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【さとうの目】Vol.240 キャメロン・スミス「オーガスタが得意な曲者オージー」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手はセントリートーナメントで優勝したキャメロン・スミス。

PHOTO/Tadashi Anezaki

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1月のセントリートーナメントで、PGA史上最大アンダーの34アンダーで優勝したキャメロン・スミス。試合はワールドランク1位のJ・ラームとの一騎打ちで、バーディ合戦を制しての優勝でした。思えば19年にロイヤルメルボルンで開催されたプレジデンツカップでは、シングルスでJ・トーマスを退け番狂わせ的な勝利をし、20年秋のマスターズでは、史上初の4日間60台を記録。大舞台に動じず、相手が大物だと本領を発揮する、ある意味“曲者的”な選手といっていいでしょう。

オーストラリア出身で、20歳になる13年にプロ転向。アジアンツアーからのスタートで、14年にはダイヤモンドカップで来日もしています。当時、ボクは解説の仕事を始めたばかりで「ジュニアのような童顔の子が、プロに交じって頑張っているなあ」という印象を抱きました。やがて歳を重ねるごとにワイルドになっていき、その風貌に合わせるようにスゴい選手になりました。


アジアンツアーでは、ルーキーイヤーで9試合参戦してトップ10に7回。賞金ランク5位でルーキー・オブ・ザ・イヤーに。欧州ツアーに行くのかなと思いきや、翌15年にはすぐにPGAに。環境と舞台が彼を成長させたのでしょう。15年の全米オープンでは4位に入り、17年のチューリッヒクラシックで初優勝を果たします。この試合はペアマッチ。スウェーデンのヨナス・ブリクストと組んでのチーム戦でしたが、まだあどけなさの残るスミスが子どものように泣きじゃくる姿が印象的でした。

実は18年のアーノルド・パーマー招待のプロアマで、ボクはスミスの組のアマチュアのキャディをしたことがあります。このとき、いろんな話をしたのですが、彼は超がつくほどのクルマ好き。とくに日産のGT-Rの爆音が大好きで、「ジャパニーズはクレージーなクルマを作るぜ」とはしゃいでいたのを思い出します。このとき、クルマと同じように熱く語ってくれたのが、マスターズへの思い。確かこの年この時点ではまだ出場権はありませんでしたが、その後すぐ2度目の出場をゲット。見事5位タイに入りました。

ワールドランクは現在9位(2月17日現在)ですが、順位を感じさせない安定感のなさ(笑)。飛距離のスタッツは平均的ですが、セントリーではラームを何度かアウトドライブすることもありました。近年は飛距離を追求しているからかスウィングがトップでクロスするようになりましたが、何より持ち味はグリーン周りとパット。とにかく強烈な上手さです。

また、オーガスタが得意な選手は、スミスのように曲げるのが好きな選手が多いように感じます。まして大舞台に強く、大物食い。おまけに性格は典型的なオージーで楽天的です。勢いがついたら手がつけられない爆発力は、もしや今年のマスターズで大活躍か……注目しておく必要はありそうです。

スウィングも肉体も改造!

「僕が見た18年と比べると、スウィングも肉体もかなり改善した印象。コンスタントに結果を出し続けているのは安定したショートゲームとパッティングがベースにあるからです」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月8日号より