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シーズン終盤の「プレーオフシリーズ」日本の男子ゴルフでも導入するのはアリ? ナシ?【山を動かす】

ゴルフにまつわるさまざまな問題に関し、読者や識者に率直な意見をぶつけてもらう連載「山を動かす」。PGAツアーではお馴染みになったプレーオフシリーズだが、シーズン終盤を盛り上げるため、日本の男子ツアーでも導入するというのは、アリ or ナシ? 識者やファンに意見を聞いた。

●PGAツアーのプレーオフは、アメフトなど人気のスポーツイベントとの兼ね合いで始めたシステム。以前のフォールシーズンはシード権争いがメインで、トップクラスの選手に気合いが入る試合ではありませんでした。そこでPGAツアーの1年間を盛り上げるため、ツアーチャンピオンシップに向けて賞金額を高くして、トップクラスのモチベーションを高めようとしたのがプレーオフシリーズです。こうしたシステムを日本のJGTOに当てはめようとするのは無理があります。日本の場合、秋口からのトーナメントは知名度もあり賞金も比較的高い、いわゆるビッグトーナメント。そこをわざわざプレーオフにする必要もありません。現実的ではないかもしれませんが、最初に沖縄シリーズがあって、次に九州シリーズ、四国シリーズとだんだんと北上して夏は北海道シリーズで、また南下するというのが、選手の負担も少ないし、コースコンディションもいい。そして最後は認知度も高いVISA太平洋、フェニックス、カシオ、日本シリーズで締めくくる。プレーオフシリーズなどを考えなくても、観光業や地方自治体などが協力できる枠組みを作ったり、トーナメント観戦でも会場周辺の観光やアクティビティを合わせる旅行スタイルを考えたり。現在の男子ツアーのスケジュールは余裕があるんですから、主催者としっかりと総合的に考えてほしいと思います。(内藤雄士/プロコーチ)

●プレーオフシリーズ、ぜひやるべきだと思います。今までのシステムでは、これまで以上のことは望めません。米ツアー、欧州ツアーでも10年前とは全く違っています。日本は置いてきぼりです。希望は谷原秀人が選手会長になったこと。彼は米ツアー、欧州ツアーも経験していて、変化を肌で感じていると思います。谷原会長のアイデア、手腕に期待したいですね。(佐渡充高/テレビ解説者)

●インターナショナルツアーと呼ばれるVISA太平洋、フェニックス、カシオと日本シリーズの4戦をプレーオフシリーズにすればいいのでは。VISA太平洋は賞金ランク上位100人、フェニックスは75人、カシオ50人で、最終戦の日本シリーズは30人が出場。最終戦は米ツアーのツアーチャンピオンシップ同様にランキングによってスタート時のスコアにハンディをつければいい。ただ心配なのは、男子ツアーは試合数が少なく、ランク下位の選手たちの稼げる機会が減ってしまうことだけど、そのぶん競争が激しくなるし、9月くらいからプレーオフ進出をかけた戦いでツアーも面白くなる。(40代男性・東京都)

日本のプロ野球ではクライマックスシリーズを導入して消化試合が減り、シリーズ終盤まで盛り上がるようになった。アメリカのNFLではプレーオフシーズンが終わり、いよいよスーパーボウル(2月14日)だ。日本のゴルフツアーに合った形での新システムを生み出すことはできるのか

●日本のツアーでアメリカと同じことをやろうとしても、風土もシステムも違うのでうまくいかないのでは。僕がPGAツアーに出ていたころにはプレーオフシリーズはありませんでしたが、当時、グレッグ・ノーマンが中心になり、アメリカに限定しないワールドツアーを模索していました。その流れのなかでPGAツアーが打ち出したのがプレーオフシリーズだったのではないでしょうか。最後、10億円のボーナスを1人が総取り、には驚かされました。こういったインパクトはファンやメディアの注目を集めるために大事なことだと思います。日本の場合、最終戦の日本シリーズでは出場人数を絞りますが、そこには終盤戦のドキドキ感が少ない。プレーオフシリーズの形がいいとは思いませんが、男子ツアーに、もう少し注目されるシステムは必要。たとえば相撲はグローバルな興行ではないけれど、国内では特別感があります。名古屋場所や九州場所など、決まった日程で巡業して、各地でそれを楽しみにしているファンがいます。ゴルフなら現在男子トーナメントは日本海側では皆無。そういうところに目を向けたり、ストロークプレーではなく、ステーブルフォード(ポイントターニー)とか、ゴルフ本来の楽しみを引き出す方式も検討する手もある。ただ、現在のJGTOに何か新しいものを導入しようという空気感がありません。それを刷新するためには、組織にゴルフやスポーツとは関係のない柔軟な考えを持った人材が必要なのではないでしょうか。(水巻善典/プロゴルファー)

アメリカかぶれのツアーを夢想するより、本家本元の男子ツアーを確立しないと。第一、日本シリーズの後となれば、寒くてやってられません。お金を出すところが今の男子ツアーにあるでしょうか。本気で立て直さないと、かつてのボウリングの道をたどることになるのでは……。(田中徳市/元JGTO)

●日本のプロ野球でクライマックスシリーズが始まったとき「不公平」と思ったが、いまや秋の楽しみ。クライマックス進出がかかるから最下位のチームの対戦も見逃せなくなった。そんなドキドキをゴルフでも。プレーオフ、いいと思います。誰がボーナスを出すのよ、とは思いますが。前澤友作さんにメッセージを送ってみるとか!?(40代女性・千葉県)

●アメリカ4大球技(アメフト、バスケ、野球、アイスホッケー)に次ぐ5番目の地位を狙うPGAが新たに構築したのがプレーオフシリーズ。実際、ある程度成功したと思いますよ。ただ、これを日本でやれるか……結論としては無理だと思います。まず、ツアー最終戦の日本シリーズの後だと、日照時間が極端に短い。出場者がかなり少なくなります。もうひとつ、スポンサーの招待枠が多すぎること。昨年の日本ツアー選手権、ツアーNo.1を決めるのに“部外者”が3人も招待されました。これではプレーオフを開催しても真の“競技”にはなりません。カネだけ出してくれといえば、IT長者などが「Yes」と言ってくれるかもしれませんが、招待枠には固執するでしょうから権威あるプレーオフは無理です。(タケ小山/テレビ解説者)

週刊ゴルフダイジェスト2022年2月22日号より

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