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【わかったなんて言えません!】Vol.77 石坂友宏 #1「勝負どころ、攻めるべきか守るべきか」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今回からのゲストは、若手の注目株、石坂友宏。プロ入り1年目の一昨年から優勝争いをし、今季のシード権も獲得した22歳。優勝まであと一歩に迫った石坂が悔やんでいることとは?

TEXT/Yuzuru Hirayama PHOTO/Tadashi Anezaki

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”

ご指名/石坂友宏

1999年生まれ、神奈川県出身。19年プロ入り後、何度も優勝争いに絡み、昨季賞金ランク17位。今後の活躍が期待される若手。爽やかな笑顔も印象的

時松 石坂くんのこと、僕、実は顔と名前が一致していなかったんだよね。クラブハウスでめちゃめちゃいい挨拶してくれるから、顔は知っていて(笑)。

石坂 源蔵さん、選手会長でしたから。あの新人は挨拶もできないと言われないよう、しつこいぐらいに「おはようございますっ!」って(笑)。星野陸也さんからも、先輩方への挨拶はきっちりしろよ、と助言をいただいていました。朝のクラブハウスでは、ほとんどが先輩なので、挨拶しまくりです!

時松 自分もプロの試合に初めて出た頃、先輩方が怖かったなあ。僕は怖くないっしょ?

石坂 九州の先輩方は人見知りするとどなたかから聞いて、それだけにしゃきっとするというか……いえ、怖くないっす(笑)。

時松 言葉選んでるなぁ(笑)。一昨年のダンロップフェニックスで優勝争いをしたとき、「イシザカって知ってる?」とプロの間で話題になって。ああ、あの選手か、と顔と名前が一致して。

石坂 ありがとうございます! フェニックスでみなさんに顔と名前を覚えていただけてよかったです。そもそもあの試合は、子どもの頃からテレビで観て憧れていたので、出られるだけで嬉しかったんです。それがまさか優勝争いができるなんて、自分でもびっくりでした。

時松 デビューイヤーにしてフェニックスで2位になれたことは、プロとしてやっていけるという自信になった?

石坂 はい、フェニックスはプロ3試合目だったんですけど、その初日に66でまわれたことで(3位タイ)、やれるかなと。

時松 結果的にプレーオフで敗れての2位だったけど、相手は同じ現役大学生の金谷拓実くんで。勝ちたかった?

石坂 正直、プレーオフに入ったとき、勝つのは無理だろうなと思ってしまっている自分がいて。技術力は金谷さんのほうがかなり上ですし。ただ4ホール目で決着がついてしまった後に思ったのは、僕でもいける、そう信じて向かっていったほうがよかったのかなと。悔しさも少し出てきたんです。プレーオフの戦い方って、難しいですね。

時松 プレーオフでは僕のほうがホント負けているんで、助言なんてできないんだけど(笑)。どんな心境で臨めばベストなのか、いまだに答えは出ていない。でも、勝てなくてもいいや、でもないし、勝つぞ、でもないのかなと。勝つ! と気負った試合でいい結果だったことってない。一昨年の日本シリーズJTカップも、絶対勝つ! と思っていったんだけど、10位タイ(笑)。

石坂 なるほど。プロ2年目の昨年も、ダンロップ福島オープン(3位)と、マイナビチャンピオンシップ(2位タイ)でも優勝争いまではいけたんですけど、やっぱり勝ちきるまではいけなくて。プロの試合に勝つメンタルって、本当に難しいんだなと実感しました。特にマイナビではフェニックスの反省を生かして、勝つぞって強い気持ちを持って戦ったんですけど、浅地洋佑さんに2打届きませんでした。

時松 だけど、1年目でプレーオフとか、2年目で複数の試合で優勝争いに絡むとか、すごいことだと思うよ。僕の1、2年目に比べれば(笑)。

石坂 マイナビでは、最終日の15番ホール以降、バーディを狙っていこうとは思っていたんです。でもどこかで、落としたくないという気持ちも働いてしまって。あそこから1つでも伸ばしていこうという強い気持ちが必要だったのかなと。

時松 攻めの気持ちと、守りの気持ちね。

石坂 最終日の17番、僕も浅地さんも左にティーショットを曲げてしまって、優勝された浅地さんは、そこからグリーンを攻めてバーディでした。僕は狙えないなと思ってガードバンカーでいいやと。あわよくばチップインをとも思いましたけど、ボギーは嫌だからパーを取りにいって、その通りパー。そのときはパーで満足していたんですけど、勝てる人はどんなところからも勝負どころでは狙ってくるんだなとわかりました。

「勝てる人は、勝負どころで狙ってくるんですよね」(石坂)

時松 2年目にして、とてもいい経験をしているよね。そうした勝負どころでの心理が結果を左右するのが、ゴルフの難しさであり、面白さでもあるんだろうね。ところで、プロで活躍して、早速、車を買ったとか?

石坂 はい、ちょっと早いかなとも思ったんですけど、車が好きでフェニックスの賞金が大きかったので、ベンツAMG、スポーツタイプのCクラスを思いきって買っちゃいました!

時松 おおっ。

石坂 でも、中古ですけど。

時松 俺も2016年、23歳のときかな、レクサスを買ったのは。それ、今でも乗ってるよ。

石坂 大切に乗られているんですね。

時松 フェニックスで勝ったら、副賞がベンツだったのに!

石坂 あと一歩でしたね(笑)。

つづく

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月26日号より