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「驚くほどお金がかからない」「思考もスウィングも合理的に」先駆者が語る米ゴルフ留学のメリット

高校を卒業し、プロ転向して、国内ツアーで鎬を削り、ゆくゆくは海外へ…。日本のツアー界では王道の流れだが、海外で活躍することを目指すなら、アメリカの大学へのゴルフ留学という選択肢もある。そこで、留学経験を持つ2人の先駆者に、自身の経験や最新の留学事情について教えてもらった。

PHOTO/ご本人提供、Hiroyuki Okazawa、Tadashi Anezaki、Blue Sky Photos

>>“現役”留学生ゴルファーに聞いたアメリカの大学生活

「競争でふるいにかけられることが先々役立つ」

レックス倉本

66年広島出身。イーストテネシー州立大学在学中、オールアメリカン選出、日本アマ優勝。91年日本のプロテストに合格。現在解説者・レポーターとして活躍

「最近いろんな子がこちらに来ていると聞きます。IMGが日本の中高生の勧誘を始めたのと、日本にエージェントができ始めて橋渡しをする人も増えたのが大きいのでは」と話すのはアメリカ在住30年を超えるレックス倉本。

「世界では何十年も前からエージェントが動いていてアジアの子も多い。ゴルフが発展している国で日本だけが残っていました。日本は自国で完結できるし、英語のハードルが高いのも理由でしょう」

女子選手の世話をすることも多いレックス。留学に関しては、

「環境はこれ以上ないくらい良い。ただ、日本は高卒の選手がすぐプロで活躍できます。その環境があればプロ入りも決して悪い判断ではないでしょうが、米LPGAは層が厚くレベルは高い。高卒でいきなり活躍できる選手の絶対数は少ない。先日、全米女子オープン後に高木優奈さんが遊びにきて、お母さんとも話をしていたら、アメリカの大学のシステムがわかっていたら、中学くらいから選択肢の1つにしたかったと言ってました」

世界で戦うには留学は間違いなく良い選択の1つだとレックス。


「システムがしっかりしていて、大学ゴルフ部という競争にポンと入りふるいにかけられ、なおかつ勉強もして成績も出す。勝ち上がれなくても競争したことや勉強が先々役立つと思うんです。もちろん、卒業後日本に帰ってもいいし、またアメリカに来てもいい。狭い視野じゃなくていろいろなオプションができますよね」

留学への近道は?

「エージェントに連絡をとって、自分の戦歴を送る。中学くらいからアンテナを張って、高1くらいから連絡を取り合うのがこちらの流れ。高校入学前後から交渉したらいい。スカラシップ(奨学金)があれば驚くほどアメリカの大学はお金がかからない。日本ジュニアで上位にいけるくらいの実力なら大丈夫。大学の数が多く、ゴルフ部で奨学金を出している大学も多い。超一流の大学にこだわらなければ道は開けます。編入もコーチの了承があれば1年後から、選手の判断で強い大学にも弱い大学にも行けます。高校から行く手もありますが、そこに奨学金はないからお金はそれなりにかかると思います」

フロリダのレックス宅に集うゴルファーたち。「(長野)美祈はどの大学にも行ける成績を残していましたが、手を上げるタイミングが遅くて1年越しに。でも結果、強いオレゴン大に行けた。すごく芯の強い子。努力家で。勉強は泣き泣きやっていました(笑)」

「米国はロジカルで合理的。スウィングにもつながる」

内藤雄士

69年東京生まれ。日大ゴルフ部3年時に米国にゴルフ留学し最新理論を学ぶ。帰国後、実家のハイランドセンターにラーニングGCを設立。その後もツアープロコーチ、解説者として幅広く活躍

大学時代にゴルフ留学した経験を持つ内藤雄士。自身の留学のきっかけは「家業の練習場を継ぐ以上、アメリカのゴルフを勉強しないのは時代遅れになるという感覚でした。行きたいモチベーションがあるときに行ってよかったと思います」

この経験が内藤のスウィング理論、レッスンのもとになっている。

「日本で本を読んだりプロに教わって勉強しても全然上手く覚えられなかった。言い回しが難しかったり感覚的です。留学してアメリカのコーチに習うようになり、スウィングを合理的に考えられるようになった。できるかできないかは別として、理論は難しくない、と」

これが、2019年から指導する米国育ちの大西魁斗に、すんなり受け入れらた理由かもしれないという。

「僕が感じるのは、魁斗は頭のなかが英語なんです。アメリカ人ってすごくロジカルで合理的、英語自体もそうですよね。だからすごく教えやすい。よく彼のスウィングは個性的だと言われますが、僕から見ると特別ではない。すごく柔らかく体を使うからあの見た目になりますが、合理的なんです」

アメリカで調子を崩し、コロナ禍、日本で内藤の指導を受け、再渡米後、調子が上がりカナダのマッケンジーツアーのQTを通過した大西。その後ABEMAツアーに推薦で出場し、いきなり優勝争い。そこからはトントン拍子。今年は日本のレギュラーツアーで10試合中トップ10が5回。優勝も近そうな大西を見て、「スウィング云々ではないですが、魁斗は8歳の、ABCDを全部言えない時期からずっとアメリカで1人で寮生活をしているからすごくしっかりしているし、自分の意志がある。魁斗は米ツアーに行くことしか考えてない。目標が日本のシード選手だと、24時間、365日、それを前提とした過ごし方になるけど、魁斗はどうしたらPGAツアーに1年でも早くいけるかを考えています。日本の選手はなかなかそうなりません。

留学がいいかはその子の性格にもよる。僕は日大ゴルフ部も経験して、同期の丸山茂樹と出会ったのは人生の宝。でも、アメリカは合っていました。全然干渉しないからすごく楽です。それに多くの国や人種、言語と触れるのは、頭もいろいろと使うことになる。プロゴルファーとして大成しなくても、選択肢が広がり、その後の人生に生きると思います」

「USC(南カルフォルニア大)は移動中の飛行機のなかでも勉強するそう。魁斗は一生分の勉強をしたとしか言いませんが、すごく寂しく大変な時期もあったはず。でも、優秀な成績で難関大学を卒業した。すばらしいですね」

週刊ゴルフダイジェスト2022年7月12日号より