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【さとうの目】Vol.216 ミト・ペレイラ「五輪で4位! チリの注目株の紆余曲折人生」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は東京五輪でプレーオフに進出したチリのギジェルモ・ミト・ペレイラ。

前回のお話はこちら

東京オリンピックで銅メダルを争う7人のプレーオフまで進出、惜しくもメダルを逃しましたが、松山(英樹)くんと同じ4位タイになったのがチリのギジェルモ・ミト・ペレイラです。同国のサンティアゴ出身の26歳。PGAツアーにかなり詳しいファンであれば、注目していた選手ではないでしょうか。一般的にはまだ無名でしたが、オリンピックで活躍すればボクもこの連載で紹介したいと思っていた選手です。

20-21年の今シーズンの主戦場は2部のコーンフェリーツアーでした。19年に3部ツアーで賞金ランク10位に入り、Qスクール41位の資格で2部に参戦。全試合に出場できる順位ではないため、出場選手が少ない南米で行われる前半戦に照準を合わせ、パナマで3位、コロンビアで優勝を遂げて、その後のコーンフェリーツアーのフル出場権を獲得しました。

ところがその後、コロナの影響でツアーが中断。20年と21年のシーズンが統合されPGAへの昇格もできず、再開後も低迷していました。しかし今年に入ると、5月にプレーオフで敗れての2位、6月には2週連続優勝を果たし、念願のPGAのツアーカードとオリンピックのチリ代表の座を射止めました。PGAデビューは7月からで、オリンピック前に出場したのはわずか4試合。うち3試合で予選通過を果たし、オリンピック直前には2週連続でベスト10に入り、東京へと乗り込んできました。そして、あの活躍です。

アマチュア世界ランク1位に輝いた同じチリのホアキン・ニーマンほどではありませんが、ジュニア時代から注目された選手ではありました。世界ジュニアでは06年、10-11歳の部で2位、08年、12-13歳の部で優勝、10年には全英ジュニアオープンで2位に入っています。その実績で14歳でフロリダのIMGアカデミーに留学、しかし飽きっぽい性格なのかモトクロスとテニスに没頭し、2年ほどクラブを握らない生活を続けました。

再びゴルフを始めたのは17歳。14年にはテキサス工科大に進み、アマチュア世界ランク5位にまでなっています。しかし、その大学もやめ、14年に18歳でプロ転向。南米の3部ツアーからスタートし、途中モトクロスの事故で戦線を離脱するなど紆余曲折の末、今年の、そして東京オリンピックでの大ブレークとなりました。

コーンフェリーツアーおよびPGAツアー昇格後数試合のスタッツを見ても飛距離の割にフェアウェイキープ率が高くパーオン率もよくショットメーカーであることがわかります。

4歳下のニーマンとはジュニア時代から仲良しでコーチも同じ。現在もニーマンの家に居候しながら転戦しているようです。新たなツアー仲間が増えてお互い嬉しいと思います。型破りにも映るゴルフ人生ですが、そのぶん、なにかとんでもない偉業を成し遂げそうな期待を持たせてくれます。オリンピックでの活躍で国民の注目も高まり、それが今後のゴルフに好影響を与えそうですよね!

パワフルなショットメーカー

「183センチの筋肉質な体で、パワフルなスウィングが特徴。東京五輪のときにはじめて生で打っている球を見ましたが、非常に低く強い球を打つのが上手な選手で、その点はニーマンとよく似ています」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月7日号より