはいません。
失敗と呼ぶかどうかの問題でもありません。

偉大な選手やレジェンドと言われるようなプレーヤーが「負けた試合からこそ学ぶものが多かった」ということを口にします。

すべてが上手くいった試合、圧倒的な勝利を収めた素晴らしい試合内容からはミスや課題を見つけ出すことが難しく、むしろ勝った試合はあまり参考にしにくいかもしれません。
だからといって、勝った試合からは何も得られないかというと、そんなことはありません。

勝つことは何よりの自信になりますし、成長を続けていくための最高の収穫です。

人が成長するにあたり、大きならせん状の上昇曲線の道を歩いて上っていくと想像してみてください。
人や環境によっては、停滞気味にゆっくりと回り道をする部分に差しかかるときもあるし、一足飛びに急成長する坂もある。
時間をかけてじっくりと足元を見回すには急行ではなく、各駅停車のほうが適していると考えることもできそうです。

余談ですが、わたしの自宅は特急ではなく各駅停車が停まる駅です。
そこで先日、仕事の出先から帰ってきて列車を降りたあとに忘れ物をしたことに気がつきました。
改札を出たところで、あれっスマホがない! 焦って駅員さんにもう一度改札を通してもらったけど、実はそこまで慌てることはなかったのです。
特急の通過待ちのため多少停車時間があって、スマホを回収することができました。
のんびり鈍行列車にもいいところがあるでしょう(笑)。

発明王エジソンが、白熱電球のフィラメント素材を探して1万回の実験を繰り返し、やっとのことで日本産の竹が最適だと発見したそうですが
「わたしは失敗などしていない。ほかの素材では電球は光らないという“発見”を1万回繰り返してきただけだ」
といったそうです。

失敗を失敗と考えず、成功へのプロセスだと考える。
そのくらいの気持ちがあれば、ミスがミスでなくなるかもしれませんね!

「やっぱり亀さんのように日々の努力が大切です。私はウサギ年ですけど(笑)」(PHOTO/Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2022年8月9日号より

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