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【スウィング研究】全米プロ、全米OP連続2位のザラトリス「前傾角と右ひじのポジションが一切変わらない」

全米プロではプレーオフの末に2位、全米オープンでも1打差の2位タイなど、メジャーでたびたび優勝争いを繰り広げるウィル・ザラトリス。鋭い眼光、切れ味鋭いショット、アームロックスタイルのパッティング……なにかと気になる25歳の人柄、スウィング、プレースタイルにフォーカスした。

PHOTO/Blue Sky Photos、KJR

ウィル・ザラトリス(25)
1996年8月生まれ。サンフランシスコ出身。2014年に全米ジュニア優勝、名門・ウェイクフォレスト大に進学。4年生の時にプロ転向。マッケンジーツアーからスタートし、2020年の全米オープン6位タイなどで、翌年PGAツアーのテンポラリーメンバーに昇格、賞金ランク14位と躍進。今季賞金ランクは6位(6月30日時点)

プロで戦うため心理学を専攻

ウェイクフォレスト大のゴルフ部で、後輩だった青島賢吾さんに学生時代の様子を聞いた。

「全米ジュニアを優勝して、アーノルド・パーマー・スカラーシップで入学していました。当時すでにプロへ目標設定していて、週末も友達と遊ぶことなく、テキサスにいるコーチのもとに練習しに行っていました。専攻は心理学で成績もよかったのですが、『それもすべてゴルフのため』と言っていました。ゴルフ部のエースでしたが、おごらずに人柄もおだやか。それ以上に“余裕”を感じました。入学当初、僕の両親が学校を訪れ環境を見学していた時に練習場にたまたまウィルがいて、僕の両親にわざわざ挨拶しに来てくれました。『ウェイクフォレストは学業もゴルフも最高の環境です。もし彼に何かあっても、自分がすべてサポートするので、安心して日本に帰ってください』と言ってくれたんです。本当に頼れる先輩でした」

右ひじと右腰の連動が秀逸


中継解説を担当し、現地でデビューからザラトリスを見てきたレックス倉本に技術や特徴について語ってもらった。

「昨年まではひょろひょろとしていましたが、このオフは力士のように就寝前と朝の起床直後に食事を摂るようにして空腹の時間をなくして体重を増量。さらに45インチだったドライバーを46インチに変更、今季は大幅に飛距離が伸びました。昨年までと同様に正確性はそのままに飛距離が伸びたことが、大活躍につながっていると思います。

高身長(188センチ)のアドバンテージを生かしながら、バックスウィングでは左肩、左腰の動きを抑えることでスウィングアークを安定させつつ、背中を中心に捻転力を高めています。ダウンスウィングからは右ひじを右わき腹にいち早くつけて腰を回転させ、インパクトギリギリまでヘッドを加速させていきます。右ひじと右腰のコネクトが一定で、右ひじの角度も変わらない、ここが彼の最大の長所であり、特徴だと思います。後方からの連続写真を見ると、ダウンスウィングからインパクトまで前傾角度と右ひじの位置が変わらず、右ひじを中心に腰が左に回転していくことで、ヘッドを加速させながらもフェースをコントロールしています。このように手と腰の距離が縮まらなければ、ボールは曲がらないのですが、トッププロでも常に維持するのは難しい。しかし、彼は全番手でこれをやってのけます。それゆえに、タフなコースで力を出しやすく、メジャーでも成績が良いのでしょう」

「体全体でスウィングアークをコントロールしているのでスウィングがブレない。ダウンスウィングからインパクトまで右ひじの角度とポジションが一定。これにより腰の回転がスムーズになり最後までクラブが加速します」(レックス)

独自ルーティンで苦手なパットを克服

シャツの一部を左わきに絞り込むようにして左サイドを締める独特のルーティン

アドレスに入る前、左わきにシャツを絞り込む独自ルーティンを貫くパッティングもレックス倉本に解説してもらった。

「3メートル以上の長いパッティングに関しては手が動くそうですが、短いパッティングは怪しいストロークが多い。スタッツを見ても、お世辞にも得意とは言えないパッティング。それゆえに工夫をすることで弱点を補おうとしています。左わきを絞ってアドレスに入り、左のアーム(腕)を可能な限りロック。本人いわく『調子が悪くなると右側に傾くクセがある』ので、それをなくすためにも左足の上に重心が来るようにセットして、固めた左サイドを中心にストロークしているのです。春先、ザ・プレーヤーズ選手権前まではインサイドに引くストロークでしたが調子が悪く、その後アウトサイド気味に引くようにして復調。苦労していますが、この努力がいつか優勝に結びつくはずです」

ややアウトサイドへテークバック

春先にテークバックの軌道を変更したことでパッティングの調子を取り戻し、予選通過した6戦すべてでトップ10入りなど、結果となって表れている

週刊ゴルフダイジェスト2022年7月19日号より